トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『嘘解きレトリック』チート能力を逆手に

【24年秋ドラマ】『嘘解きレトリック』第4話 チート能力設定を逆手に取った「焦らし」と週またぎのリスク

松本穂香(GettyImages)

 貧乏だけれど洞察力だけは優れている探偵・左右馬(鈴鹿央士)と、嘘を聞き分けてしまう能力を持つ助手・鹿乃子(松本穂香)にさまざまな事件が降りかかるドラマ『嘘解きレトリック』(フジテレビ系)。

 いわゆる「月9」枠なわけですが、今のところ恋愛要素はごく薄く、昭和初期のレトロな世界観を再現した本格ミステリーといった感じ。しかも、探偵が謎を解くにあたって極めて便利な「嘘を聞き分ける能力を持つ助手」というチート要素も巧みに織り込んで、推理劇としてもひとつひねった設定となっています。

 そんなわけで、今回はホラー風味も加わった第4話、振り返りましょう。

■『嘘待ち』レトリック

 今回は、左右馬の親友である刑事の姉・雅さん(北乃きい)の登場からスタート。いかにもモダン・ガールなメイクと衣装が映えるチャキチャキの勤労婦人で、オカルト雑誌の記者をやっているそうです。

 このドラマ、鈴鹿央士をはじめとして主要人物には華やかな顔面を持つ俳優を配置しているので、モブとのギャップが出て非常に見やすいんですよね。北乃きいもまた、実に華やかな女性として登場します。

 雅さんは、汽車に乗って何やらいわくつきの人形屋敷に取材に行くと言います。大きな荷物を抱えた雅さん、左右馬の貧乏につけ込んで、家賃を肩代わりすることを条件に荷物持ちを依頼。左右馬と鹿乃子も、その人形屋敷に同行することになります。

 目的の山村に到着すると、迎えの紳士によって事件の概要が説明されます。その屋敷では、人形にも食事を出すという習慣があった。ある日、女中が屋敷に出たネズミを退治するために人形に出す食事に殺鼠剤を混ぜた。すると、誰も食べないはずのその食事を食べて人が死んでしまった。パニックに陥った女中は橋の上から身を投げた。ところが、地元の刑事の調べでは屋敷では誰も死んでいないことが明らかになる。倒れていたのは人形で、女中はその人形を自らが殺してしまった死体と見間違えていたようだ。この事件をきっかけに、人形屋敷は世間から奇異の目で見られることになった。

 屋敷に住む人形少女ともいうべき風体の品子(片岡凜)は、風評を払拭するために記者を呼び、記事を書いてもらうことにした。そうして呼ばれたのが、雅さんでした。

 死んだのは人形か、人間か。なぜ女中は身を投げなければならなかったのか。そうした謎に、雅さんと左右馬、鹿乃子が向き合うことになります。

 第2話では早々に関係者に嘘をつかせ、それを鹿乃子に見抜かせることで倒叙ならぬ“半・倒叙”とも呼ぶべき独特の事件解決スタイルを演出した『嘘解きレトリック』でしたが、今回は関係者がなかなか嘘をつきません。

 最初に事件を左右馬たちに説明した紳士に「これ以上、話すことはありません」というセリフをあてがい、その発言に嘘がなかったことを明示して場を整えると、いかにも怪しい品子という人形チックな女性への尋問でもしばらく嘘が出てこない。

 誰も嘘をつかないまま、次々に謎だけが積み重なっていく。私たちは、鹿乃子が嘘を見抜き、それが嘘であることを伝えられた左右馬がトリックを暴く展開を期待していますので、次第に「嘘待ち」ともいえる心境になってきます。4話目にして、早くも「嘘解き」というチート能力設定を逆手に取って見る側を焦らしてくるわけです。

 そうして焦らし切ったところで、人形娘・品子に嘘をつかせます。

「この屋敷では誰も死んでいない」「イネさん(女中)は自殺した」

 品子から語られたこの2つの情報が嘘であることを鹿乃子が聞き分けます。つまり、実際に屋敷では人形ではなく人が死んでいるし、女中も誰かに殺されたということ。

 もうけっこう放送時間もたっているし、こっから一気に解決編に持っていくのかなと思ったら、今回は週またぎでした。解決編は次回へ。

■原作から抽出する話順の話

『嘘解きレトリック』は比較的、原作コミックを忠実に再現しています。セリフもトリックも、大部分をそのまま採用する形です。

 ですが、話順については忠実ではありません。

 この4話の前、3話まではコミックの第1話、第3話、第2話の順で放送されました。コミックの第1話では左右馬と鹿乃子というコンビの成立まで。第2話では、鹿乃子の能力の詳細な解説を行いつつ、左右馬とのコンビネーションを深めるエピソードを語り、第3話でいよいよ事件解決のモデルケースを提示するという順番でした。

 ドラマでは、より派手な事件が起こる第3話を、地味でいい話の第2話に先行させている。「この探偵はこうやって事件を解決します」というテンプレートを配布する作業を優先したということです。

 そして第4話で重めの事件を持ってきてそのテンプレートを逆手に取りつつ、早くも週をまたいできました。

 謎解きを行うドラマにとって、週またぎはリスクを伴います。1話で謎が解かれないことは少なからずストレスになりますし、次週の謎解き編の冒頭ではある程度、振り返りの時間を使う必要も出てくる。

 週をまたぐにはちょっと早くないか、もう何話か、1話完結でいったほうが見やすくないか。そういう印象だったんです。

 逆に言えば、第4話でまたいでも大丈夫という確信が作り手側にあるということですので、冴えた謎解きを見せてくれるに違いありません。ここまで、そういう期待を抱かせるだけの作品になっています。

 個人的にはこのドラマ、映像を見てから原作を確認するという順番で楽しんでいるわけですが、今回は次週の謎解きが終わるまで我慢しようと思います。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

どらまっこあきちゃん

記事一覧

Twitter:@dorama_child

https://note.com/dorama_child

最終更新:2024/10/29 11:00
ページ上部へ戻る

配給映画