【24年秋ドラマ】『ベビわる』別々の道を進む殺し屋コンビ ちさとvsまひろの衝撃展開も…
#ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!
「経験も成長もしたくありません」
主人公のそんな切実な叫びが、深夜のテレビ画面いっぱいに響き渡りました。ガールズアクションドラマ『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』(毎週水曜 深夜1時~、テレビ東京系)の後半シリーズ「ジョブローテーション編」がいよいよ本格化しました。鉄壁のコンビネーションを誇ってきたガールズアサシンチーム、杉本ちさと(髙石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)はついに引き離され、予測のつかない展開が今夜から待ち受けています。
劇場版第1作『ベイビーわるきゅーれ』(2021年)でもアルバイト先のメイドカフェにうまく順応したあかりは、殺し屋協会の営業部である「オフィス向日葵」で内勤を経験することになります。部長の山下(後藤剛範)をはじめ、超イケイケの体育会系の職場です。
殺しの値段はさまざまなようです。営業部のエース・三好(一ノ瀬竜)は一件4000万円の依頼をバンバン成立させてきたそうです。殺しの依頼者は、それだけの報酬を支払っても元が取れるんですね。「日給15万円」を謳った闇バイトが世間を賑わせているわけで、マジで怖い世の中になったなぁと思わせます。
殺しの報酬はかなり高額なことが分かりましたが、そのわりにはちさと&まひろのシェアハウス生活は、かなり質素なものです。殺し屋協会の仕組みを知ったちさとは、自分たち現場で働く労働者が搾取されている事実に気づくのではないでしょうか。ちさとは営業部に染まっていくのか、それとも組織の運営方法に反発することになるのか。大きな分岐点を迎えそうです。
会社という合法的な組織は、実は非常に不条理な集団です。個人の意思や感情を押しつぶすことで大きく成長していく、一種のモンスターです。ちさまひの日常生活を描く『ベビエブ』は、もしかすると、ふたりが会社組織と闘う壮大な物語なのかもしれません。労働者階級の蜂起を描いた学園闘争時代のバイブル的コミック『カムイ伝』みたいな展開になってもおかしくありません。
ちさとの将来を暗示させる「粛清さん」
一方、まひろは「粛清さん」と呼ばれる監査部の日野(柄本時生)のもとで働くことを命じられます。ちさと以外とはうまくコミュニケーションできないまひろは、この異動に抵抗しました。「いろんな業種も経験したくありませんし、成長もしたくありません」という台詞は、このときのまひろが口にしたものです。上昇志向に乏しく、現状維持を好むのはZ世代の特徴、いや今の日本人全般の気分でしょう。
与えられた仕事はきちんとやるから、自分の時間と世界は大切にしたい。会社側に自分自身の内面にまで干渉されたくはありません。社内で出世もしたくないし、他の社員と競争もしたくないし、役職にも就きたくないです。でも、組織全体が成長することを必要とする会社組織は、それを許してはくれません。やはり、会社と個人は相容れないものがあります。こーゆー、若い世代の能力と労働意欲をどう生かすことができるかが、日本社会の今後の重要ポイントになるんじゃないですかね。
まひろは殺し屋以外の仕事に転職はできそうにないので、嫌々ながらも日野のもとで働くことに従います。見た目はヤバそうな日野ですが、第6話ではプロの殺し屋たちを瞬殺していました。とても優れた殺し屋であることは確かです。また、それゆえに殺し屋たちからは忌み嫌われて「粛清さん」と呼ばれているそうです。
大ヒット公開中の劇場版第3弾『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』では池松壮亮が一匹狼の凄腕殺し屋・冬村かえでを熱演していますが、冬村は「ちさとに出会えなかったまひろ」的なぼっちキャラとして造形されています。『ベビエブ』の日野も、ちさとと別れた将来のまひろの姿なのかもしれません。ちさと&日野のまだら金髪コンビはどんな化学反応を起こすのでしょうか。こちらも目が離せません。
ジョブローテーション編では、ちさとが片目を負傷し、血まみれになっている姿が予告されています。ちさとを襲った相手は誰なのか? 営業部内でのトラブルなのか、それとも営業部の不正を暴こうとした監査部との間に抗争が起きるのか? ちさととまひろが直接対決しないことを願うばかりです。
青春キラキラ映画によくあるパターンだが……
今夜以降のクライマックスの展開を考えると、先週放映された第8話前半で描かれたちさまひが最後の休日を楽しむ様子は、胸に沁みるものがあります。休日もトレーニングを欠かさないちさまひ。第7話でお互いの気持ちを確かめ合った後だけに、格闘技の練習もちさまひなりの愛情表現のように感じられます。
ふたりで汗を流した後は、死体処理係の宮内茉奈(中井友望)と誘い合わせて猫カフェへと向かいました。猫たちと戯れる3人の女の子たちが、猫たち同様に超かわいいんですよ。青春キラキラ映画で夏休みにみんなで海に行って水しぶきの掛け合いっこして、夜は花火を楽しんで、夏休みが終わるとヒロインが難病宣告され……という、よくある「号泣映画」パターンじゃないですか、これ。
おまけに、まひろは再び現れたぶつかりおじさん(水澤紳吾)と、新たに登場したタックルじじい(岩永ひひお)の見苦しいケンカの仲裁までしています。殺し屋なのに、善行を積んでしまうまひろ。まひろが殴り倒した私服警官(前田旺志郎)も含め、また彼らの登場する機会があるのかも気になるところです。
コンビを解散し、営業部と監査部でそれぞれ働くことを受け入れたちさまひ。実社会で生きていくことの不条理さに、ふたりは今後どう折り合いをつけるのでしょうか。それぞれの決断に大注目です。ちさまひはもはやフィクション上の存在ではなく、現実社会で働く私たちの分身なんだと思います。
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