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NHK、旧ジャニ再起用で意見分裂か…NHKスペシャルで見えた「異変」

NHK

 NHKで20日に『NHKスペシャル ジャニー喜多川“アイドル帝国”の実像』が放送された。放送2日前に内容告知を解禁するという異例の番組となったが、この背景に「旧ジャニーズ起用再開」をめぐるNHK内部の対立があるのではと指摘されている。

 番組では、旧ジャニーズ事務所の創業者である故ジャニー喜多川氏の生涯をたどりながら、関係者の証言などを基に、なぜ彼が少年たちを性的に捕食する“モンスター”になってしまったのか、なぜ彼を誰も止めることができなかったのかといった問題点を検証していった。

 「横やりが入らないように放送2日前に内容を解禁した」といわれていたことから、かなり攻めた番組になるかと思われたが、どちらかというと無難な仕上がりだった。しかし、その中でも視聴者に大きな衝撃を与えたシーンがある。

 その一つが、いまは亡き弟がジャニー氏から性被害を受けたという高齢女性がSMILE-UP(旧ジャニーズ事務所)補償本部の本部長に電話をした場面だ。女性が「お金はいいんです。ただどういう謝り方をしていただけるのか」と尋ねると、本部長は「誰が何を謝るんだというのがちょっといま分からなくて。(隠ぺいしたとされるメリー喜多川氏なども含め)本人たちが死んじゃってるんで」と謝罪に乗り気でない様子を見せた。

 さらに、本部長からは「おっしゃってることは分かるんですけど、(暴露)本を書かれて(旧ジャニーズが)痛めつけられたのは間違いないんで。会社としてはすごくつらい目にあったのは間違いないんで」と、女性の弟が暴露本を書いたことを引き合いに被害者ぶった言葉まで飛び出した。

 本部長が「謝罪する相手は本人なんですよ」と言うと、女性は「それなら仏様の前でお参りしてくれる? お墓行ってお参りしてくれる?」と語気を強めた。本部長が「それは東山(紀之)がするの」と返すと、女性は「そりゃそうでしょ。だって当たり前のことじゃない。だって(ジャニー氏は)亡くなっちゃったんだから」と現SMILE-UP社長である東山氏がジャニー氏に代わって墓前で謝罪すべきだと主張。しかし、本部長は「なんで東山が(謝罪)しなきゃいけないのか、僕、分かんないんですよ。『メリーが謝れ』『ジャニーが謝れ』だったら分かるんですけど、東山は別に加害者じゃないですから」と言い放った。

 本部長は「心の底からお詫びができないので、今の話を聞いていると」とまで言い出し、最後に「東山と相談する」としたものの、女性は思わぬ対応にショックを受けた様子だった。

 SMILE-UPは、表向きは真摯に被害者に謝罪と補償対応をしているというイメージがあった。だからこそ、NHKは16日の定例会見で稲葉延雄会長が被害補償の取り組みなどを評価し、これまで見送ってきた後継事務所「STARTO ENTERTAINMENT」所属タレントの新規起用を再開すると発表したのだ。

 しかし、番組で放送されたSMILE-UP側の電話シーンから受ける印象だと「ジャニー氏やメリー氏がやったことをなぜ自分たちが謝らなければいけないのか」「被害者に対して心の底から申し訳ないとは思っていない」といった本音が露骨に伝わってくる。最終的には東山氏が女性と面会し、謝罪したとのことだが、 電話のやり取りをあえて放送した番組側には明確な「意図」 があるはずだ。

 もう一つの衝撃シーンは番組のラスト。「2024年10月16日 NHKはスタートエンターテイメントの所属タレントへの出演依頼を可能とすると発表した」とのテロップが出され、さらにNHKのコメントとして「この問題はこれで終わったとは考えていません。NHKも当時の認識や対応が十分ではなく、メディアの責任を果たせなかったと自省しています。改めて性加害をはじめとする人権侵害は決して許さないという姿勢を取引先も含めて浸透させ、新しい事実が出てきた場合の検証は報道・番組を通じて行い、公共放送としての役割を果たしていきたいと考えています」との文章が発表された。

 先述の電話のやり取りなどを踏まえて最後のテロップを見ると、明らかにSTARTOタレントの起用を再開した自局への皮肉に見える。これに対しては、視聴者からも「取材班の局側への静かな怒りを感じた」「テレビでここまで自局の他部門を公然と放送で批判したケースって過去にもないのでは」「補償本部長のヤバイ電話のやりとりとNHK出身の現スタート社幹部に突撃取材という爆弾を仕込んで最後のテロップで締めるの凄すぎた」といった声が上がっている。

 NHKのSTARTOタレント起用再開については、かねてから業界内で「ドラマ班や音楽班などは早期の起用再開を希望していたが、局内で力のある報道班が反対し、なかなか再開できなかった」との内幕が指摘されていた。しかし昨年、旧ジャニーズ勢を排除した『紅白歌合戦』が歴史的低視聴率となり、今年も旧ジャニーズなしというのは厳しくなった。結果、『紅白』を見越した稲葉会長の鶴の一声で起用再開が決定したのではといわれている。

 これに対するNHK報道班の反発と怒りが、今回の『NHKスペシャル』に込められていたのではないかと見る向きがあるようだ。報道班としては、まだ検証や反省すべきことが多く、あまりにも旧ジャニーズ問題は根深いため、起用再開すべきではないという考えなのだろう。

 まさかの形で局内の意見対立が明るみになったNHK。『紅白』で何事もなかったようにSTARTO社のタレントを起用することになるのか、今後が注目される。

SNSや動画サイト、芸能、時事問題、事件など幅広いジャンルを手がけるフリーライター。雑誌へのレギュラー執筆から始まり、活動歴は15年以上にわたる。

さとうゆうま

最終更新:2024/10/21 15:00
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