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日刊サイゾー/川上高司氏インタビュー

石破茂首相のブレーン・川上高司内閣官房参与が語る“日本一わかりやすい”米大統領選挙報道の見方

メディアが作り上げた「ハリス氏優勢」報道

――つまり、メディアが報じる大統領選のニュースを、もっと注意深く見る必要があるということですね。そもそもアメリカのメディアはトランプ氏に批判的で、追随するように日本も「また、トランプさんが過激な発言をしました」という報道が多く見受けられます。このトランプ氏とメディアの敵対関係はいつから始まったのでしょうか?

川上 政権を握っていたときから、彼は「ディープステート」という表現でマスコミをすべて目の敵にしていました。その挙げ句にTwitter(現・X)などSNSも凍結されるという憂き目に遭います。そのため、今でもマスコミを敵対視しているわけですね。唯一、Xを運営するイーロン・マスクは味方になってくれたため、アカウントも復活してSNSでの勢いを取り戻しました。

 このように双方がいがみ合っているため、9月10日にABCテレビで行われたテレビ討論会はメチャクチャでした。私は英語で見ていましたが、司会者はハリス氏寄りの質問を投げかけ、その後も彼女が優勢だったという報道ばかりでした。

――多くの日本人はこの討論会での発言をすべてはチェックできていません。実際、このときはどのような討論が行われたのでしょうか?

川上 司会者がトランプに「ウクライナ戦争を短期間で終わらせますか? また、どのように終わらせるのでしょうか?」という質問をしました。トランプ氏は「私だったら電話一本で可能だ。簡単にできる。とにかく、死者が何万人と出ているのだから、それは早急に終わらせなければいけない。これは私だからできることである。バイデン政権は戦争を作って、ウクライナでも中東でもイスラエルでもやっている……。これはもはや『戦争内閣』だ」といった発言をしたんです。

 それに対してハリス氏は「民主主義を守らなくてはならないため、戦争は継続する」と反論しました。これは衝撃的でしたね。ハリス氏は戦争を継続してどんどん犠牲者を出す……。その一方で、トランプ氏は一刻も早く戦争を終わらせて悲惨な状況を回避しようとしています。これは際立って対照的な発言でしたが、日本ではあまり報道されていません。

――「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とのパイプはある」などのトランプ氏の発言は日本でも報道されましたが、ハリス氏の「戦争継続」はそこまで取り沙汰されていません。

川上 それが私は非常にショッキングでした。今、ガザ地域で死亡者が増え続けているため、「戦争をやめろ!」というデモが全米各地で起きています。いえ、全米だけでなく、欧州をはじめ、世界各国で起きています。その状況を知っているのかどうかわかりませんが、ハリス氏は戦争を継続させたいわけです。

――なぜ、ハリス氏は戦争の継続を望んでいるのでしょうか?

川上 「民主主義を守る」ためです。政府がそう言わない限り、アメリカという国は滅んでしまいます。民主主義の名のもと、白人も有色人種もすべて一緒になることで、アメリカ合衆国は成り立っているのです。

――国民をまとめ上げるために、常に仮想敵を立てなければならないのは、いつの時代も変わらないのですね。それを、トランプ氏は止めようとしている。実際に同氏はテレビ討論会後の9月27日に、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談しています。

 ただ、同日の毎日新聞は「ゼレンスキー氏とトランプ氏、関係ぎくしゃく 侵攻巡り互いに批判」というタイトルの記事を配信しましたが、これまでの話を聞くと「メディアはトランプ氏の揚げ足を取りたいのか」という印象を受けます。

石破茂首相のブレーン・川上高司内閣官房参与が語る日本一わかりやすい米大統領選挙報道の見方の画像4
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(写真/Getty Imagesより)

川上 繰り返しになりますが、9月のテレビ討論会で司会者は、始終トランプ氏が不利になるような質問をぶつけていました。その一方で、ハリス氏は少なくとも5日間は缶詰めで練習していたため抜かりはなかったのと、なにより主催者側の思惑が感じられました。そのため、入念に準備したハリス氏のほうが、パッと見いい感じに見えたのでしょう。

 しかし、移民政策に関してもニュース記事などでは、「言及を避けた」というふうに書かれていますが、私が見る限り、彼女は完全に「逃げた」と思っています。

 以上のことから、9月のテレビ討論会は、非常にトランプ氏に不利になるように仕組まれていたといえます。そもそも、放映したのはABCテレビですからね。トランプ氏はメディアのことを熟知しているため、ハリス氏から10月に入って再度テレビ討論会を持ちかけられましたが、それを拒否しました。

――その代わり、CBSテレビが、民主党で現ミネソタ州知事のティム・ウォルズ氏と共和党のJ・D・バンス上院議員の両副大統領候補者による討論会を行いました。

川上 トランプ氏がマスコミのほとんどを敵に回して、大統領選挙を戦っているというのは、8年前に彼が当選したときと同じ構図になっています。そして、現地のマスコミが同氏に批判的な報道をすることで、それを鵜吞みにした日本のマスコミも、「ハリス氏が有利」というニュースを流しているわけです。

 私は残念ながら最近アメリカに行ってないのですが、現地の友人や、ワシントンD.C.で現地の生の声を聞いてきた知り合いによると、9月下旬の時点では、やはり「トランプのほうが優勢だ」というのです。特に7月にペンシルベニア州で発生した暗殺未遂事件以降、「神に守られたトランプ」として、かなり威勢があるそうです。

――あの修羅場で耳から血を流しながら拳を高く突き上げたトランプ氏は、支持者でなくとも「持っているな!」と感じた人は多かったでしょう。

川上 日本でも先の都知事選における「石丸(伸二)現象」などがありましたが、アメリカのSNSも同じような状況です。そのため、日本の報道機関はトランプ氏に大統領になってほしくないアメリカのメディアの情報を、そのまま受け取って報道しているような気がします。

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