トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 日本一わかりやすい米大統領選挙報道
日刊サイゾー/川上高司氏インタビュー

石破茂首相のブレーン・川上高司内閣官房参与が語る“日本一わかりやすい”米大統領選挙報道の見方

 ドナルド・トランプの復活か、あるいはカマラ・ハリスが米国史上初の女性大統領になれるのか――。

石破茂首相のブレーン・川上高司内閣官房参与が語る日本一わかりやすい米大統領選挙報道の見方の画像1
ドナルド・トランプ前大統領とカラマ・ハリス副大統領(写真/Getty Imagesより)

 日本だけではなく、世界各国でもアメリカの熾烈な大統領選挙は日々メディアで取り上げられている。ニュースを斜め読みする限りだと、民主党のハリスがリードしているようだが、それは報道にバイアスがかかっているからだろうか?

 そこで、一般社団法人日本外交政策学会の理事長として「地政学講座」で教鞭を執るだけではなく、10月1日からは石破茂内閣の内閣官房参与として官邸入りした、安全保障、アメリカの政治、日米関係のプロフェッショナルである、元拓殖大学教授で国際政治学者の川上高司氏に、アメリカ大統領選挙報道の“見方”を聞いた。(インタビューは2024年9月22日に収録)

著名人の応援よりも激戦州の獲得

――11月5日に迫ったアメリカ大統領選挙の投開票。当初、民主党はジョー・バイデン大統領が再選して出馬する予定でしたが、あまりの失言の多さに民主党内だけではなく、支持者たちからも不安の声が上がりました。その結果、バイデン大統領は撤退し、カマラ・ハリス副大統領が出馬することになります。

川上高司氏(以下、川上) ハリス氏の出馬は意外でしたね。実は私、ミシェル・オバマ氏が躍り出るのではないかと思ったのですよ。もし、彼女だったらこの大統領選、絶対に勝てたでしょう。というのも、オバマ夫妻の影響力はいまだに健在だからです。また、「黒人VS.白人」「女性VS.男性」「秀才VS.暴君」など、さまざまな対立構造ができたのですが、ミッシェル氏はそれを断りました。

石破茂首相のブレーン・川上高司内閣官房参与が語る日本一わかりやすい米大統領選挙報道の見方の画像2
ジョー・バイデン大統領(写真/Getty Imagesより)

――歴史に残る世紀の一戦は幻に終わったということですね。

川上 そうなると、民主党は副大統領候補のハリス氏しか選択肢がありませんでした。ただ、その繰り上げ選出のおかげで、バイデン氏の支持者たちからもスムーズに支援を得ることができたと考えられます。

 その理由は2つありますが、まずは資金面です。民主党の大統領選に注ぎ込まれた費用はすでにバイデンとハリスの両氏に充てられていたため、ハリス氏まで副大統領から撤退してしまうと、これまでの資金の使い方に整合性がなくなります。それに、候補者選びからもう一度ゼロからやり直そうとしても、そんな時間はありません。だからこそ、バイデン支持者たちは、そのままハリス氏を応援する以外の道はなかったのです。

――残り3カ月で新たな候補を立てていると、それだけでも準備がかかってしまいます。しかも、これまで広報活動などで使ってきた資金が無駄になりますからね。

川上 2つ目は年齢ですね。ハリス氏はまだ59歳(10月20日で60歳)。トランプ氏は78歳で、彼は今まで81歳のバイデン氏を「おじいちゃん」と批判していましたが、彼女にはそれが一切通用しません。そして、なによりも若いだけあって明るいですね。彼女の母親はインド系で、カマラという名前はサンスクリット語で「蓮の女性」を意味します。リベラルの人たちはこういうのが好きですよね(笑)。おまけに音楽にも造詣が深い。そのような理由もあって、人気が出たのでしょう。

――急なすげ替えで「これはトランプ氏が優勢か?」と思われましたが、蓋を開けてみれば民主党が一歩リードしているという報道が多く見られます。

 ただ、これはトランプ氏が大統領に当選した2016年の選挙を彷彿させます。当時、民主党のヒラリー・クリントン氏が優勢とメディアでは大々的に報じられていましたが、結果は「隠れトランプ支持者」たちの力もあってトランプ氏が勝利しました。

川上 今回も同じような構図だと思います。そして、この選挙を左右するのはアリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバダ、ノースカロライナ、ペンシルベニア、ウィスコンシンという、両者の差が1ポイント未満となっている7つの「激戦州」です。

――いわゆる、テキサス州など南部は伝統的に共和党支持者が多く、西海岸のカリフォルニア州などは民主党の牙城となっています。すでに両党には「勝ち確」の州がある一方で、この7州はどちらに転ぶかがわかりません。

川上 トランプ氏にはアメリカ国民の40%という強固な支持者が付いています。ハリス氏はまだ読めないのですが、バイデン氏に付いていた黒人女性票の95%が多分付くでしょう。あとは、黒人男性がどれほどトランプに流れるかということですが、お互いに岩盤票はあります。

 そのため、中間所得層という存在が重要となります。激戦州の場合は、52~53%くらいがラストベルト(米国北部の衰退した工業地帯)の白人たちのため、この票の取り合いになります。そこに対して、いかにSNSが効果を上げるかということが肝になってきますが、今のところは不明瞭ですね。五分五分といえるでしょう。

――アメリカに住んでいる限りは住民の住所や年齢などはインターネットで検索すれば調べることができ、選挙時期には特定の政党から積極的に投票を呼びかける電話や郵送物が多く届きます。選挙コンサルティング会社はその人物がどの政党を支持しているのかを理解したうえで、DM(ダイレクトメール)作戦をしていますが、これはどれほど効果を発揮するのでしょうか?

川上 そのような草の根選挙活動はかなり重要だと思います。繰り返しになりますが、激戦州の7州の1%がどちらに入るかで今回の勝敗は決まります。そこで効力を発揮するのは、メディアの報道よりも草の根の選挙なのです。投票日の前日まで一軒一軒回って、「投票してほしい」と頼み込むのです。

 4年前、民主党員である私の友人は「今回は民主党が絶対に勝つ」といって、このような選挙活動をやっていたのですよ。わざわざ、投票場まで連れて行ってあげてね。それが実を結び、前回はバイデン氏が当選したため、今回は共和党も草の根選挙活動に力を入れているでしょう。

――ちなみに、4年前のヒラリー氏同様、テイラー・スウィフトやビリー・アイリッシュなど、「海外セレブ」の多くはハリス氏を支持しています。こうした著名人の応援はどれほど選挙に影響するのでしょうか?

石破茂首相のブレーン・川上高司内閣官房参与が語る日本一わかりやすい米大統領選挙報道の見方の画像3
テイラー・スウィフト(写真/Getty Imagesより)

川上 いくら、著名人がハリス氏の支持を表明したところで、彼女の支持者はトランプ氏のそれとは大きく異なります。つまり、同じところに杭を打ち込んでいる感じですよね。そのため、トランプ氏の支持者たちが、著名人に感化されてハリス氏に乗り換えるとは到底思えず、その効果は一切ないと思います。

 しかし、「海外セレブに人気」とだけ、ニュースで聞いている多くの日本人は、「ハリスが勝ちそうなんだ」と錯覚してしまうわけです。ただ、現地を見てきた者たちによると、決してそんなことはないといいます。そのため、激戦州の動き方に注目するほうが大事であり、ほかの情報に惑わされないことが重要です。

1234
ページ上部へ戻る

配給映画