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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『おむすび』第15回 超スロー展開

『おむすび』第15回 超スロー展開なのに「行間を察しろ」と想像を強いてくる

橋本環奈

 

 

 

 

 

 

 

 

 NHK朝の連続テレビ小説『おむすび』も3週目のラストとなる第15回。「夢って何なん?」というサブタイトルでしたが、終始主人公の結ちゃん(橋本環奈)が周りの人たちの夢を聞いては「夢って持ってなきゃダメなのか」と自問自答する週でした。

 

 いや、自問自答じゃないな、夢を持ってる人たちに対して「持ってなきゃダメなのか」と詰問して相手を困らせた週でしたね。

 

 これ「へえへえ、夢があってステキですね、意識高いっスね」って結ちゃんは言ってないし考えてもいないと思うんだけど、なんかそう見えちゃうんだよなぁ。振り返りましょう。

 

■「むすびん、今日元気ないね」

 

 前回、駅で困っていたおばさまを目的地まで送り届けた結ちゃん。「人助けは米田家の血」なので、重い荷物も背負ってあげて、大いに感謝されていました。そのおばさま、実は“鬼怒川のカッパ”こと他校の野球部の1年、四ツ木くんのママなのでした。

 

 後日、そのときのお礼をしようと結ちゃんがいつも来る海で待ち伏せしていたカッパ、またしても大量のイチゴを押し付けてきますが、その袋に自分の野球選手としての夢を書き連ねた「夢ノート」も一緒に手渡してしまい、赤面。カッパは12歳のころから明確に目的を定め、メジャーリーガーという夢に向かって一歩一歩積み重ねている最中でした。

 

 またしても「夢」です。結ちゃんは自分の夢が「農家を継いで平穏無事に生きること」であり、それがいいのかダメなのかをカッパに問います。カッパは「農家継ぐのは立派な夢だ、ただ平穏無事に生きるのが夢って、ちょっと寂しくねが?」と率直に応えてくれますが、結ちゃんは「それってキザなんじゃねが?」と栃木弁ではぐらかし、また何か含みを持った表情で海を見つめるのでした。

 

 マジな話になると、いつもこうなんだよな結ちゃん。適当にはぐらかして、その後にこれみよがしに「本当は言いたいことがある」という顔をする。

 

 この直後のシーンもそうです。家に帰ってママ(麻生久美子)に「お姉ちゃん、何がやりたかったん? なんであんな不良みたいになったん?」と問いかけ、ママが「お母さんは歩が不良になったなんて、全然思わなかったけどな」と返すと、また何も言わずに次のシーンへ。

 

 その週末、いつものように天神でハギャレンの会合に出席している結ちゃんはあいかわらずつまんなそうな顔をしていますが、ここでリサポンが意外なことを言います。

 

「むすびん、今日元気ないね」

 

 ハギャレンと一緒にいるとき、結ちゃんはいつも元気がなかったはずなんです。常に「私は困っています、嫌々付き合っています」という顔をしていたし、家にハギャレンを呼んだときもパラパラこそ練習の跡が見えたものの、楽しそうではなかった。

 

 しかし、リサポンが「元気ないね」と言うからには、むすびんこと結ちゃんはいつも元気だったことになる。

 

■スローペースなのに行間を読めとか

 

 海辺でカッパの話をはぐらかしたとき、家でママの話にリアクションをしなかったとき、そして天神でリサポンから「元気ない」と指摘されたとき、この『おむすび』というドラマには「描かれない行間」が出現します。そのときどきに主人公が何を考え、どんな風に振る舞ってきたかを描かず「察しろ」と画面のこちら側に強いてくる瞬間です。

 

 それは一見、脚本上の矛盾に見えるし、矛盾を解消するためにはけっこう必死に行間を想像する必要があるわけです。サラッと流し見して全部適当に受け流しておけば大して気にならないことですが、ちゃんと物語を咀嚼しようとすればするほど、面倒ごとが増えていくんです。ただでさえものすごいスローペースで進んでいる物語に、さらに描かれない行間がたくさんある。結ちゃん同様、ドラマそのものも、これみよがしに「本当は言いたいことがある」という顔をしているんです。

 

 今回、ドラマは本当に言いたいことを言うに至りました。ヤンキーギャルが恐喝している現場に遭遇し、そのヤンキーたちに結ちゃんがタンカを切ったのです。

 

「あなたたちと、彼女たちは、全然違いますから。みんなは人に迷惑をかけるような悪いことは絶対にやりません。そういうダサいことはやらない掟があるんです」

 

 ここでヤンキーにお説教をしたことでハギャレンは結ちゃんに心を打たれるわけですが、これも唐突なんだよな。唐突だし、距離感も変なんです。

 

 ギャルのことをママに「あんな不良みたい」と言ってみたり、ここでも「彼女たち」と言ってみたり、ドラマそのものが結ちゃんの身の置き場に迷っているというか、あえて定めないようにしている感じがする。だから、いつの結ちゃんのどの発言に共感したらいいかわからなくなってしまう。

 

 まあ、ラストにはこれまで空想上の生き物だったカリスマギャルのお姉ちゃん(仲里依紗)が実家に帰還しましたので、少しは結ちゃんの本心があらわになるシーンも訪れるかもしれません。これでもいちおう、結ちゃんのこともっと知りたいと思ってるのよぅ。頼むよ。

 

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

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最終更新:2024/10/18 15:00
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