【24年秋ドラマ】『あのクズを殴ってやりたいんだ』第2話 「人殺してる」という表現とモチーフに対するスタンス
#あのクズを殴ってやりたいんだ
いやーこの週末はボクシング盛り上がりましたね。中谷潤人はエグい怖い怖い怖いでしたし、何気に拳四朗もヤバいよねあれ。天心くんも全然悪くなかったと思うよ!
というわけで、プロボクシング現WBOアジアパシフィックバンタム級チャンピオンの那須川天心選手が毎回違う役でカメオ出演していることでも話題のドラマ『あのクズを殴ってやりたいんだ』(TBS系)は第2話。市役所で平和に働いていた女の子“ほっこー”こと佐藤ほこ美さん(奈緒)がクズ男に騙され、そのクズ男・海里(玉森裕太)を殴るためにボクシングを始めたお話です。
ジム会長のひとり娘・ゆいさん(岡崎紗枝)がおっかなくて、「ロープ500回跳べるまで入会させない」とか言ってるし、果たしてどうなるのでしょうか。
振り返りましょう。
■今回はクズ男・海里くんの情報開示回
超絶イケメンの海里くんと出会って一度は運命を感じたほっこーでしたが、まあひどい扱いを受けて「殴る」ことを決意。ボクシングを習い始めましたが、筋肉痛でお仕事もままなりません。
そんなある日、カメラマンである海里くんがほっこーの仕事現場にスチール担当として現れ、2人は一緒に仕事をすることに。ほっこーはあいかわらず雑な扱いを受けていますが、その写真の出来の良さには感心している様子。そのほか、ジムで古い写真を見つけて海里くんがプロボクサーだったらしいことを知ったり、迂闊にも何か因縁がありそうな会長(渡部篤郎)と引き合わせてしまったり、神社で縄跳びの練習しているところをヤカラにからまれて海里くんに助けてもらったり、その間に500回くらい跳べるようになってたり、海里くんが「その証人になってあげる」と言ってくれたり、近い距離で踏み込みとバックステップを繰り返しながら上下に打ち分けてくる海里くんに翻弄されています。まるで先週土曜日に拳四朗にボコられたクリストファー・ロサレスのようです。鼻血もよく出るし。
そんな海里くん、今回はいろいろな秘密が明かされました。バーの客だった男の子(倉悠貴)を家に住まわせていること。その男の子の紹介でカメアシのバイトを始めたことがカメラマンになったきっかけだったこと。女の子からの貢物を売って生活していること。「ヒラヤマミチエ」という人物に毎月、収入のすべてを送金していること。
今回、ほっこーと海里くんの心情や関係性に特に変化はありませんでした。ほっこーは相変わらず海里くんのことばっかり考えているし、海里くんはアンニュイな表情でいろんな女の子たちを手玉に取っています。1話2話を使って、まずは物語を転がすための情報開示を行っているという感じです。
今のところほっこーにも海里くんにも、人物としてはあんまり興味が持てない感じですが、奈緒ちゃんのお芝居はとってもいいですね。軽妙だし表情豊かだし、本気でボクシングにのめり込んだときにどんな顔になるのか、それは楽しみです。
あと、天心が1話ではチンケな浮気男、2話ではケチな質屋というチョイ役をやってるのも楽しいです。ドラマなんか出てる場合かって怒られるかもしれませんけど、めちゃくちゃ練習してるのは試合見たらわかるからね。がんばれ。
■「海里さん、人殺してるんです」
海里さんの過去情報として、同居人の男の子がデート相手のほっこーの同僚に言いました。
「海里さん、人殺してるんです」
今回、中盤でも試合中の事故で海里の相手選手が救急搬送されるシーンが海里のフラッシュバックとして差し込まれています。
ボクシングは相手の頭部や腹部に拳で直接打撃を与えて、その身体を機能不全に至らしめることを目的にしたスポーツです。それゆえ、往々にして重大な事故が起こるし、結果、死んでしまうこともあります。競技として成立させるためには絶対に避けなければいけないことだけど、その危険性が競技としての魅力であると喧伝されることも少なくありません。どう取り繕おうとも人が人を殴り殺していることは事実だし、『あしたのジョー』で描かれた力石徹のエピソードはあまりにも有名になりました。
マンガの中ならいいけれど、業界もファンも、こうした現実のリング禍にはとてもナーバスです。
事故で相手が亡くなったボクサーがタイトルを獲ると、メディアはすぐに美談として扱います。「魂の乗った拳」「天国のあいつも見てる」。そうした報道に眉をしかめる者もいれば、心を打たれて涙を流す者もいます。いずれにしろ、そのすべてを見世物として提供するのが、プロボクシングという世界です。
「海里さん、人殺してるんです」
そういう設定を持ち出すのであれば、そして「殺してる」という直接的な表現を使ってしまうのであれば、このドラマはボクシングというモチーフに対するスタンスを徹底的に問われることになります。
前回、第1話のレビューで「ボクヲタはプヲタより陰湿ですからね、ナメたことすると大変ですので、そのへん気を付けてほしい」と書きました。よりにもよって、いちばん痛いところを触ってきましたので、ちょっと身構えて第3話を待ちたいと思います。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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