『若草物語』第2話 恋愛を拒否する女性の「創作者としての愉悦」のリアル
#若草物語
脚本家が脚本家のドラマを書くわけですから、そこには当然、自伝的な要素が込められてしまうわけで、いわばこの1話2話はピンピンにトガっていた時期の思想を描いた自虐的なパートなのでしょう。
『若草物語 ─恋する姉妹と恋せぬ私─』(日本テレビ系)は一見、4姉妹それぞれの生きざまを描くドラマかのように宣伝されていますが、主人公はあくまで次女のリョウ(堀田真由)、そのリョウが姉妹や周囲とかかわりながら脚本家という仕事にどう向き合っていくかというお話のようです。
第2話、振り返りましょう。
■後悔と未練がすごい
前回、大御所脚本家の黒崎さん(生瀬勝久)によるありがたいお説教に反発し、「仕事やめて脚本家になる」とタンカを切ったリョウですが、すぐさま現実問題に思い至り激しい後悔にさいなまれます。妹のメイちゃん(畑芽育)の学費も払わなくちゃいけないし、自分の奨学金も返さなきゃいけない。放り出した現場にも迷惑がかかる。そもそも、そんなすぐ脚本なんて書けないし。
そんなわけでしれっと制作会社に戻ろうとしますが、すでに自分の席には別のADが座っているし、あんなに仲の良かったプロデューサーの柿谷さん(臼田あさ美)も「この業界、去る者は追わずでしょ」とあっさりしたもの。改めて、戻る場所がないことを悟ったリョウは、馴染みの局スタッフやAPさんに「演出やめて書くほうに回った」と営業して回りますが、当然、すぐに仕事がもらえるわけもありません。そんなこんなで、賞金100万円の新人脚本賞に応募することにしました。
締め切りまでわずか3日、題材さえ決められないリョウは、2年前に姿を消した妹・エリ(長濱ねる)に愚痴LINEを送ります。決して既読にならないそのLINEに思いを吐き出すと、またパソコンに向かうリョウ。そこに、幼馴染でつい先日9年ぶりに再会した男の子・リツ(一ノ瀬颯)から「助けて」とメッセージが。
手を止め、気分転換もかねてリツの部屋を訪れたリョウ。組み立て式の棚をリョウの代わりに組み立ててあげると、リョウ特製のスープカレーを食べながら、また脚本を書くことにしたけど行き詰っていると素直に告げます。
ちょうどそのころ、妹のメイちゃんの浮気彼氏とメイちゃん自身の浮気相手・沼田(深田竜生)が鉢合わせし、勢い、彼氏が沼田を殴ってしまう事件が発生。メイちゃんに呼び出され、姉のメグ(仁村紗和)、メグの彼氏、リョウ、リツ、メイちゃんが警察署に一堂に会することに。わちゃわちゃと口ゲンカになりますが、リョウはこの事件をモチーフに脚本を書くことにしたのでした。
■それはもうセックスです
学生時代、演劇部で脚本を書いていたリョウのそばには、いつもリツがいました。リョウがセリフに詰まると、リツが助け舟を出してくれた。
そのころとまったく同じように、リョウとリツは部屋にこもって脚本作りを始めます。人物を配置し、リョウがセリフとト書きをしゃべって、それをリツがパソコンに打ち込んでいく。
作品が作家の生み出した子どもだとして、それを作ることを2人で協力してやるなら、それはもうセックスなんです。
脚本を書くことは裸を見せることです。そのセリフを自分で読み上げるなんて、裸踊りなんです。
大御所脚本家の黒崎さんはリョウの創作姿勢を指して「自分を主語にしてドラマを作ったところで、マスには届かない」と断言しました。そうした創作を、界隈では「オナニー」と呼びます。
それを2人でやってんだもんな。学生時代から、リツと2人でやってたんだもんな。
リョウは恋愛にも結婚にも興味がないと言います。それが自分にとって自然だと。
しかしリョウには、自分にとって一番大切なことを、一緒にやる相手がいる。その相手のために棚を作ってやる労力を厭うことはないし、一緒に美味いものを食えば美味い。
それは「恋愛」という名前の関係ではないし、「結婚」という手続きに向かっているわけではないけれど、かけがえのない特別な関係であることは間違いありません。そして、2人で作品を作る行為はリョウにとって、これ以上ない悦びであることが描かれます。
そうして完成した脚本はコンクールの二次で落ちて、審査員だった大物恋愛脚本家の大平かなえ(筒井真理子)の目に留まり、リョウは大平に弟子入りすることになりました。
その『ラブ・パンデミック』っていうリョウのオリジナル脚本ですが、ぜんぜんおもしろくなさそうだけど、セリフが生き生きしてるんだって。ゴールデンを任されているプロの脚本家が、リョウという架空の人物の脚本術をどう進化させていくのかにも注目したいところです。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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