トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『潜入兄妹』第2話 ジョニー・トーを彷彿

『潜入兄妹』第2話 ジョニー・トーを彷彿させるジェットコースター作劇と中華鍋

竜星涼(GettyImages)

 前回、暗くてよく見えなかったのでドラマオリジナルのコンプレッサー銃だと思っていた“始末屋さん(フェルナンデス直行)”の武器ですが、よく見たらシンプルな高圧式のネイルガンでしたね。大工さんが日常的に使っている釘打ち機だ。ますます好きになりました。

 というわけで、ゴリゴリの香港ノワールオマージュドラマ『潜入兄妹 特殊詐欺匿名捜査官』(日本テレビ系)も第2話。静止画による前回のダイジェスト、赤い筆文字で「全員犬死62時間前」と大書きされたり、むやみに中華鍋から炎が上がったり、今回もオマージュ捧げまくっています。超楽しい。

 振り返りましょう。

■すぐ解決、すぐピンチ

 前回、「警察の犬」であることがバレたキイチ(竜星涼)とユキ(八木莉可子)の潜入兄妹。さっそく始末屋が背中に立って引き金を引きますが、間一髪かわすとあっさりネイルガンを奪い取るキイチ。ガンを向けられた始末屋はエアポンプを持ったままですので、ホースを引き抜けばキイチの持っているネイルガンは無力化できますが、そんな無粋なことはしません。なぜなら香港ノワールにおいて男たちは、銃を向け合って膠着しなければならないからです。

「説明させてくれ……!」

 キイチはオンラインでつながったままの玄武(吹越満)に「手土産を持ってきた」と言います。警察にわざと捕まってユキがデータベースをハッキングし、県警の捜査資料データを盗み出してきたと言います。

 これを信用したわけではないが、玄武はキイチたちにチャンスを与えます。3日で5,000万円を用立てしてこい。できなければ殺す、連帯責任でハコごと全員。

 こうしてピンチを抜け出し、またすぐピンチが訪れる。このスピード感。水たまりに膝をついて「あの玄武ってやつ、狂ってる……」とつぶやくユキのメランコリー。「大丈夫だ、俺が守る……」と肩を抱くキイチとの絆。劇伴のコントラストとカメラの揺れさえあれば、登場人物の心理描写はたった一言で片付いていく。そうして開始たった5分で、今回の課題である「3日で5,000万円を作る」という無理難題に向き合う準備が整います。

 そして、満を持して「全員犬死62時間前」の大書きが画面を埋め尽くすわけです。

 たまらんね、たまらんのよ。

 今回、キイチが絵を描いて詐欺師から1億のカネを引っ張ることに成功するわけですが、そのプランには知略が尽くされているのに、最後は結局ケンカの強さで切り抜けてしまうところなんて、実に潔くて素敵です。

 3日で5,000万円の課題に対して倍額回答をしてみせたキイチでしたが、そのプロセスにおいて警察しか持っていないはずの名簿を使ったのがマズかった。詐欺集団「幻獣」の幹部のひとりである朱雀(白石聖)の差し金によって兄妹そろって拉致されてしまい、今度は電ノコで首を切られそうなところで「最悪だ……!」とキイチが叫んで、次回へ。どうせまたすぐピンチを脱するし、また新たに絶体絶命のピンチが訪れることでしょう。

■熱情を記号化していく

 演出だけじゃなく、脚本もちゃんと香港ノワールをなぞってる感じがするんです。絶体絶命のピンチが訪れ、とりあえずその場だけ乗り切ればいいだろうという程度の無理筋の逃げ道を用意しておいて、その直後に強引につじつまを合わせてくる。あくまでリズムと振り幅重視のジェットコースター。

 絆だったり裏切りだったりという熱量の高い感情を次々に記号化して積み重ねていく作劇は、どうしたってジョニー・トーの世界観を彷彿させます。

 この時代に日テレが香港ノワールをド正面からドロップしてきた意図はよくわかりませんが、とにかく作ってる人が好きで研究してきたことが伝わってきますので、一緒に楽しもうという気にさせてくれます。とりあえずしばらくは、土曜の夜に新作の日本語ノワールが見られるわけで、ありがたい限りです。竜星涼くんも『ACMA:GAME』(同)のときはどうしようかと思ってたけど、今回の役はけっこう好きよ。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

どらまっこあきちゃん

記事一覧

Twitter:@dorama_child

https://note.com/dorama_child

最終更新:2024/10/13 17:00
ページ上部へ戻る

配給映画