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『キングオブコント2024』祝ラブレターズ、尻穴に翻弄されたコント師たちの運命の悪戯【前編】

TBS

 17回目となった『キングオブコント』(TBS系)を制したのはラブレターズ。芸歴はきっかり17年、初開催となった2008年から同大会に参加しており、最初のファイナル進出は4年目の11年。優勝したロバートの秋山竜次は審査員席に座っていた。

 2回目のファイナルは14年、優勝したシソンヌのじろうもまた、審査員席に座っている。準決勝で敗退した15年の覇者、バイきんぐ・小峠英二も審査員だ。そしてかまいたちが優勝した17年から5年間、ラブレターズは準決勝にすら残れない5年間を過ごす。

 時代はいつだってニュースターを求めている。雌伏の5年間、ラブレターズは常にシークレットシューズを履いて過ごしたり、恩人であるディレクターの披露宴で長々と「西岡中学校」をやって大スベリしたことをオードリーにラジオで暴露されたり、とにかくいろいろ苦しんでいた。悔しいことのほうが多かったかもしれない。

「西岡中学校」という“型”で鮮烈にデビューした『キングオブコント』に昨年、ラブレターズは“ニン”をまとって戻ってきた。そして今年、それが爆発した。学ランのかわいい2人組は小さいおじさんの2人組になって、王座にたどり着いた。

 赤いジャケットを着た2人はいつになく大きく見えた、と書いたらカッコいいところだが、やっぱりどうしても小さいままで、その年を重ねた顔面には「コント日本一」という称号がよく似合った。

■始まりは対照的

 記憶に新しいところだ。去年の『キングオブコント』は波乱の幕開けだった。トップバッターのカゲヤマがお尻を放り出して爆笑をさらった。今年の1番手はロングコートダディ。セットなし、派手なアクションもなし、特殊なフレーズもなし、さらに言えば「変な人」でもない、兎の人格と堂前の常識を衝突されて笑いを生み出すストイックな入りだった。最後に兎の言動がすべて誠実なものだったことを示した上で、堂前のひとことでさらにもうひとつ裏切る。ロングコートダディは、終わり方を知っているコンビだ。

 今回から審査員に加わったじろうの96がめくられて、にわかに緊張が走る。山内95、秋山と小峠が94で続いて、実質“審査委員長”のイスに座った東京03・飯塚悟志も96を付ける。475点。決して爆発したわけではないと思う。きっちりおもしろくて、スタイルとしてカッコよくて、減点対象がない。その結果の高得点だっただろう。

 2番手はダンビラムーチョ。「冨安四発太鼓」という架空の伝統芸に対し、審査員は軒並み点数を下げる中、秋山だけがロコディより高い95を付ける。どこか「トゥトゥトゥサークル」や「シャーク関口ギターソロ教室」といったロバートの架空集団ネタとシンパシーを感じたのかもしれない。このあたりから、審査員の趣向があらわになり始める。

 シティホテル3号室、今度は飯塚がロコディを上回る97を入れてくる。仕掛けの美しさに特化したネタは、こういう言い方は非常に失礼だし語弊もあることを承知で言うが、「人力舎っぽい」と感じた。飯塚の採点は、おもしろさに仕掛けの秀逸さが乗ると点数が伸びるようだ。

■尻の穴にラインが引かれたか

 や団。暴走する伊藤と笑顔で受け流す中嶋のコントラストがあり、本間がその2人ともに忙しくツッコミを入れる構造はメジャーデビュー戦となった22年の「キャンプ場」と同様のもの。や団が『キングオブコント』でネタを披露するのは4本目になるが、その4本ともが高次元でまとまっていて感心してしまう。本間が完全にネタの書き方、自身も含め3人の使い方を把握したということだろう。準決の配信で見た2本目も同じくらいおもしろいネタだった。

 96、94、96、96と高得点を叩く中、飯塚だけが92で底を打つ。飯塚はや団に対し、22年の1本目で95、2本目で96、23年も94を入れている。飯塚が今回、や団のネタ後にコメントを求められなかったためあくまで予想でしかないが、おそらくは「尻の穴」が減点対象ではなかったか。22年、いぬのキスネタに「反則」と言い切った場面が思い起こされる。この飯塚の採点が、結果的には勝負の行方を大きく左右することになった。

 コットンのネタはテレビより現場のほうが評価が下がるだろう。テレビでは西村の人形劇だけが映っている時間帯でも、舞台上では「何もしていないきょん」が常に目に入ることになる。きょんの芝居への期待が大きい分、評価は厳しいものになったはずだ。人形同士のエロいキスといった笑いどころも、スタジオでは十分に伝わっていなかっただろう。

 小峠は、や団とニッポンの社長、ラブレターズに最高評価の96を入れており、そのうちのや団とニッ社に、飯塚は92を入れている。育ってきたステージの違いを感じた。Beach Vとバカ爆走、ともに賞レース王者を何組も生み出している名門だが、よりバカが爆走していたのはBeach Vのほうだったはずだ。舞台は暴れてなんぼ、ブチ壊してなんぼという小峠の哲学が見える採点だった。

(文=新越谷ノリヲ/後編に続く

新越谷ノリヲ(ライター)

東武伊勢崎線新越谷駅周辺をこよなく愛する中年ライター。お笑い、ドラマ、ボクシングなど。現在は23区内在住。

n.shinkoshigaya@gmail.com

最終更新:2024/10/13 03:00
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