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『ライオンの隠れ家』第1話 坂東龍汰は最高だけど「ASD×ミステリー」という構造は大丈夫か

柳楽優弥(GettyImages)

『アイ・アム・サム』(01)のショーン・ペン、『レインマン』(88)のダスティン・ホフマン、『ギルバート・グレイプ』(93)のレオナルド・ディカプリオ、『フォレスト・ガンプ/一期一会』(95)のトム・ハンクスと、目のくらむようなビッグネームたちが印象的なお芝居をしていた作品がありました。

 今回、自閉スペクトラム症(以下、ASD)の青年・みっくんを演じている坂東龍汰、うーんなかなか、負けず劣らずなんじゃないですかね。よく研究したのだろうし、堂々と、敬意を持って演じていると思います。坂東くんのお芝居だけでも、このドラマは見る価値あるなぁと思わせます。

 というわけで、TBS系の金曜ドラマはオリジナル脚本の『ライオンの隠れ家』。ASDの青年とその兄が慎ましく暮らしている家に正体不明の「ライオン」なる子どもが現れ、ひっちゃかめっちゃかという感じのようです。ほのぼのファミリー系かと思いきや、なんだかちょい怖なサスペンス要素もありそう。

 第1話、振り返りましょう。

■広げた風呂敷がでかい

 市役所勤めの小森さん(柳楽優弥)は、ASDの弟・みっくんと2人暮らし。両親は鬼籍に入っているようで、日々、みっくんの面倒を見ながら生活しています。みっくんは毎朝、お迎えのバスに乗ってデザイン会社に出勤します。その会社では、みっくんと同じようにさまざまなハンディキャップを抱えた人々がデザイナーとして働いています。中でもみっくんは優秀なようで、みっくんが描いたライオンの絵が動物園のポスターに採用されることになったとか。

 みっくんは動物の生態についての知識や色の識別能力に特別な才覚を発揮する一方、イレギュラーに弱く生活パターンが崩れるとパニックを起こしてしまいます。

 そんなみっくんの目の前にある日、「ライオン」を名乗る6歳くらいの子ども(佐藤大空)が現れます。ライオンはみっくんたちの家に上がり込むと、「ここで暮らす」と言い始めました。そんなの、どうにも受け入れられないみっくん。兄の小森さんも翌日にはライオンを警察に連れていくつもりでしたが、ライオンがカレーに大量のマヨネーズをかけていたり、ライオンの背中に虐待痕とみられるアザを発見したり、ライオンから渡されたスマホに「じゃあ、あとはよろしく」というメッセージが届いていたりで、ちょっと決意が揺らいでいます。

 というのも、小森さんには6歳上の姉がいました。父親の連れ子で、高校生のときに「じゃあ、あとはよろしく」と言い残して小森さんの前から姿を消した姉・愛生(尾野真千子)。その姉もまた、何にでも大量のマヨネーズをかける人なのでした。

 姉の子どもかもしれないし、どうやら虐待されてるし、小森さんはライオンを警察に届けるのはやめて、自宅で一緒に暮らすことにしました。みっくんとライオンも、ちょっと和解したしね。

 一方そのころ山梨県の片田舎では、橘さん(向井理)が妻と息子の捜索願を警察に届けていました。もう3日も家に帰っていないそうです。

 山奥の吊り橋で、その母子の靴だけが発見されます。その母子こそ、小森さんの姉の愛生とライオンなのでした。

 ASD、児童虐待、行方不明事件をめぐるサスペンスと、いろいろ大風呂敷をひろげて要素てんこ盛りで、多くの謎を残したまま、第2話へ。

■ASD×ミステリーの組み合わせ

 まずは小森さん、市役所の職員なのに虐待児に対する選択肢が「一緒に暮らす」か「警察に突き出す」しか出てこないのは行政で働く者としてどうしたものでしょう。子ども支援課のかわいこちゃんとも仲良しなんですから、児相につなぐという選択があってもいいと思うんですよね。でもそれは、まあドラマだししょうがない。警察の前まで行って、ライオンの手を引いてやっぱり連れて帰ることにした小森さんの動機はかなり弱いし、あんまり賢くない選択ですが、それはドラマの展開が要請したものですので、目をつぶりましょう。

 ひとつ心配なのが、今回、みっくんの発言のいくつか、例えば「どこを飛ぶかはウミネコの自由です。ウミネコだって違う景色見たいときだってあります」だとか「そのプライド(群れのこと)は安全ですか?」とか、ASDの人物の発言がまるで物事の真理を示唆しているかのような扱いをしているんですよね。天啓めいたもの、預言めいたものとして使われている。あの人たちはコミュニケーションや生活に難はあるけれど、実はすべてを見通す者である、あの人たちこそが真理を知る者である、というニュアンスが見えるわけです。

 ASDや障害者に対するそういう“聖者扱い”的な考え方の倫理的な是非についてはとりあえず置いておくとしても、これがミステリーと組み合わさるとちょっと危険だなと感じるんです。

 何か謎があったときに、ASDのみっくんの発言がきっかけでその謎が解かれてしまうと、ASDが単なる「キャラつよ超能力者」みたいになってしまいそうな気がするんです。

 みっくんが言うこと為すこと、全部にミステリーを解くヒントがあるんじゃないかと思わせちゃうと、ASDを扱うドラマとしてはちょっと違うよなということになると思うんです。要するに、みっくんをマクモニーグルにしてはいけないということです。そこらへん注意深く見ていきたいと思います。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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最終更新:2024/10/12 15:00
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