『おむすび』第10回 ブレまくるルーリーのキャラ、ブレまくるドラマのギャル観
#おむすび
NHK朝の連続テレビ小説『おむすび』も第10回。「ギャルって何なん?」というサブタイトルが打たれた2週目が終わりました。
物語が停滞していて、そろそろなんらかのアクションを提示してくれないと苦しいという話を昨日しましたが、今回は結ちゃん(橋本環奈)がいよいよ「パラパラ教えて」とハギャレンのみんなに申し出ました。ようやく一歩進んだね。進めばいいってもんじゃないね。
振り返りましょう。
■パラパラ結ちゃんかわゆい
冷たい母親、冷たい家庭に辟易して夜の街を徘徊するルーリー。怪しい男たちのナンパからは通りがかりのポリスが救ってくれましたが、未成年なので補導されることに。交番で事情を聞かれますが、自分の名前も親の連絡先もすべて黙秘。そのまま翌朝を迎えていました。
一方、高校に入って以来、週末はずっとハギャレンと遊んでいた結ちゃんでしたが、先日決裂したことで久しぶりに実家の農家の手伝い。パパ(北村有起哉)は相変わらず不機嫌ですが、ブロッコリーの収穫、仕分けなどにいそしんでいます。
そんな結ちゃんに、まずはクラスメートギャルのリサポン(田村芽実)から電話が。どうやら、ルーリー(みりちゃむ)と連絡が取れないのだといいます。
続いて当のルーリーから「天神の東交番に迎えに来て」とギャル文字でメールが来ます。ルーリーは交番で親の携帯番号を教えたものの、パパは中国に出張中、ママは東京なので迎えに来る人がいない。そこで、なぜか結ちゃんに「迎えに来て」とメールを打ってきたのでした。
訝しがるパパに「晩ごはんまでには帰る」と約束して天神に向かった結ちゃん。交番に着くとリサポンとスズリン(岡本夏美)も現れますが、ポリスは「未成年が迎えに来ても意味がない」となしのつぶて。そこに、結ちゃんのメールを盗み見していた結ちゃんママ(麻生久美子)が現れ、ササっと書類にサインしてルーリーを解放するのでした。
ルーリーは、冷たい家に一秒たりともいたくない、ハギャレンしか居場所がないと言います。だからハギャレンを守りたい。
その話を聞いた結ちゃん、「パラパラ教えて」とハギャレン入りを申し出るのでした。そこに現れたのは、結ちゃんのハギャレン入りに強硬に反対していたダンサーのタマッチ(谷藤海咲)。「本気なの?」と結ちゃんを詰めますが、うなずく結ちゃんの姿を見ると、みんなでパラパラの練習を始めるのでした。
踊れない結ちゃん、かわいいです。いやでもね、あのね。
■ルーリー練習しろ
今回はルーリーのバックグラウンドとハギャレンへの思いが語られたわけですが、そんなことなの? って思っちゃうんだよな。
展開の発端になるルーリーの深夜徘徊ですが、そのきっかけが「親が冷たい」だったんですよね。冷たいって言っても、仕事で東京に行くということで、晩飯代の1万円も置いて行ってる。確かに態度はそっけなくはあるけど、ハイティーンの親としては役割を果たしている。
この日はリサポンとスズリンが共に「親と食事」という予定があって、夜がヒマになっちゃった。家に帰ったらママはあんな感じだし、つい比較しちゃう気持ちもわからんではない。
でもさ、初めてじゃないだろ、そういう日。こんなことでくじけちゃうの? って思うわけです。
これまで、ルーリーがギャルであることの「筋金入りっぷり」が語られてきました。ゲーセンでおじさんに「クズ」って言われても、結ちゃんに「何も考えてない」って面罵されても、明るく返すのがルーリーというキャラクター、ひいては『おむすび』というドラマにおけるギャル像・ギャル観だったはずなんです。昨日今日のギャルじゃない、ギャルは生きざまであるというメッセージだけは、なんとか受け取ってくることができていた。
それがひっくり返された感じがするんですよね。たった一晩、なんだか気が晴れない夜が来ただけで自暴自棄になって、あてもなく夜の街に出てしまうって、ナイーブすぎるんです。何年ギャルやってんだよ、と思っちゃう。ここまで描かれてきたルーリーだったら、こんな夜でもひとりで鏡の前でパラパラの練習とかするはずなんです。いちおう踊れるけどタマッチよりは踊れないわけだし、糸島のお祭りでのパラパラ披露を成功させることがとりあえずハギャレンとして今もっともやらなきゃいけないことなわけだから、練習しろ、ルーリー。
それ以前に、ルーリーって普段何してるんだろう。交番での話から察するに学校にも行っていないし、仕事もしていない。タマッチはダンサーだというし、スズリンはネイルの資格取るためにバイトしてるし、リサポンは高校生だけど、ルーリーはなんなの? ニートなの? ニートで、親に晩飯代1万もらって、それでスネてるようだといよいよヤバい人ってことになりますけど。
あと、ハギャレンを守りたいというルーリーの思いをくんで結ちゃんは仲間になることを決意するわけですけど、ハギャレンを守るって何? 家に居場所がないからっていう理由でギャルやってるなら、別にさ、スズリンとタマッチとリサポンがいればよくない? ルーリーにとって友達ってなんなの? なんで組織をデカくする必要があるの? 結ちゃんはなんで納得してんの?
要するに、この物語が始まる以前、直前までのルーリーの人生がまるで設定されてないんです。子どものころに結ちゃんの姉のあゆに助けてもらってギャルに憧れたことはわかるけど、どうやってタマッチやスズリンたちと出会って、どういう生活の中でどういう日々を過ごしてきたかというところが、まったく考えられてない。ただ結ちゃんをギャルにするための受け皿としてしか、道具としてしか考えられてない。
「ギャルって何なん?」という週で、このドラマがギャルについて全然リスペクトしてないことが明らかになったように見えました。そして、昨日は結ちゃんについて全然人物像が掘り下げられてないと書きましたが、今日はルーリーについてもまったく掘り下げられてないことが明らかになってしまった。
ちょっとかなり、今のところ失敗していると思います。あと半年近くあるんですけど、大丈夫なのこれ。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事