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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『全領域異常解決室』モザイクスプレー?

『全領域異常解決室』第1話 モザイクスプレーって……1つのフェイクがミステリーを殺す

藤原竜也(GettyImages)

 フジテレビ系の水曜10時は藤原竜也主演の『全領域異常解決室』。映画化もされた『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)や、福山雅治が全盲の捜査官を演じた『ラストマン-全盲の捜査官-』(同)といった話題作を提供してきた黒岩勉さんのオリジナル脚本です。

 やっぱり、とりあえず藤原竜也が出てたら絶叫してほしいんですよね。「お母さん! もう一度僕を妊娠してください……!!」から始まり(初舞台の『身毒丸』ね)、「どうしてみんな簡単に殺し合うんだよ!!」の映画『バトル・ロワイヤル』(00)、「悪魔的だぁああ!」の『カイジ』シリーズと、数々の絶叫セリフで語られる俳優さんって、藤原竜也くらいじゃないでしょうか。期待しちゃうね、絶叫。

 そういうわけで、とりあえずは絶叫しなかった第1話、振り返りましょう。

■オカルトを暴くためにオカルトを知ろう

 主人公の興玉(藤原)が働いているのは、内閣直属の「全領域異常解決室」という機関。通称「全決」というそうで、なんでも日本最古の捜査機関なんだって。陰陽師とかも、「全決」の一部だったそうです。

 そこに配属されてきたのが、警視庁総務部広報課の雨野小夢(広瀬アリス)という女性で、広報課と言っても警視庁音楽隊カラーガードの一員。よく式典なんかでピンクのきれいな衣装を着て大きな旗を回している女の人たちですね。

 そんな小夢が、何やら「素質がある」とのことで呼ばれた「全決」、何をするところかといえば、オカルトめいた事件があったときに警察の捜査に協力する組織だとか。

 そういうわけで、このドラマにとっての最初の事件が起こります。

 歌舞伎町の路地裏で、ある変死体が発見されました。正しくは、大量の血液と着ていた服、髪の毛、荷物だけが残って、そこには死体がない。そういう“神隠し”を思わせる事件が、ここ最近立て続けに8件も起こってます。その事件が起こるたびに「ヒルコ」を名乗る犯行声明が出されており、世の中もまあまあ騒いでいます。「ヒルコこそ救世主だ」的なやつですね。

 8件のうち、直近3件は同じ第1発見者でした。メン地下崩れのYouTuber・ルイくん(吉村界人)で、3人の被害者はいずれもルイくんを推していた。ルイくんは「ヒルコが見える!」とかYouTubeで吹聴してチャンネル登録者数を伸ばしており、どう考えても怪しい感じです。

 この事件の捜査に参加することになった興玉は、「ヒルコではなくシャドーマンの仕業では?」と見立てます。「シャドーマン」とは、今世紀初頭から世界各地で目撃されている人の影のようなUMAで、一説には妖怪「黒髪切り」も実はシャドーマンではないかといわれているそうです。

 この「シャドーマン説」が世間に広まると、数々の目撃談や映像がネット上に投稿されました。しかし、その映像はフェイクであることが断定されています。着ている服に「モザイクスプレー」を吹きかけてビデオカメラで撮影すると、まるでシャドーマンのように映ることがわかっています。

 えーと、もういろいろしんどいんで割愛しますが、興玉たちはとりあえず直近の3件についてはオカルトではなくトリックを使った殺人だったことを突き止め、事件を解決しました。メン地下ファンたちの推しをめぐる執念と偏愛が招いた凄惨な事件でした。残りの5件の“神隠し”については、次回以降に先送りです。

■モザイクスプレーって何やねん

 このドラマがやろうとしていることは、一見、人知の及ばないオカルトめいた事件を、興玉たち全決が推理によって「ほら実現可能じゃん」と種明かししてみせるということのようです。

 そのコンセプト自体はとっても楽しいものですし、「トンデモ」に見せかけて実はきっちり頭を使って作ってるよ、という主張も感じられました。たった一点を除いて、トリックそのものもそれなりの完成度はありますし、殺意にも殺人者の気持ちが乗っていて納得感がある。

 そのたった一点、「モザイクスプレー」という架空の夢スプレーを出してしまったことで、まあホントに、ミステリーとしては見事なまでに台無しになっています。

 今回は「シャドーマンの謎」が最大のテーマであって、そのシャドーマンが犯行現場近くのカメラに映っていたことから「全決」の出番が訪れています。

 このドラマは「オカルト現象」と「リアル」の落差を楽しむ構造になっていますので、事件解決にまつわるすべての要素を「オカルト」か「リアル」のどちらかに配置する必要があるわけです。カメラ映像ではなく、実際にルイくんが人影が見えると言っているのはオカルト、神隠しに遭ったと思われていた死体が河川敷で見つかったのはリアル。いわば、リアルがオカルトを論理的に突き崩していくところに快感を見出したかったはずなんです。

 だから、モザイクスプレーというオカルトでもリアルでもない物語上のフェイクが登場した時点で、快感を生み出す構造が崩壊してしまっている。トリックの中に「ないもの」を出した瞬間に、リアルな解決がリアルではなくなってしまうんです。よく知らんけど、光学迷彩とかでどうにかできなかったのかな、これ。

 今回はモザイクスプレーの存在によって台無しになってしまいましたが、オカルトを解き明かしていくという建付けそのものは全然悪くないと思います。そして何より、藤原竜也がそのうち絶叫してくれるでしょうから、まだまだ興味を失ったわけではありません。

 ほんと、モザイクスプレーの一点以外は全然悪くないと思う。なんとかがんばってほしい。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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最終更新:2024/10/10 19:00
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