『塔の上のラプンツェル』は毒親との闘い 『ジョーカー』によく似たディズニーヒロイン
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19世紀に成立したグリム童話の一編『髪長姫』を、現代的にどどーんと大アレンジ。それがディズニーアニメ『塔の上のラプンツェル』(2010年)です。日本では中川翔子(歌唱シーンは小比木麻里)が吹き替え、国内興収25.6億円のヒット作となりました。10月11日(金)の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)では、『塔の上のラプンツェル』が放映されます。今回はその注目ポイントを掘り下げてみたいと思います。
ディズニー版のラプンツェルは王家のお姫さまとして生まれましたが、幼いころに400歳の老婆ゴーテルに拐われてしまいます。ラプンツェルの美しい髪には、ゴーテルを若返らせる不思議な力があったからです。ラプンツェルはゴーテルを実の母親と信じて育ち、高い塔の上に閉じ込められて暮らします。
18歳になったラプンツェルが「外の世界に行ってみたい」と言っても、ゴーテルは「危ないからダメ」「母親の言うことに従えないの?」と許そうとはしません。ゴーテルは誘拐犯であるのと同時に、恐ろしい「毒親」でもあったわけです。
『ルパン三世 カリオストロの城』によく似た展開
塔の外に出ることができずに悶々としていたラプンツェルの前に現れたのが、大泥棒のフリン・ライダーです。ラプンツェルはフリンに頼んで、外の世界へと連れ出してもらいます。
塔の中に幽閉されていたお姫さまを盗賊が救い出し、追いつ追われつの大騒動になるという展開は、宮崎駿監督の劇場デビュー作『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)によく似ています。ちなみに原作となるグリム童話では、ラプンツェルのもとに現れるのは王子さまです。王子さまが夜な夜な塔に忍び込み、ラプンツェルと楽しいことをするエロいお話です。ディズニー版とはまるで違います。
製作総指揮のジョン・ラセターは、宮崎アニメの大ファンですし、『カリオストロの城』もヨーロッパの童話をモチーフにした東映アニメ『長靴をはいた猫』(1969年)の焼き直し要素が強いので、似てしまったようです。『カリオストロの城』のクラリス姫をより現代ふうにアクティブにしたのが、ラプンツェルだと言えるでしょう。
毒親がやたらと出てくるディズニーアニメ
映画はやはり悪役のキャラが立っていると盛り上がります。ディズニーヴィランであるゴーテルは「外の世界は危険がいっぱい。あなたのために言っているのよ」とずっとラプンツェルに言い聞かせて育てたわけです。洗脳ですよ。
それでもラプンツェルが「やっぱり外に出たい」と訴えると、「苦労して育てたのに」「どーせ、私は悪者ですよ」と自虐的な言葉を並べて、ラプンツェルを黙らせてしまいます。会話を続かなくさせるのが、うまいんですよ。ゴーテルみたいな毒親、けっこう身近にいるんじゃないでしょうか。
ディズニーアニメって、振り返ってみると毒親がやたらと多いんですよね。『白雪姫』は母親に若さと美しさを妬まれて、毒殺されます。『シンデレラ姫』の母親は姉たちをかわいがり、シンデレラは召使い扱いされます。
いやいや、『白雪姫』は継母で血が繋がっていないだろう、と思われる方もおられるかもしれません。でも、グリム兄弟が書いた初版本の『白雪姫』は、実の母親が美しく成長した我が子・白雪姫を殺害しようとします。あまりにも残酷すぎるとグリム兄弟にクレームが寄せられ、第二版から継母という設定に書き換えられたそうです。血が繋がっているがゆえの近親憎悪でしょうか。毒親、まじで怖いっす。
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