『あのクズを殴ってやりたいんだ』第1話 「クズ男に沼るダメ女」は、どう覚醒するか
#あのクズを殴ってやりたいんだ
火曜10時のTBS系は『あのクズを殴ってやりたいんだ』。アラサー女性がボクシングを習って自分を変えていくというお話のようです。
そういう設定ですと、やっぱり武正晴監督の名作映画『百円の恋』(14)を思い出します。あちらでは安藤サクラ演じる主人公・一子はどうしようもないニートでしたが、こちらの奈緒演じる佐藤ほこ美は、ちゃんと市役所で働いている公務員。しかも、市政なん十周年だかのイベント企画が通りそうになっていたり、なかなか優秀なようです。
そんなほこ美ちゃんがプロボクシングのリングでしこたま殴られ、マットに沈みながら「なんで私、こんなことしてるんだっけ……?」と回想するところから物語はスタート。ちなみにほこ美ちゃん、試合ではサウスポースタイルに構えていますが、後のシーンでスマホを右手で操作していますので、右利きの左構え、いわゆるコンバーテッドサウスポーのようです。
世の中、右利きの人のほうが多いですから、左構えは珍しくて相手が対策を立てにくいということがあるんですね。それで、右利きでもあえて左に構える選手も少なくないわけです。最近だと世界3階級制覇の中谷潤人とか、「神の左」で知られる山中慎介もそういわれてますね。山中の場合はもともと左利きなのに右投げ右打ちで野球をやっていて、高校のボクシング部でも当初は右で構えていたものの顧問に強制されて左構えにしているので、一概にコンバーテッドと言っていいのか微妙ですけど。一方、ボクシングの本場であるアメリカでは、「左構えは右構えと打ち合いにならないからつまらん」という理由で、左利きの選手を右構えに矯正していたなんて話もあるようです。そうした例では、ジョー・フレイジャーやオスカー・デ・ラ・ホーヤが有名ですね。話がそれました。第1話、振り返りましょう。
■「クズ男に沼る女子」というトレンド
その試合からさかのぼること1年半前、ほこ美ちゃんは花嫁さんとして結婚式場にいました。ごきげんで髪の毛などセットしていると、どうやら新郎が姿を消したらしい。タキシードを脱ぎ捨てて式場を後にする新郎を追いかけ、殴りかかろうとするほこ美ちゃんでしたが、足がもつれてコケてしまいます。その様子を、偶然通りかかった金髪カメラマン・海里くん(玉森裕太)がおもしろがって写真に収めたりしています。
結婚式場で新郎に逃げられるという一世一代のドラマを演じたほこ美ちゃん、それでもがんばって仕事に行ったりしていますが、式場からキャンセル料300万円を請求されて、もう嫌になっちゃう。しかも2人で住んでいたマンションは逃げた新郎に勝手に解約されて実家に戻るしかなくなっちゃったし、実家のママ(斉藤由貴)と出戻り子持ちの妹ちゃん(鳴海唯)は「男にフラれた~」とか言ってびぃびぃ泣いてるし、もう本当に嫌になっちゃう。
しかし、支払いに行った式場で再会した海里くんが「力になれるかもしれない」と言ってくれます。夜、海里くんがバーテンをやっているバーに、逃げた新郎が来ているらしい。ここで海里くんが新郎からきっちり会場費を回収してくれたことで、ほこ美ちゃんと海里くんの距離は一気に縮まることになります。
自分でも「早いな」と思いつつ、もう次の恋の始まりに浮足立つほこ美ちゃん。キスもしたし、手をつないでルンルンで歩いていると、酔っ払いの美人がからんできました。どうやら海里くんと知り合いのようです。
その女性は、おもむろに海里くんにブチュブチューっと何度もキスしてきます。海里くんも、特に拒否する様子はありません。
「海里は誰のものにもならないの~♪」
そう言い残して去っていく美人。海里くんも「回収した300万、貢いでくれると思って」とか言ってます。「よく俺とキスできたね」とか。当然、殴りかかるほこ美ちゃんでしたが、あっさりかわされて、またコケて鼻血です。
もう本当に何もかも嫌になっちゃったほこ美ちゃん、「あのクズを殴ってやりたいんだ」と一念発起してボクシングジムの門を叩くのでした。
■しっかりしてそうで、けっこうダメです
さて、主人公のほこ美ちゃんですが、恋愛至上主義のママや妹ちゃんに比べて、しっかりした人物として描かれています。身なりもちゃんとしてるし、前髪もスパッと切りそろえています。
でも、この人はこの人でけっこうダメな感じです。式場費の300万も泣き寝入りしようとしていたし、イケメンにちょっと優しくされたらもうニンニクを食べることを躊躇したり、ママや妹ちゃんに負けず劣らずのアレな感じです。
そして何より「あのクズを殴ってやりたいんだ」という心の叫びは、「まだあのクズと関わっていたいんだ」という依存心そのものですから、この時点では「クズ男に依存するダメ女」の一丁上がりというわけです。
冒頭のボクシングの試合のシーン、セコンドで声を張り上げる女性がいました。ほこ美ちゃんが入門することになった羽根木ジムの会場の娘でトレーナーのゆいさん(岡崎紗絵)です。ゆいさんは、ほこ美ちゃんがフラフラと見学に来た際、強い拒絶を示していました。今どき珍しい「フィットネスお断り」でプロ選手育成一辺倒のこのジムのトレーナーであるゆいさんを納得させるところまでが、まずは物語の目的になりそうです。
あと、今Netflixで話題になってる『極悪女王』について、古いプヲタ(プロレスオタクね)のみなさまが口々に「ホントの全女と違う!」といちゃもんを付けてますが、ボクヲタはプヲタより陰湿ですからね、ナメたことすると大変ですので、そのへん気を付けてほしいところです。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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