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『ベビわる』シリーズ前半のクライマックス――釜めしを残した伝説の殺し屋の運命

映画監督にとってはセンシティブなパワハラ問題

 先週放映された第5話「指導とハラスメントの境界線は」では、宮原は合宿に集まった若い世代が喜ぶと思って「釜めし弁当」を昼食に頼んだのですが、当日になって配達できないことがプロジェクトマネージャーである夏目に伝えられます。気難しい宮原の気分を害さないよう、夏目は自分たちでこっそり釜めし弁当を準備します。釜めしづくりは、殺しの仕事とはまったく関係ありません。宮原への過剰な忖度です。

 溝があるのは、宮原とちさまひの間だけではありません。夏目に釜飯づくりを強要された銃器コーディネーターの武井(天木じゅん)は、夏目をパワハラで訴え、夏目はパラハラ防止の講習を受けさせられます。殺しのリハーサルをしていたまひろに厳しい演出をつけた脚本・演出家の桑原(田島亮)も、やはりパワハラ認定されました。本人に悪意がなくとも、相手がパワハラ、セクハラと感じたら、速攻で加害者扱いされてしまうのが現代社会です。

 かつて厳しい演出で知られた中島哲也監督は『嫌われ松子の一生』(06年)や『告白』(10年)などを大ヒットさせましたが、最近は新作を発表できずにいます。映画監督たちにとって、パワハラやセクハラはとてもセンシティブな問題となっています。そんな問題を、阪元監督はコメディ化しちゃっているわけですが。

「フード理論」が暗示する悪党の最期

 10月9日(水)放送の第6話では、いよいよ「風林火山」の成否が判明します。ドラマとしてシリーズ前半戦にどんな決着をつけるのか、同時に仕事を終えたちさまひと宮原の関係性がどうなるのかが気になるところです。

 ちさまひは、宮原を前時代の遺物、パワハラからも対象外扱いされている老害としてスパッと見切るのでしょうか。それとも、業界のレジェンドとして慕われる宮原の本当のすごさを理解することになるのでしょうか。

 ちさまひの宮原への対応は、これまでインディーズシーンで活躍してきた阪元監督自身が映画&テレビ業界においてどういうスタンスで今後は仕事をしていくかを示すものにもなると思うんですよ。古い慣例が残る業界とうまく付き合っていくのか。それとも『ザ・レイド』(11年)など海外のアクション映画やコミックが大好きな阪元監督は、古い価値観をアップデートできずにいる国内の映像業界、しいては日本社会に向かって引き金を引くことになるのか。ゆる~い深夜ドラマ『ベビエブ』ですが、第6話は阪元監督の意思表明の回になるように思います。

 毎回のように「飯テロ」シーンが盛り込まれる『ベビエブ』ですが、第5話はちさとたちが手作りする「初夏の釜めし弁当」がとても美味しそうでした。炊き込みご飯の上に乗ったアジの照り焼きに、ヤングコーンや焼きカボチャが彩りを加えています。まひろが釜めし屋から強奪してきた釜めしの容器にぴたりとハマっています。

 こんな美味しそうな釜めしを苦労して用意しながら、全部捨てることになった夏目が不憫でなりません。菓子研究家の福田里香氏が提唱した「フード理論」に従えば、食べ物を粗末にした悪党は残念な末路が待っていることになります。宮原はグルメうんちくを垂れながらも、肝心の釜めしを食べ残しています。伝説の殺し屋がどんな結末を迎えるのか、今夜は注目しましょう。

最終更新:2024/10/09 12:00
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