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『おむすび』第3回 影を落とし始めた震災の原体験と、怪しすぎるイケメン先輩

橋本環奈

 九州経済の中心地である博多天神から電車で30分、自然あふれる糸島ですくすく育った女子高生・結ちゃん(橋本環奈)がギャルになって栄養士になるというNHK連続テレビ小説『おむすび』も第3回。ちなみにタイトルの『おむすび』は、結ちゃんこと米田結の名前である「米を結ぶ」からきているようです。

 まだまだ結ちゃんがギャルになる気配は見えませんが、振り返っていきましょう。

■イケメン先輩が怪しすぎた件

 前回、ひょんなことから書道部の部室を訪れた結ちゃん。同級生の恵美ちゃん(中村守里)から入部を誘われても別に興味は湧きませんでしたが、そこにいた超絶イケメンの風見先輩(松本怜生)の瞳に射抜かれてしまって、さぁ大変。「うちの青春、始まった?」などと舞い上がってしまいました。

 流れで、書を一枚したためることになった結ちゃん。自分の名前「米田結」の3文字を書き上げますが、見事にへったくそです。

 しかし、この結ちゃんの書を見た風見先輩は、こんなことを言いだします。

「米田、自分の中でなんか、抑え込んどることない?」

「自分で無意識に我慢しとることない? その悩み、書道で少しは解消できるかも知れんよ」

「書道の目的は、自分と向き合うこと。俺が教えちゃるよ」

 まっすぐ見つめられた結ちゃん、もう身じろぐことしかできません。

 ところで、「バーナム効果」という言葉があります。誰にでも当てはまるような曖昧で一般的な言説を、まるで自分だけが持っている性質を言い当てられたような気になってしまう心理現象のことで、世の中の「占い」のほとんどはこの「バーナム効果」を利用した錯覚であるともいわれています。

 自分の中で抑え込んでいることは当然誰にでもあるし、無意識に我慢してることなんて、無意識なんだからあると言われればあるもんです。風見先輩がこのバーナム効果を意識的に狙ったかどうかは不明ですが、結ちゃんは見事に自分の心の中を見抜かれたと感じて、ますます風見先輩に惹かれていくことになります。何しろ、帰路、自転車を押しながら「きれいやったなぁ……」とつぶやいてしまうほど、風見先輩の顔面に心を奪われてしまっているので、致し方ありません。

 家の畑の手伝いもあるので書道部への入部はためらう結ちゃんでしたが、「先輩も来るって」と恵美ちゃんに誘われた週末の展覧会には行くことにしました。

 結ちゃんが書道部への入部をためらう理由は、家の手伝いのほかにもうひとつありました。

「いくら楽しくても、なくなっちゃうかもしれんし」

 まだドラマの中ではっきりとは語られていませんが、結ちゃん一家は神戸で震災に遭い、父の実家である糸島に引っ越してきたという過去があります。結ちゃんの脳裏に浮かぶのは、セーラームーンのコスプレなんかして超楽しかった神戸での日々と、あの日見たガレキの山。それでも、母の説得もあって結ちゃんは書道部に参加することにしたのでした。

 週末の展覧会、わざわざ天神まで出向いた結ちゃんですが、そこに現れたのは風見先輩以外の先輩たち。書に興味もないし冴えない書道部の面々といても全然楽しくない結ちゃんは途中で帰ろうとしますが、あのギャル軍団に捕獲され、またまたハギャレン(博多ギャル連合)の総代になれと迫られるのでした。

■9年後であり、8年前である

 前回、今回と、少しずつですが結ちゃん一家が被災した1995年の阪神淡路大震災についての描写が挟まれています。このドラマは、その震災のときに実際、被災地におむすびを届けた女性たちのエピソードに着想を得ているといいます。第1話で、大切な帽子をダメにしてしまった小学生に対して結ちゃんはこんなことを言っていました。

「おいしいもん食べたら、悲しいことちょっとは忘れられるけん」

 震災の原体験と、食べ物。ギャルはさておき、栄養士になるという結ちゃんの将来への萌芽も、小出しにされ始めてきました。

 番組の公式ホームページには「どんなときでも自分らしさを大切にする“ギャル魂”を胸に、主人公・米田結が、激動の平成・令和を思いきり楽しく、時に悩みながらもパワフルに突き進みます!」と書かれています。ここから8年後の2011年、平成23年に発生した東日本大震災も『おむすび』というドラマは通過することになるわけです。結ちゃんは、23歳でそのときを迎えることになります。

 多くの人が傷を抱えることになる震災が起こったとき、ポジティブ一辺倒のギャルマインドが周囲にどんな作用をもたらすのか。そのへんが緻密に描かれたらいいなと思いつつ、追いかけたいと思います。

 あと、風見先輩について前回「きれいなジャイアンならぬ、きれいな武田双雲」と評しましたが、今回の「バーナム効果」の件で、いよいよ単なるロゴデザイナーなのに書道の大家であるかのようなセルフブランディングでのし上がっていった武田双雲氏とイメージがかぶってきましたので、結ちゃんとの恋の行く末にもやや注目です。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

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最終更新:2024/10/02 13:00
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