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【夏ドラマ】『GO HOME』最終話 傲慢不遜と他人への甘えに満ちた凡作、そして若者たちに言いたいこと

大島優子(GettyImagesより)

 第1話からずっと共通しているこのドラマの印象としては、人の死を扱うにはあまりに態度が不遜であること。あと、ミステリーとして作劇がド下手であること。結局、最終回を見終えた今も、その印象は変わっていません。最初から最後まで楽しい場面は一度もなかったし、回を追うごとに主人公のサクラ(小芝風花)という人物に対する不信感と嫌悪感が募るばかりでした。

 そういうわけで『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』(日本テレビ系)、振り返りましょう。

■公安がらみの大仕掛けも空回り

 前回、戸籍偽装という謎を残して亡くなったサクラたちの同僚・堀口さん(戸次重幸)。その死には警視庁公安部長や代議士による不正行為があって、それをサクラやマコト(大島優子)たち相談室のメンバーや科捜研が力を合わせて暴いていくというお話でした。

 いつも通り、サクラとマコトが「どうしても真相を調べる!」と息巻いて、室長の利根川さん(吉田鋼太郎)がたしなめるシーンから解決編がスタート。もう何度も見てきた光景ですし、特に謎解きのおもしろさにはもう期待もありません。

 なんやかんやで、事件は大団円。キーポイントになったのは、堀口さんの幼少期を知る地元の警官と代議士の知り合いのホステスが口止めを破って証言を翻したところだったわけですが、この証言を翻す動機が、まったく具体的じゃないんですね。

 ドラマが言いたいのは、結局2人とも「いい人だった」からというものです。性善説に基づいて証言を翻すという判断が下されている。それは別に悪いことじゃない。

 じゃあ何が悪いかというと、その人の性が善であることと、その善をもってして、人生を賭すようなリスクを背負ってまで善なる行動や判断に至ることの間には、大きな違いがあるということです。

 多くの人はいい人だけど、いろいろ事情があって、よくない判断や行動をすることがある。その人たちの善を呼び起こして実際の判断や行動に反映させるには、大変な苦難が伴う。その苦難と克服を描くことこそがドラマの仕事であるわけなんですが、この『GO HOME』では、どいつもこいつも実に簡単に善を呼び起こされてビャアビャアと泣くんです。全然、苦難を設定できてない。できてないのに、できてるような気になって発表しているということはシンプルに「ド下手」であるということだし、その考えの浅さ、甘さが、人の死を扱うにはあまりにも不遜だと言っている。

 第5話のレビューで「サクラもマコトも、個人的に真剣に悩んでいる。そして、真剣に取り組んでいる。だから、他人は心を開いてくれるに違いないという、根本的な他人に対する甘えがある」と書きました。「実に傲慢な思い上がりだ」と。

 そういう思想がミステリーとしての詰めの甘さとヒューマンドラマとしての説得力のなさの両方に作用していた。そういう作品だったと思います。

 あとね、サクラが毎回、行旅死亡人の欄に明らかになったその故人の名前を書いてニッコリするところ、サクラとマコトの2人がキックボクシングでスッキリするところ、この2つのシーンも大嫌いでした。そりゃこんな仕事してりゃストレスもたまるだろうし、仕事が終われば安堵するものでしょう。でも、その顔は他人に見せるものじゃないよ。遺族にその顔は見せられないでしょう。遺族に見せられない顔を視聴者にも見せるべきじゃないんだ。なぜなら、視聴者に対して「遺族に共感して泣け」と言っているドラマなんだから。なんでそういうところ、わからないんだろう。

■ここからは言わなくていい話

 ここからは、このドラマを見ていた人にも、このレビューを読んでいる人にも、ほとんど関係のない話だと思います。でも書きたいので書きます。

 あのね、これからドラマや映画の世界を目指そうとする若者たちに対してです。

 この程度の能力と、この程度のマインドしか持っていない脚本家がゴールデンでオリジナルを任されて、来年には大河も書くことになっていて、すごく理不尽を感じていると思うんです。業界は「日曜劇場」を何本も書いてきたってWikipedia上の実績だけで仕事を回します。それがこの人ではなく、福澤組全体のディレクションの賜物だったとしても、そんなことは使う側には関係ないし、使いやすいのはあくまでこっちです。基本的には、エンタメの世界はそういうふうにできています。

 だけど、折れないでほしい。信じて、戦い続けてほしい。こういうハリボテの脚本を、いつか駆逐してほしい。見ている人は見ているから。

 どらまっ子のささやかな願いです。終わり。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

最終更新:2024/09/29 14:00
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