『ベビわる』ぬいぐるみに心を開くZ世代とぶつかったおじさんの哀しみ
#ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!
ベビーフェイスな女の子二人組が、驚異の殺人スキルを披露するガールズアクションといえば、髙石あかり&伊澤彩織が主演した実写映画『ベイビーわるきゅーれ』(2021年)です。劇場版第3弾となる『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』は、ニューヨーク・アジアン映画祭で日本初のアクション賞を受賞するなど、9月27日(金)からの全国公開を控え、盛り上がっています。連続ドラマ版『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』(毎週水曜の深夜1時~、テレビ東京系)も好評オンエア中です。
9月18日に放映された『ベビエブ』第3話「この子をお迎えします」は、「ぬい活」がテーマでした。ぬい活をざっと説明すると、自分のお気に入りのぬいぐるみをお出かけ先に同行させ、美しい景観やカフェのスイーツなどと一緒に写真を撮り、SNSなどにアップする活動のことです。
陽キャだけど束縛されることを嫌う杉本ちさと(髙石あかり)、コミュ障気味の深川まひろ(伊澤彩織)のコンビは、いつものように殺しの仕事を終えたところです。死体の片付けでいつも忙しい清掃係の宮内茉奈(中井友望)ですが、この日は別件の仕事がキャンセルとなり、女の子3人でカフェへ行くことに。アクション満載の劇場版と違って、ちさと&まひろたちの日常生活がゆるゆると描かれるところが、連ドラ『ベビエブ』の面白さでしょう。
おしゃれなカフェで、茉奈が取り出したのは白いクマのぬいぐるみ「くまきち」。くまきちを被写体にした「ぬい活」に、茉奈は最近ハマっているそうです。仕事とトレーニングにしか興味がなかったまひろは、多彩な趣味を持つ茉奈のことを羨ましく感じるのでした。
そんなまひろが谷中銀座をぶらぶらして運命的に出会ったのが、ウシがイカの被り物をした風変わりなぬいぐるみです。すっかりこのぬいぐるみに魅了されたまひろは、「この子をお迎えします」と同居人であるちさとに宣言。かくして、ちさと&まひろは、このぬいぐるみを「カルビイカ」と名付け、共同生活を送るのでした。
人づきあいが苦手なまひろにとって、カルビイカは大切なコミュニケーション相手となっていきます。カルビイカを連れて外出することが増えたまひろの様子を、ちさとは温かく見守ります。
ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい?
映画の世界では、この「ぬい活」にはけっこうな歴史があります。その道の第一人者とされていたのは、実相寺昭雄監督です。特撮ドラマ『ウルトラマン』『ウルトラセブン』(TBS系)や映画『帝都物語』(88年)などで知られる実相寺監督は、「ちな坊」と名付けたアライグマのぬいぐるみを家族の一員(長男)として扱っていました。実相寺監督の年賀状のほか、『ウルトラQ ザ・ムービー 星の伝説』(90年)などにも登場しています。事情を知らない助監督がちな坊をぬいぐるみ扱いすると、現場は大変なことになったそうです。
ぬいぐるみではありませんが、ライアン・ゴズリング主演映画『ラースと、その彼女』(07年)は、心優しく内気な主人公がアダルトサイトで購入したラブドールを恋人として家族に紹介し、一緒に暮らす物語でした。また、金子修介監督の娘、金子由里奈監督が撮った『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』(22年)も、静かな話題を集めました。繊細な心の持ち主は、自分の悩みを人に打ち明けると、その人の負担にもなってしまうことを気にして、もっぱらぬいぐるみを相手に会話するそうです。「ぬいサー(ぬいぐるみサークル)」に集まる学生たちを描いたなかなかの衝撃作です。
バイオレンスシーンを売りにした『ベビわる』ですが、現代社会を生きるZ世代の若者たちのナイーヴさ、生きづらさを感じさせる社会派ドラマな一面も見せた第3話でした。
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