トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > カルチャー > 音楽  > f5ve「Underground」の先進性

デコトラにパラパラに頭文字D !? 日本カルチャーと世界的トレンドをLDH流に昇華したf5ve「Underground」の先進性

「ただ懐かしい」だけじゃない音楽アプローチと、日本語歌詞の可能性

 f5ve「Underground」は177 BPM(Beats Per Minute=テンポの速さを表す)という超ハイスピードなダンストラックだが、音楽的にもやはり「Y2K」――90年代後半に流行した「ハッピー・ハードコア」を彷彿とさせる。

 ハッピー・ハードコアは近年リバイバルが指摘されるレイヴ・ミュージックの派生ジャンルのひとつで、160 BPM以上の高速ビートと、「レイヴスタブ」と呼ばれる象徴的なシンセの音色などが特徴。ユーロビートやトランスとも隣り合う多幸感あるハイスピードなダンスサウンドを、2020年前後からメインストリームで存在感を放つなど今のトレンドのひとつ=「ハイパーポップ」のフィルターを通して現代的に再解釈したような曲が「Underground」なのだ(ミュージックビデオの地下のクラブシーンはレイヴ・パーティを意識したものだろう)。

 このハッピー・ハードコアはハイパーポップのルーツのひとつに数えられる場合もあり、そのためかやはり2020年前後から再び注目を集めている様子だが、要するに、「Underground」は“ただ懐かしいパラパラ系のサウンドを引っ張ってきた”といったアプローチではなく、“2024年にアツい”ダンスミュージックを目指したうえで生まれたものだろうということだ。ちなみに、9月10日にリリースされたリミックス集の中には、原曲よりさらにハッピー・ハードコアやユーロビートに寄った(揺り戻した)リミックスもある。

 また、とくにサビにおける機械的な歌い方やメロディなどは、ボーカロイド文化からの影響も感じられる。かつては中田ヤスタカのユニット=CAPSULEにハマるなどJ-POPにも造詣のあるブラッドポップだけに、ボカロは当然把握しているのではないだろうか。実際に初音ミクに「Underground」を歌わせるカバー動画なども登場しているが、違和感のない仕上がりだ。

千葉雄喜にNewJeans…広がる日本語歌詞の可能性

 ボカロから影響を受けているのだとしたら当然ではあるが、「Lettuce」では英語詞中心だったのが、「Underground」ではほぼ日本語詞となっていることも重要なポイントだ。

 いま、日本語詞でグローバルヒットを狙える可能性が注目されている。米人気ラッパーのメーガン・ザ・スタリオンは今年6月に発売した最新作に収録した「Mamushi」にKOHH改め千葉雄喜をゲストに迎えたが、日本人プロデューサーのKoshyが単独で手がけた同曲は日本語をフィーチャー。千葉のパートだけでなく、フック部分でメーガンが「お金稼ぐ 私はスター♪」と歌う同曲は全米チャートトップ40にランクインし、ニュージーランド、マレーシアなどではトップ10入りするなどグローバルヒットとなっているのだ。

 近年はアニメ人気の恩恵を受ける形で米津玄師「KICK BACK」やYOASOBI「アイドル」などのタイアップ曲が海外でヒットする例があるが、「Mamushi」はそれとは別ルートでの“日本語ヒット”の可能性を示唆する成功例と言える。なにせ、先日ニューヨークで開催された音楽の祭典「2024 MTV Video Music Awards」でもメーガンは千葉雄喜を招いて「Mamushi」を披露。日本人ラッパーがアメリカの音楽業界が注目する一大ステージで(メーガンとともに)日本語でラップするという事態にまで及んでいるのだから。

 ここ最近ではNewJeansが日本デビュー曲となった「Supernatural」で英語、韓国語とともに日本語をミックスしたことも話題になった。世界的な音楽業界動向としてラテン市場に続いてアジア市場のさらなる拡大が注目されるなか、日本語楽曲のポテンシャルはますます高まるとみられる。「Underground」は日本カルチャーに根差した世界観ということもあって日本語詞に振り切ったのだと思われるが、こうしたトレンドと共振しているとも指摘できるだろう。

1234
ページ上部へ戻る

配給映画