【夏ドラマ】『ギークス』最終話 作品を支えた俳優・松岡茉優の「地力」とミステリーとしての着地点
#ギークス
連ドラでミステリーをやる場合、やっぱり最終回に起こる事件というのは作中でもっとも魅力的で、総決算な感じを求めたくなるものです。作中に張り巡らされた伏線が一気に回収されていくような爽快感だったり、登場人物たちの心境の変化に大きく寄与するようなカタルシスだったり、そういうものじゃないですか、最終回って。
というわけで、『ギークス~警察署の変人たち~』(フジテレビ系)も最終回。振り返りましょう。
■犯人すげーバカじゃん
鑑識官の西条(松岡茉優)らが勤める小鳥遊署の管内で、奇妙な空き巣事件が続発。盗まれたのは歯ブラシやコップといった小物ばかりで、金目のものは盗まれていません。そして、現場にはオランウータンの足跡が残っている。
同じころ、市民ホールや病院に爆弾が仕掛けられ、爆発するという事件も発生していました。爆破の前には必ず、ネット上の掲示板に爆破予告が書き込まれています。
一見、無関係に見える2つの事件が実は裏でつながっていた、というのは『ギークス』で何度か採用されているパターンです。ミステリー的にいえば、この2つの事件のつながりがこれまでになくダイナミックだったり、過去回のどこかのエピソードとつながっていたり、あるいは「いつものパターンか」と思わせておいて大きく裏切るトリックが用意されていたり、いろいろな期待が膨らむ導入です。
で、結論からいうと、もう超ガッカリでした。犯人が現場にオランウータンの足跡をわざわざ偽造して残したことや、爆弾に変なマークを入れていたことが決め手となって事件が解決するわけですが、これ2つとも犯人が意図的にやってることなんです。オランウータンの足跡を残さなければ西条たちは犯人にたどり着いてないし、変なマークを入れてなければ犯人と爆弾のつながりが見いだせない。要するに、すごくバカなやつを最終回の犯人に持ってきてしまっている。バカなやつが起こした事件は、魅力的なわけないんです。
しかもそのバカが、ずっと「天才」だとか「才能」だとか、そういう話をしている。なんか「才能がすごすぎるあぶねーサイコ野郎」みたいなキャラを打ち出してきてるわけですが、前述の通りやってることがバカなので、こいつに全然説得力がない。
というわけで、ミステリーとして見ると過去回を含めて最低の出来だったと思います。
じゃあ、定時で帰りたい3人の女性の「お仕事ドラマ」としてはどうかというと、こっちもあんまりちゃんと終わってる感じがしないんですよね。
いちおう西条はイケメン隣人といい感じになってたり、吉良さん(田中みな実)は元同僚のイケメン市長といい感じになってたり、基山(滝沢カレン)は一人暮らしを始めたりと「変化のときを迎えました」みたいな結末にはなってるんですが、そもそもこのドラマのタイトルである「ギーク」「変人たち」という言葉と3人のキャラクターが全然合ってないので、このドラマが「どんな人たちを、どうしたかったのか」がよくわからない。こういう働き方をする女性たちの「何を変えたくて、何を変えたくなかったのか」、そういうところが結局最後まで見えてこなかった。
なんかフワっと終わりました。フワっと。
■松岡茉優はいいですよね
松岡茉優はいいですよね。このドラマは松岡茉優という俳優さんの地力だけで、なんとか立っていたと思います。容疑者にされたり、監禁されたり、イケメンに胸キュンさせられたりと、あっちこっちに雑に振り回されながら、自分のプランを通して見せたと思います。田中みな実と滝沢カレンも、タレントとしてのパブリックイメージを残しつつ役に入っていて、居酒屋のシーンはずっと楽しいんです。
たぶん、コンセプトとしては間違ってなかったと思うんですよ。特殊能力を持っている3人の女性警察官が、週末の居酒屋でお酒を飲みながら事件を推理して解決する。結局、ほとんどそういうプロセスで解決を見た事件はなかったけど、コンセプトと3人のキャラクター造形はおもしろそうなものではあった。作品としての原風景は、全然悪くない。
第5話のレビューで「急に二次創作が始まったかと思った」と書いてますが、このあたりから、原風景を離れ始めるんです。しかもまだ、その原風景すら伝わり切っていないのに、見る側を置き去りにして勝手に展開し始めている。
それでも、大きな事件を起こしておいて最終回で回収するのかなと思って期待していたら、ラス前でだいたい全部カタが付いちゃって、最終回はなんだかよくわからん低クオリティ事件しか起こらなかった。
総じて、単話で見たらおもしろい回もけっこうあったけど、連ドラとして全然成立していなかったという印象です。すごく失敗している作品を見たという感じ。能力ある人を集めるだけじゃダメなんですよね。
「私たちは、それぞれ価値観が違います。それでも、職務を全うするためにお互いを認め合い、共存をしています。それは、決して簡単なことではない。でもそれでしか、見つけられないものがあるんです」
松岡茉優が最後に言っていたセリフです。これ、脚本家先生の「本当はそうしたかったのに」という心の叫びに聞こえちゃったな。おつかれさまでした。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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