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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 映画  > 『トイ・ストーリー3』完璧な三部作だったが…
『金ロー』を独自視点でチェック!【8】

『トイ・ストーリー3』大人も楽しめる感動作、これで終われば完璧な三部作だったが…

「人類の負の歴史」を体験するウッディたち

 ところが、サニーサイドのおもちゃの世界は、ピンク色の熊のぬいぐるみ・ロッツォが独裁支配する、恐ろしい管理社会だったのです。新入りのバズやジェシーたちは、おもちゃの扱い方をまだ知らない乱暴な子どもたちのクラスを請け負わされ、ボロボロになっていきます。理想郷とはほど遠い、生き地獄のような場所でした。

 これまではアンディの自宅で、平和に暮らしてきたおもちゃたちですが、外の世界を知り、さまざまな体験をします。ロッツォが支配するサニーサイドは、北朝鮮のような独裁社会を思わせます。サニーサイドから脱出するウッディたちは、ゴミ焼却所で地獄の業火で焼かれる恐怖にも遭遇します。このシーンは、第二次世界大戦中の強制収容所を思わせるものがあります。

 ウッディは西部開拓期に活躍したカウボーイをモデルにした正義感溢れる人形ですが、西部開拓期は米国人が誇るフロンティア精神を象徴した時代である一方、ネイティブアメリカンを迫害し、彼らの土地を奪い取っていった暴力に満ちた時代でもありました。そんな歴史は知らないウッディですが、ごく数日の間に、独裁政治や強制収容所といった近現代史における「人類の負の歴史」に次々と直面することになります。人間を模して作られた人形やぬいぐるみたちは、人間と同じように受難の歴史も背負うことになるのです。

 見た目は変わらないウッディですが、以前とは異なる存在となっていきます。単なるおもちゃではなく、故郷を離れるアンディを厳粛に送り出す父性的な一面を備えたキャラクターとなっていきます。物語の最後は、子別れ・親別れのシーンと言っていいでしょう。おもちゃは子どもたちのイマジネーションを育む、大切な存在であることを改めて感じさせます。

いつまでも童心を持ち続けたピクサー創業者たち

 ピクサーを創設したのは、Macやiphoneを開発したスティーヴ・ジョブズです。自身が設立したアップル社を追い出されたジョブズは、やはりディズニー社を辞めさせられたアニメーターのジョン・ラセターらの優れた才能を見込み、世界初のフルCGアニメ『トイ・ストーリー』を完成させ、大ヒットさせたわけです。

 ジョン・ラセターが製作総指揮を務めた『トイ・ストーリー3』の大ヒットを見届け、スティーヴ・ジョブズは、2011年にすい臓がんで亡くなっています。56歳でした。ラセターやジョブズらの老いることのない童心や飽くなき探求心が、『トイ・ストーリー』という大人気シリーズを生み出したのです。

 2006年にディズニー社に買収され、ピクサーの会社規模はぐんと大きくなりました。しかし、ディズニーの筆頭株主となっていたジョブズは亡くなり、ジョン・ラセターは「Me Too運動」の煽りを受けて、ディズニーからもピクサーからも去ることになりました。

微妙な評価だった『トイ・ストーリー4』

 三部作完結編を公開時には謳っていた『トイ・ストーリー3』でしたが、ウッディたちがさらなる冒険に繰り出す『トイ・ストーリー4』(19年)が公開されています。興行的には成功した『トイ・ストーリー4』ですが、せっかく『トイ・ストーリー3』が感動的なフィナーレだったのに……という不満の声も上がっています。ウッディらがおもちゃの自立を求めて旅立つという物語は、当初のシリーズとは別物になった感がするのも確かです。

 9月27日(金)の『金ロー』は、スピンオフ作品『バズ・ライトイヤー』(22年)が放映され、2026年には『トイ・ストーリー5』が公開されることが決まっています。人気シリーズの宿命といえばそれまでですが、ウッディやバズたちはお客が呼べる間は、ディズニーから搾取され続ける運命にあるようです。

映画ゾンビ・バブ

映画ゾンビ・バブ(映画ウォッチャー)。映画館やレンタルビデオ店の処分DVDコーナーを徘徊する映画依存症のアンデッド。

えいがぞんび・ばぶ

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最終更新:2024/09/20 12:00
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