『ギークス』第10話 温度感の乱高下に耳がキーンとなる ハードボイルドの無駄遣い
#ギークス
見たものを瞬間的に記憶できる能力を持っている鑑識係・西条(松岡茉優)、心理マスターの産業医・吉良さん(田中みな実)、地理オタクの交通課・基山(滝沢カレン)の3人が、週末になると定時に上がって居酒屋で雑談しながら事件を解決しちゃうという、なかなか楽しい設定で始まったドラマ『ギークス~警察署の変人たち~』(日本テレビ系)も最終回前の第10話。
もうすっかり居酒屋シーンも少なくなってきましたし、ちょっと何を見せられているのかよくわかりませんが、とりあえず振り返りましょう。
■岡留さん事件はあっさり解決
クール中盤に仕掛けた伏線を一気に回収する方向に走り出した前回。人のよさそうな交番勤務の岡留さん(小林隆)が狂言誘拐による拳銃の略取、若い2人組ハッカーを使ったハッキングによる警察データベースへの侵入といった計画的かつ先進的な計画でもって死んだ娘の復讐を果たそうというハードボイルドな展開となっていましたが、今回、あっさり解決しました。
娘の仇である若者に拳銃を送り付けて強盗事件を誘発し、かつて裁かれなかった犯人を法に裁かせようとした岡留さん。自らも捕まってしまいましたが、後悔はないようです。ここで描かれたのは、父親の娘に対する愛というものでした。
岡留さんは、過去に鑑識官を務めていて過労死した西条の父親と旧知の仲であり、その娘である西条に「君はお父さんのことを何もわかってない」と言い残して留置所に姿を消したのでした。
岡留さんの件でモヤモヤしていた一同は気晴らしにみんなでボウリングをしに行きますが、西条は気が乗らないので家でゴロゴロ。参加していたメンバーも、西条の部下である杉田(泉澤祐希)は急遽100人分の指紋を調べなければならなくなって離脱、吉良さんは離婚した夫の家から娘が家出したとか、基山も父親がどうこうとかで家に帰ってしまい、刑事課の芹沢(中村蒼)と本庁のイケメン・安達さん(白洲迅)の2人だけが残されました。
そのころ、西条は図書館をウロウロ。そこで吉良さんの娘と偶然出会い、いろいろあって、図書館の一般客の父娘、吉良さんと娘、基山と父親という、それぞれの「父娘の愛の形」というやつを見せつけられるのでした。
■耳がキーンてなる
前回、このドラマは発生する事態のシリアスさや残酷さ、ほっこり加減が回によって行ったり来たりするので非常に見づらいという話をしましたが、今回も復讐鬼・岡留さんのハードボイルド復讐譚で始まったかと思いきや、ほっこりボウリングからのほっこり父娘愛エピソードと、物事の温度感の上下が激しすぎて、思わず「耳キーンなるわ!」と言いたくなる感じ。
描かれる父娘愛のエピソードはどれもまっとうなものですし、それによって心が動かされる西条の様子も理解できなくはないけれど、ドラマが何をやりたかったのかが回を重ねるにつれてわからなくなっていくんです。
いわゆるライトなミステリーとして始まったドラマが、最終回を前にミステリーであることを放棄している。別に、ドラマがジャンルに囚われるべきだとは思わないけれど、3話くらいまでを見て「こういうところをおもしろがればいいんだろうな」と思って期待したものを、どんどん裏切っていく。複数の脚本家それぞれが、それぞれなりに物語をおもしろく成立させようとしているのはわかるんですが、彼らの間でコンセプトというか、作品としての軸が共有されていない感じがビンビンに伝わってくる。
最初のころの感じ、好きだったんですよ。まあまあ凝ったミステリーをきれいな女の人3人がワチャワチャ言いながら解決していくなんて、爽快じゃないですか。
なんというか、デビューのころに好きだったバンドが、大人がプロデュースに入ったことでどんどん変わっていくような、そんな感じ。たった3カ月で、見ているこっちが回顧主義の痛ファンにされてしまったような、そんなモヤモヤを抱えつつ最終回を待ちたいと思います。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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