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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 『今日から俺は!!』と福田雄一監督は面白いのか問題
『金ロー』を独自視点でチェック!【7】

ヤンキー漫画『今日から俺は!!』をコスプレ劇に…「福田雄一監督は面白いのか問題」を考える

新しいタイプの拷問だった山崎賢人主演映画

 そこで今回の主題である「福田雄一監督が撮る映画は本当に面白いのか?」問題についてです。鈴木亮平が主演した『HK 変態仮面』(2013年)は、マジで面白かったと思います。全裸に近い姿で顔にパンティーを被って熱演する鈴木亮平、そしてさらにその上を行く変態ぶりを見せるニセ変態仮面を演じた安田顕には、熱い俳優魂を感じましたよ。こんなにもくだらない内容の作品を、真剣に映画化した福田監督にもリスペクトを覚えたものです。

 しかし、その後は失望しかありません。鈴木亮平や安田顕に全力を振り絞らせた『変態仮面』のような熱気は、福田監督が撮る劇場映画からはあっさりと消えてしまいました。小栗旬、菅田将暉、橋本環奈らが共演した『銀魂』は興収38.4億円を記録し、福田監督は売れっ子となっていくものの、キャストの豪華さが話題になるだけです。山崎賢人が主演した『斉木楠雄のψ難』(17年)は、寒いギャグと橋本環奈の顔芸が延々と続き、あまりのつまらなさに気絶したくなりました。新しいタイプの拷問と呼んでもいいんじゃないでしょうか。

 福田監督が撮る映画は、正しくは映画ではありません。かつて毎年元日の夜に放映されていた『新春かくし芸大会』(フジテレビ系)の世界です。人気芸能人が集まって、その当時話題になっていた映画などをパロディとして演じていたヤツです。どこまでも軽いノリとゆるいギャグで構成され、メッセージ性はまったくなし。お屠蘇を飲んでほろ酔い気分の視聴者たちには、そんなライトな世界が好まれたのです。

 マンネリ化を指摘され、フジテレビは46年間続いた『新春かくし芸大会』を2010年に打ち切ってしまいましたが、そうした世界を喜ぶ層は確実にいます。『新春かくし芸大会』の終了と入れ替わるようにして、福田監督はブレイクしています。空いた席をうまく見つけたわけです。

日本で「ラジー賞」が開催されない理由

 イケメン俳優らにコント仕立てのお笑いをやらせるという手法に加え、福田監督作品が人気を集めている要因は、配役の豪華さでしょう。普通はプロデューサーがキャスティングするのに対し、福田監督は自分から俳優たちに声を掛けて回るそうです。しかも、キャスティングのアイデアの多くは、福田監督の奥さんによるもの。ちなみに奥さんは専業主婦。キャスティングセンスに優れた奥さんに、福田監督は頭が上がらないそうです。

 米国ではその年の最低映画を決める「ゴールデンラズベリー賞」(通称、ラジー賞)がアカデミー賞授賞式前日に発表されますが、日本では長らくこのような趣旨の映画賞は存在しないままです。それは多分、福田監督作品が毎年賞を独占してしまうので、賞レースとして盛り上がらないからではないでしょうか。ある意味、福田監督の存在はすごいと言えるでしょう。日本版ラジー賞ができる前から、殿堂入りが確定しているのですから。

 12月には福田監督の新作、松山ケンイチ&染谷将太がW主演する劇場映画『聖おにいさん THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団』が東宝系で全国公開されることが決まっています。当分は福田監督が日本映画界を蹂躙し続ける日々が続きそうです。

 もちろん、福田監督の映画が好きだという人は、それはそれでかまいません。でも、うっかり福田作品を観てしまったとお嘆きの方には、田中登監督が撮った実録犯罪映画『丑三つの村』(83年)や伊藤俊也監督が「村ホラー」に原発問題を絡めた『犬神の悪霊』(77年)といった日本社会の暗部を暴き出した邦画を観ることをお勧めします。このくらい、こってりした映画を観ないと、中和されないように思います。

映画ゾンビ・バブ

映画ゾンビ・バブ(映画ウォッチャー)。映画館やレンタルビデオ店の処分DVDコーナーを徘徊する映画依存症のアンデッド。

えいがぞんび・ばぶ

最終更新:2024/09/13 09:00
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