【プロ野球】阪神・佐藤輝が「歴史的珍プレー」球史に残る“ヘディング”ヒーローたち
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8日、東京・神宮球場で行われたヤクルト-阪神で歴史的な珍プレーが産まれた。阪神が2点ビハインドで迎えた3回。ヤクルト・長岡の平凡なサードフライを阪神の三塁手・佐藤輝明が頭に当てて落球。リーグワーストを更新する今シーズン23個目のエラーで出塁を許してしまった。
フライが上がった瞬間、佐藤輝は手を上げて周囲の野手を制すると数歩後退、やすやすと落下点に入ったように見えたが、捕球の瞬間にボールから目を切るような仕草を見せ、そのままヘディング。一瞬ボールを見失い、遊撃手の木浪がグラウンドを転々とするボールを拾いあげると、憮然とした表情で守備位置に戻っていった。
ヘディング落球といえば、プロ野球ファンなら真っ先に思い出すのが、宇野勝の名前だろう。1981年シーズンに後楽園球場で行われた巨人-中日戦の7回、巨人の山本功児がショート後方に打ち上げたフライを背走で追っていた宇野だったが、ボールはグラブをかすりもせずに宇野の頭部を直撃。ポーンと跳ね上がってレフトフェンス際まで転がっていく様子は、43年たった現在でも語り草になっている。二塁走者だった柳田がホームに滑り込み、カバーに入っていた投手・星野仙一がグラブを地面に叩きつけるところまで、プロ野球の「珍プレー」番組で何度も放送された球史に残る名シーンとなっている。宇野のこのプレーがきっかけで、フジテレビの『プロ野球珍プレー・好プレー大賞』という番組が生まれたほどだ。
宇野のこのプレーがあまりにも有名だが、プロ野球の歴史の中では宇野以外にも印象的なヘディング劇がいくつもある。
「ミスター赤ヘル」の称号で知られる広島・山本浩二が「宇野ヘディング事件」の4カ月前、同じ後楽園球場でヘディング事件を起こしている。センター後方に上がったフライを追った中堅手の山本はフェンス際で落下点に入るも、ボールは直接山本の頭に落下。実は山本こそが「元祖ヘディング男」だった。
同様に忘れられているのが、阪神・長崎慶一と巨人・駒田徳広のヘディングだろう。当時こそ騒がれたものの、やはり数年で話題に上らなくなっている。チャーミングな口ひげで「マリオ」の愛称で知られた大洋・カルロス・ポンセもまたヘディング経験者のひとりだ。
では、なぜ宇野のヘディングだけがここまで人々の記憶に残っているのか。
まずは平凡な内野フライであったことが大きいだろう。山本や長崎のヘディングは外野後方への大きな当たりであり、難しい打球だった。実際、長崎はジャンピングキャッチを試みてヘディングに至っており、凡ミスというよりチャレンジの結果という意味合いが強い。その意味で、宇野のショートフライは、安心感からのギャップが大きかったといえそうだ。
加えて、宇野のヘディングは「跳ね方」が素晴らしかった。頭部を直撃したボールはポーンと大きく跳ね、外野の奥深くまで転がっていった。そしてそのヘディングが、そのまま失点につながっている。そのヘディング後のなすすべのなさ、身の置き場のなさも含め、コミカルに見える要素が幾重にも重なっていたということだ。
そして何より、プロ野球そのものがテレビの花形だった時代の話である。宇野はヘディング事件の後、本塁打王1回、ベストナイン3回を獲得する名選手となった。その明るいキャラクターと豪快な三振は、お茶の間に広く浸透していた。
願わくば、今回の佐藤輝のヘディングがプロ野球人気復活の第一歩となってほしいところだ。
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