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NPBが「プロ野球選手のプレー動画のSNS投稿」を禁止、球団に求められるのはより積極的なSNS活用か

NPBが「プロ野球選手のプレー動画のSNS投稿」を禁止、球団に求められるのはより積極的なSNS活用かの画像1
(写真/Getty Imagesより)

 日本野球機構(NPB)は9月2日、プロ野球観戦時における新しい「写真・動画等の撮影及び配信・送信規程」を策定した。円滑な試合進行と、観客の平穏な試合観戦の調和を図るのが目的で、来季(2025年2月1日)から、公式戦、オープン戦、1軍2軍を問わず、すべてのプロ野球の試合において適用される。

 試合中の写真や動画の撮影については、「人格権」「平穏観戦権」を侵害しない範囲であれば制限されない。しかし、選手やコーチスタッフ、チアリーダー、販売員、係員などに対し、体の一部を拡大もしくは強調する撮影、身元がわかるIDなどを撮影する行為は禁止される。

 撮影した写真や動画のSNSなどでの配信・送信については、「ボールインプレイ中のプレーヤーを撮影した写真・動画」については禁止。ボールインプレイ中のプレーヤー以外を撮影したものであれば、140秒以内の動画については、試合終了後に配信・送信可能となる。“ボールインプレイ中のプレーヤー以外”とは、ベンチ内の様子やボールデッド中のプレーヤー、マスコットなどを想定しているという。

 つまり、周囲に迷惑がかからないような形で試合中にプレーを撮影するのはOKだが、SNSやYouTubeでプレー動画を配信するのは禁止、ということだ。また、試合中の生配信については、動画はもちろん、試合データ(投手の1球ごとの投球のコース・球種・球速に関する情報及び打者の1球ごとの結果に関する情報、打席ごとの打撃結果に関する情報、得点に関する情報など)をリアルタイムで配信するのも禁止となる。

「今回のようなルールが策定された背景には、2つの要素があると言われています。ひとつは、チアリーダーやスタンドの販売員を性的な目的で撮影し、ネットにアップする行為を防ぐため。もうひとつは、収益目的で観客席で撮影しながら生配信する行為を禁止するためです」(スポーツライター)

 スポーツの試合会場における性的な盗撮行為は、以前より大きな問題になっている。女性アスリートがその被害者になるケースが多いが、プロ野球の場合は、チアリーダーや販売員が被害者となっている。

「盗撮行為の撲滅はスポーツ界全体の課題であり、NPBもまたしっかりと取り組まなくてはならないことです。当然のルールと言えるでしょう」(同)

 一方、プレー中の動画のSNS投稿禁止については、一部から嘆きの声も聞こえてくる。

「試合を撮影して収益目的で生配信したり、観客席から撮影した動画を個人のYouTubeにアップしたりといった行為は、主催者の権利を侵害するものであり、禁止されて当然です。これについてはすでに球場や球団が禁止しているケースも多く、それをNPBでしっかりと明文化したと言えるでしょう。ただ、収益目的とは言い切れない好プレーを撮影した短い動画なども禁止の対象となるので、残念に思う野球ファンもいるでしょう。通常の中継では見られないアングルからの好プレー映像を楽しみにしているファンも多かったと思います。それらが完全にNGになることで、プロ野球の楽しみ方が狭まってしまうと感じるファンもいるわけです」(同)

 禁止行為のチェックは、各球団や各球場が行い、違反者に対しては試合観戦契約約款に基づく処分を行うことがあるという。

「収益目的の配信・投稿とそうではない投稿を明確に線引きするのは難しい。かといって野放しにもできず、いったん“試合中の映像の配信・送信はNG”とまとめで禁止するしかなかったのだと思います。また、各球団・各球場側がネット上に投稿されている映像をすべてチェックするのが難しいという現実もあります。そう考えると、収益目的ではないSNSへの短い動画の投稿などは事実上の黙認状態となり、明らかに収益目的である生配信や長時間の試合動画投稿などを取り締まっていく形になるのかもしれません」(同)

 とはいえ、選手のプレー写真・動画の投稿が明確に禁止されたということで、今後は“好プレーのショート動画”などは確実に減っていくだろう。それらを楽しみにしていたファンを満足させるために、球団側の施策も必要となってくるかもしれない。

「現在でも各球団が公式SNSや公式YouTubeで、いろいろな写真や動画を投稿していますが、それらをもっと充実させていくことになりそうです。たとえば、スタンドに球団の公式カメラマンを配置して、好プレーを撮影し、リアルタイムで球団の公式SNSに投稿するなど、テレビ中継などでは観られない映像を積極的に発信していくサービスが重要になってくると思います」(同)

 音楽ライブなどの現場では、客席から撮影した写真や動画をSNSなどに配信する行為を許可し、ネット上で拡散させることをPRの一環としているケースも多い。しかし、好ましくない瞬間の写真やMCでの過激な発言が拡散されて、ネガティブキャンペーンになりかねないのも事実だ。だからこそ、観客に委ねるのではなく、主催者側から“公式動画”をしっかりと発信していくほうがより確実なのだ。

 好プレー動画とSNSはとても相性が良く、それを宣伝に使わない手はない。NPBとしては、より主体的なSNSやYouTubeの活用が必要になってくるだろう。

手山足実(ジャーナリスト)

出版業界歴20年超のベテランジャーナリスト。新聞、週刊誌、カルチャー誌、ギャンブル誌、ファンクラブ会報、企業パンフレット、オウンドメディア、広告など、あらゆる媒体に執筆。趣味はペットの動画を見ること、有名人の出没スポットパトロール。

てやまあしみ

最終更新:2024/09/07 09:00
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