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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『ギークス』「2本のライン」がグラグラ

【夏ドラマ】『ギークス』第9話 リアリティとドラマチック「2本のライン」がグラグラすぎる

松岡茉優(写真/Getty Imagesより)

 さて今期もどらまっ子AKIちゃんは週7本のドラマを追いかけているわけですが、月曜『海のはじまり』(フジテレビ系)の生方美久さん、火曜は『南くんが恋人!?』(テレビ朝日系)の岡田惠和さん、水曜『新宿野戦病院』(フジテレビ系)のクドカン、金曜は『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)の我人祥太さん、土曜『GO HOME』(日本テレビ系)は佐藤友治さんが入りつつ八津弘幸さんが全話にクレジットされていますし、日曜の『降り積もれ孤独な死よ』(日本テレビ系)も橋本夏さんが単独で脚本を担当しています。

 私が見ている中では、この『ギークス~警察署の変人たち~』(フジテレビ系)だけなんですよね。回によって持ち回りで脚本を作っている作品が。

 それがねえ、すごく悪い方向に出ている気がします。回によって、謎解きやミステリーとしての仕掛けが前に出てきたり、ヒロイン・西条(松岡茉優)とイケメン隣人・安達(白洲迅)との仄かな恋愛模様が前に出てきたり、見る側としての見方が定まらないんです。全体としてのディレクションが効いてないというか、打ち合わせが足りないというか、とにかく1本スジが通ってる感じがしない。

 特に今期、ほかのドラマが良くも悪くも作品のテイストというものが定まっている作品ばかりなので、すごく『ギークス』が悪目立ちしてしまっている。それは、こっちの都合でもあるのだけれど。

 という感じで第9話、振り返ります。

■クール全体の景色が見えてきて

 今回は、2つの事件を同時に走らせています。

 ひとつは、小鳥遊署内でロケをしている撮影隊のスタッフの1人の私服が血まみれの状態で見つかり、被害者とみられる人物が姿を消したという事件。

 もうひとつは、第5話から急に始まったコンピューターウイルスの話と、第6話に急に登場したおじさん巡査部長・岡留さん(小林隆)の誘拐事件がつながってくる話。

 主人公の西条は岡留さんと昔から縁が深いのでこちらにかかりきりになり、撮影隊のほうの事件は産業医の吉良さん(田中みな実)が署長から「医者だし頭がいいんだから捜査に協力しろ」というめちゃくちゃな命令を受けて捜査を開始し、その特技である心理分析によって事件を解決。撮影隊のみんなが働き者の監督さんを休ませるために、事件をでっちあげていたことが明らかになり、ほっこり終わりとなりました。

 一方、岡留さんのほうはまったくほっこりしていません。ウイルス事件も誘拐も、すべて14年前に娘を殺された岡留さんが仕組んだ復讐劇だったことが見えてきました。かつて補導したことのある不良少年たちをたぶらかして警察のデータベースに侵入させ、さらに自らを誘拐させて拳銃を奪わせていた。その拳銃を娘を殺した犯人に送りつけて、何かをどうにかしようとしているようです。

 岡留さんを真犯人に仕立て、岡留さんに恩のある西条にその事件を追わせるという配置は実にドラマチックですし、岡留さんを演じるほっこりおじさんの小林隆がその実、復讐の鬼だったという展開はハードボイルドでもあります。おそらく、この岡留さん事件がクール全体をしめくくるものになるのでしょう。

 今回、ロケ隊の事件と岡留さんの誘拐、2つの事件がともに狂言でありながら、その事件をでっちあげた動機は正反対のものだったという対比も効いています。中盤でばらまいた謎の要素をひとつにまとめてくる手際も、なかなかにダイナミックだった。総じて、おもしろいことをやろうとしていることは、すごく伝わってくる。でも、なんか見づらいんだよな。見づらいんですよ。

■ラインの話

 ドラマの世界にはリアリティラインという言葉があって、フィクションの中でどれくらい現実をデフォルメするかという基準が一定じゃないと、見ているほうが混乱してしまうわけです。主に世界観やキャラクター造形によって作られるラインです。

 もうひとつ、ドラマチックラインというものもあって、これは発生する出来事のシリアス度合いや事態の激しさ、描写の残酷さなんかの基準も一定にしましょうという話です。

 もちろん作中で上下変動するものでもあるわけですが、2本のラインのどちらかは一定であったほうが見やすいわけです。見やすいというのは、余計なことを考えずに物語に没頭できるということです。

 せっかく冒頭でほかのドラマの話をしたので例を挙げておくと、『海のはじまり』や『降り積もれ』は2本のラインがビッチビチに定まっている作品、『新宿野戦病院』は終盤でドラマチックラインを大きく動かしてきた作品という感じ。

『ギークス』では、この2本が2本ともグラグラに動くんです。しかも、行ったり来たりする。リアリティラインでいえば、第3話の幽霊が象徴的ですし、西条の部下の杉田が第6話でいきなり天才ハッカーになってしまったあたりもそうです。

 ドラマチックラインでいえば第5話と第6話で安達さんをキャラ変させてまで大仕掛けをしたと思ったら、第7話の「棒で襲われた女子高生」、第8話の「ジャッジマン」と小さな事件を立て続けに出してきて、あっさり「ゲスト犯人で1話完結」したりしてくる。

 これが、前述した「全体としてのディレクションが効いてない」という印象につながってるんだと思います。

 いずれにしろ、もう岡留さん事件で最後まで行くんでしょうから、多少は見やすくなるのかもしれません。悪口を書いてしまったけど、けっこう好きなんですよ『ギークス』というドラマの世界観。物語に没頭させておくれ。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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最終更新:2024/09/06 14:00
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