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『金ロー』を独自視点でチェック!【6】

戦隊ヒーローを題材にした『ベイマックス』 ポリコレに縛られたディズニーの行方

オリジナルの新作がつくれなくなったディズニー

 ピクサー買収で世間を驚かせたディズニーは、その後も大型買収を重ね、巨大組織となっていきます。2009年には『アイアンマン』(2008年)などで人気のマーベルコミックの買収に成功。2012年には『スター・ウォーズ』(1977年)で知られる「ルーカスフィルム」を買収。さらに2018年には『エイリアン』(1979年)などのヒット作を持つ「20世紀スタジオ」も買収します。アニメーションづくりとテーマパークの運営をメインにした子ども向けの会社から、M&Aを繰り返す巨大企業へと変貌していきます。

 組織が巨大化していったことで、ディズニーはポリティカル・コレクトネス(政治的妥当性)を強く遵守するようになっていきます。スタッフとのスキンシップを図るために、ハグをすることで有名だったジョン・ラセターは、Me Too運動もあり、2018年末にディズニーを辞めさせられています。枕営業を強要していた元大物プロデューサーのハーベイ・ワインスタインと同列扱いすることに疑問の声もありましたが、ラセターが製作総指揮した『トイ・ストーリー4』(2019年)は、その完成を見届けることなく、彼の名前はクレジットから外されています。

 あらゆるスタッフが働きやすい職場であることはとても大切ですが、現在のディズニーは作品づくりにおいてもポリコレを意識した作品が多くなっています。9月27日(金)の「金ロー」で放映される『バズ・ライトイヤー』(2022年)では、メインキャラクターに同性愛者を登場させ、物語に大きく関わることになります。

 アンデルセン童話『人魚姫』を原作にした実写映画『リトル・マーメイド』(2023年)には、アフリカ系アメリカ人の歌手であるハリー・ベイリーを人魚のアリエルに起用し、賛否が起こりました。社会の多様性に配慮した作品づくりでしたが、『バズ・ライトイヤー』も『リトル・マーメイド』も、興収的には厳しい結果となっています。

 マーベル制作の『デッドプール&ウルヴァリン』やピクサー制作の『インサイド・ヘッド2』などが今年はヒットしているので陰に隠れがちですが、今後公開されるディズニーアニメは『モアナと伝説の海2』『ズートピア2』『アナと雪の女王3』など、過去のヒット作の続編ばかりなのも気になるところです。

ジョージ・ルーカスが味わった屈辱

 近年のディズニーを象徴するエピソードとして、「ルーカスフィルム」買収時のジョージ・ルーカスに対する対応が知られています。「スター・ウォーズ」シリーズの“生みの親”であるルーカスはその権利をディズニーに売り渡す際に、新シリーズのあらすじも渡したそうです。

 しかし、契約事項に「ルーカスのアイデアを必ずしも取り入れる必要はない」「ルーカスは新作を酷評してはならない」とあることを理由に、ルーカスのアイデアは却下され、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年)以降の作品はルーカス抜きで制作されています。『フォースの覚醒』のプレミア上映に出席するのをルーカスは嫌がったそうですが、無理矢理に出席させられた上に、満席の会場からの拍手を浴びるという目に遭っています。そのときのルーカスはどんな心情だったのでしょうか。ま、ルーカスがお金で売ってしまったから、仕方ないんですが。

 ちなみにピクサー、マーベル、ルーカスフィルム、20世紀スタジオの買収劇を次々と成功させたのは、ロバート・アイガーCEO。2020年に一度引退したものの、コロナ禍によるテーマパーク収益の減少、ディズニープラスがなかなか黒字にならないことから、これまでの辣腕ぶりを買われて2022年からCEOに返り咲いています。米国の大統領選に出馬することも考えていたという、大変な野心家です。

 ポリコレを遵守するのは大変けっこうなことですが、テクノロジーと物語の斬新さでワクワクさせる新作をつくってほしいなぁと思う次第です。

 最後は「ケア・ロボットを今、いちばん必要としているのは2度もディズニーから追い出されたジョン・ラセターではないか」という一文で締めようと思ったのですが、wikipediaを見たところ、すでに別のアニメーションスタジオにジョン・ラセターは収まっているとのこと。いつか「ジョン・ラセター、2度目の逆襲」という新作アニメができようものなら、ぜひ観てみたいと思います。

映画ゾンビ・バブ

映画ゾンビ・バブ(映画ウォッチャー)。映画館やレンタルビデオ店の処分DVDコーナーを徘徊する映画依存症のアンデッド。

えいがぞんび・ばぶ

最終更新:2024/09/06 12:00
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