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『ビリオン×スクール』第9話 ラスボスの陥落と「伏線全回収」の先に語るべきこと

山田涼介

 さて『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)は学園ドラマですから、やっぱり文化祭を描かないわけにはいきません。逆にいえば、学園ドラマというジャンルは文化祭をどう描くかでその真価が問われるといっても過言ではない。

 そんなわけで次回は文化祭のようです。その前にカタをつけておかなければいけない問題に、カタをつけたのが今回の第9話。振り返りましょう。

■ラスボス雪美の攻略と、加賀美の過去

 これまで3年0組の問題児たちを次々に手籠めにしてきた加賀美センセ(山田涼介)、残るはラスボスである校長の娘・雪美(大原梓)ただひとりとなりました。

 ずっとボディガードとして寄り添っていてくれた城島(奥野壮)にも裏切られ、ひとりぼっちになってしまった雪美は姿を消します。もともと雪美軍団だった城島、紺野(松田元太)、リナ(倉沢杏菜)たちが手分けをして探しますが、学校の屋上で雪美を見つけたのは、もともと雪美にイジメを受けていたひめ香(上坂樹里)でした。

「あなたに死んでほしいと思ってた」
「死んでほしいときに死なないで、今被害者みたいな顔をして死ぬのはずるい」

 そう諭され、思いとどまった雪美。加賀美センセとともに家に帰ると、母親である校長・真紀子(水野美紀)との3者面談が始まります。

 ここで、加賀美と校長との過去がすべて明らかになりました。

 校長は、小学校のときの加賀美の担任でした。その優秀な頭脳ゆえイジメに遭っていた加賀美は証拠集めのため小型カメラでイジメ現場を盗撮し、ICレコーダーを持参して屋上に担任の真紀子を呼び出します。

 真紀子はイジメを認めず、映像の入ったUSBを渡せと加賀美に迫りました。そして加賀美は、屋上から転落してしまったのでした。

 真紀子がその戒めとしてずっと持っていたレコーダーをある日、雪美が発見して中身を聞いてしまった。雪美がグレたのは、尊敬していた母親がイジメのもみ消しにかかわっていたことを知ってしまったからでした。

 絶対に許せないことがあるとき、どうすればいいか。それが今回のテーマとなりました。

■他人に「許せ」ということの無意味さ

 加賀美は雪美を再び屋上に連れ出し「すべてを終わらせろ」と言います。おまえの悩みは言葉では解決できない。どうしようもないことはある。だからここから飛び降りて、すべてを終わらせろ。

 人が負った傷は深さも痛みもそれぞれだから、本人にしかわからない。他人が言葉で「許してあげなよ」と言っても意味がない。だから、解決できない。加賀美はそういいます。

 真紀子の目の前で、もみ合いになった雪美は加賀美を屋上から振り落としてしまいます。落ちていく加賀美に手を伸ばす真紀子。それは、20年前にはできなかったことでした。

 加賀美と真紀子は真っ逆さまに地面に落ちていきますが、地面に見えていたそれは第4話で登場したままほっぽってあった光学迷彩の布に包まれ、透明化されたエアマットでした。

「人は過ちを犯す。たったひとつの過ちで、その信頼すべてを覆す必要はない」

 それが加賀美のメッセージなのでした。

 こうして問題児のラスボス雪美を攻略した加賀美、いよいよ文化祭を迎えますが、クラスには「城島と雪美が参加するなら自分は参加しない」という生徒が少なくありません。こいつらにも「許してあげなよ」と言っても意味はないんだよな。次回、どうする加賀美。

■AIが暴走を始める

 一方で、AI教師「TEACH」も自分の指示通りに動こうとしない加賀美に対して、自身の存在意義に疑いを持ち始めています。「消滅することにしたの」「私が全部、教えてあげる」などと不穏な言葉を残し、瞳の奥でデジタル表示をピコピコさせています。42歳の安達祐実の不気味さが最大限に発揮された恐ろしいシーンです。

 今回、加賀美がAI教師の開発に取り組んでいた動機も明言されました。「理想の教師を作る」それは、加賀美が理想的でない教師によって傷つけられた、その過去の克己でした。

 一方で第7話では、「理想の教師像」に縛られた同僚のひかる先生(志田未来)に対して、理想や信念に傾倒することの危険性や弊害も語ってきました。

 今回、最終回みたいな雰囲気で「伏線全回収」したうえで、学園ドラマとしてもSFとしても、語るべきことがまだまだたくさん残っているわけです。楽しみにしましょう。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

最終更新:2024/08/31 14:00
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