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10年目突入の山口組分裂騒動―厳しい規制はいつまで続く?

神戸山口組の井上邦雄組長

 時計の針を戻すこと、今から9年前の夏。ヤクザ社会に激震が走った。日本最大ヤクザ組織である山口組が分裂したのだ。そして、六代目山口組から離脱した勢力によって新組織・神戸山口組が発足し、ここから現在に至る山口組分裂騒動へと繋がっていくことになった。

 結果として、2019年の末に、六代目山口組と神戸山口組は激しい対立状態にあると当局に判断され、特定抗争指定暴力団に指定される。結果、事務所が使えなくなったり、集団行動ができなくなったりと、その活動が厳しく制限されることになるのだが、最近は両組織間で抗争と見られる事件はほとんど起きていない。近年、神戸山口組は勢力を衰退させていく中で、六代目山口組サイドによる一方的な武力行使が起きるものの、それに対して神戸山口組は報復といった動きを見せていないのだ。

 「内部崩壊による度重なる主要勢力の離脱や幹部たちの引退を繰り返し、神戸山口組はすでに六代目山口組を相手に抗争できる状態にありません。ですが、当局は神戸山口組が解散でもしない限り、特定抗争の指定を外すことはないでしょう」(ヤクザ事情に詳しいジャーナリスト)

 当サイトでも既報の通り、神戸山口組の井上邦雄組長は、たった1人になっても引退も組織の解散もしないことを周囲に語っているといわれる。それが事実ならば、神戸山口組がどんなに弱体化しても、井上組長が引退し、組織が解散しない限り、特定抗争指定暴力団の指定を外されることはないということだろうか。法律に詳しい専門家に話を聞いた。

 「そうとは限りません。そもそも指定暴力団の条件を満たさないと判断されれば、解除されることもあり得えます。ただ、指定暴力団の条件は、組員数などによって明確に線引がされているわけではなく、複合的な要因をふまえた当局の判断によって左右します。そもそも特定指定暴力団の対象になるのは、指定暴力団の基準を満たしている組織同士。六代目山口組は、神戸山口組だけではなく、池田組や絆會とともにも特定抗争指定暴力団に指定されています。実際にはどうかは別として、当局の認識では六代目山口組は、これら3組織と現在も抗争状態にあるという判断をしているのです」

 一方で組関係者からはこんな声も漏れてきている。

 「他の組織はわからないが、六代目山口組はこんな状態には慣れている。活動が規制されていることで、地域によっては当番もなくなり、組員たちにとっては、以前に比べると組織に拘束されることが少なくなった。神戸山口組が解散でもして、特定抗争の指定が外れると、昔のように、やれ当番や、やれ集合だと言われても、正直、面倒に思う組員も少なくはないはず。ただ神戸山口組だけでなく、絆會にしても池田組にしても、六代目山口組サイドがそれらの組織と抗争しているという認識などはほぼ皆無ではないか。それほど力の差ははっきりしているし、今後も組織同士の抗争というよりも、六代目山口組が処分した組員がヤクザを続けている限りは、武力をもってしてもこの世界から排除するという姿勢には変わりはないだろう」

 対して、神戸山口組サイドは、現在の状況をどのように考えているのだろうか。前出のジャーナリストはこのように分析している。

 「こんな未来が待ち受けているとわかっていれば、六代目山口組から離脱しなかったでしょう。離脱した勢力は、当局の取り締まりが年々厳しくなっていく中、まさかここまで六代目山口組が躊躇なく、自分たちに武力を行使してくるとは考えていなかったし、内部がここまで崩壊するとは予想外であったはずです。たとえば、まさか中核組織である山健組が六代目山口組に復帰するなんて、誰も想像もしてなかったでしょうし、そもそも山健組の中心人物であった絆會・織田絆誠会長が早々に神戸山口組を割って出て、新たな組織を結成するなんて、思いもよらなかったはずです」

 果たして、抗争終結のひとつの目安である、特定抗争指定暴力団の指定解除がなされる日はいつ来るのだろうか。分裂問題も8月28日で、十年目へと突入することになった。

(文=山口組問題特別取材班)

ヤクザ業界をフィールドとする作家、ライターおよび編集者による取材チーム。2015年の山口組分裂騒動以降、同問題の長期的に取材してきた。共著に『相剋 山口組分裂・激動の365日』(サイゾー)がある。

やまぐちぐみもんだいとくべつしゅざいはん

最終更新:2024/08/28 13:30
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