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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『海のはじまり』あくまで別の世界線として

『海のはじまり』特別編 あくまで別の世界線として……肉体関係より重い「貯金」の話

池松壮亮(GettyImagesより)

 なんだかずっと涼しげな画面だったし、目黒蓮も古川琴音も「涼しげの権化」みたいな佇まいでしたのでついつい忘れがちでしたが、この酷暑の中で撮影してたんですよね、ドラマ『海のはじまり』。外ロケも多いし、さぞ大変だったことでしょう。

 そんなわけで主演の夏くんを演じている目黒蓮が体調不良で一時離脱、急遽新撮で1本作ることになったのが今回の特別編でした。

 語られたのは、津野くん(池松壮亮)と水季(古川)の3年前の恋のお話。振り返りましょう。

■けっこうガッツリしてた

 ときは東京五輪も花盛りの2021年、海ちゃんが幼稚園に通う頃のお話です。

 普段は、コンビニに入店するときも手でちょっとドアを開けると、あとは体全体を使ってグイっと押し入っていくくらい無駄な労力を使わないで生きている津野くんの職場に、若くてかわいい女性が新しくやってきました。

 相手がシングルマザーってことでちょっと難しいところですが、ほかに出会いとかもないし、ここはお近づきになっておこうと思った津野くん。昼食のカップラーメンと一緒にみかんグミなどを買ってご機嫌を取ろうと画策していると、意外に向こうのほうからガッツリなアプローチを仕掛けてきます。

 津野くんの分のおにぎりを握ってきたり、聞いてもないのに「津野さんのこと好きになるの自制してる」とか言ってみたり、いざ2人で出かけるとなったらばっちりメイクにペディキュア塗ってきたり、プラネタリウムで無防備に寝顔をさらしてみたり、ベンチで靴ヒモを結んでいる津野くんの背中に寄り掛かってみたり。

 延々と、海ちゃんの話をしながら「ヤレる」サインを出し続ける水季に家に招かれ、2人でおにぎりを作りながら間接キッスをキメたところで、いよいよ津野くんはちゃんと告白することにしました。

「貯金もあるし」

 シングルマザーにとってこれ以上ない殺し文句でしたが、水季はこの期に及んで元カレ・夏くんを引き合いに出して津野くんをフッたのでした。やっぱアレだな、プラネタリウムのあとのベンチで水季が背中にもたれかかってきたときに、もうちょいアレしとくべきだったな。

 そんなことが、3年前にあったんだよ、というお話。

■あくまで別の世界線として

 津野くんと水季の過去については前々回の第7話で語ったことがすべてだったと思うんですよね。今回のような距離感になったことがあって、その何年か後に津野くんの家で「中絶同意書」が見つかったときの、あの感じにはならないでしょう。

 津野くんは水季と海ちゃんを丸ごと引き受けるという覚悟を決めなかったから物語から弾き出されてしまったということを語ったのが第7話だったので、過去に「貯金もあるし」と言っていたとするなら、それは大人同士にとって「ヤッてた」より意味を持ってしまうことなわけで。

 今回、目黒蓮が使えないけど放送枠に穴を開けられないという制約の中で、何か急造しなければならない。じゃあ津野くんと水季の過去の話だよね、という結論が会議で決まったのは想像に難くないし、「とあるシングルマザーと同僚の恋」という単話のドラマとしては急造とは思えない素晴らしい出来だったと思うけど、これを『海のはじまり』の前夜譚として組み込んでしまうと、いろいろややこしいなというのが率直な感想です。

 あくまで本筋とは別の世界線、本筋の脚本家自身の手による同人作品、ファンサくらいに受け取っておいて、また来週からの本線を楽しみに待ちたいと思います。繰り返しになるけど、急造のファンサとしてはこれ以上ないクオリティだったと思います。冒頭のコンビニのドアを体で押し開ける感じ、あれだけで津野くんの生き方がだいたい伝わってくるもんね。ト書きかアドリブか知らんけど、すごいシーンだった。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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最終更新:2024/08/30 09:56
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