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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『降り積もれ孤独な死よ』の「謎の量」

『降り積もれ孤独な死よ』第8話 見る側に残していく「謎の量」のコントロール

成田凌

 人気コミックを原作としながら、前話あたりから完全に原作とかけ離れたストーリーを語り始めたドラマ『降り積もれ孤独な死よ』(日本テレビ系)も第8話。2024年に現れたオリジナルキャラの雑誌記者・森さん(山下美月)が、主人公の元刑事・冴木(成田凌)とともに失踪した少女・美来ちゃん(水野響心)を探すことになりました。

 このドラマの第1話の冒頭に提示された謎に戻るわけです。灰川邸事件の関係者だけが知る「リッカのマーク」を手首に彫り付けた少女はいったい何者で、なぜ姿を消したのか。そして、どこにいるのか。

 振り返りましょう。

■美来ちゃん、探しました。見つかりましたよ。

 今回は、その美来ちゃんが見つかる回でした。

 灰川邸事件の生き残りのひとりであるタトゥーガール・マヤ(仲万美)が殺され、優磨(カカロニ栗谷)も何者かに追われて走って逃げているうちにトラックにはねられて意識不明。その2人の死傷にどうやら、こちらも生き残りである蓮水花音(吉川愛)が関わっているらしい。

 そして、美来ちゃんは蓮水花音と一緒にいるところを目撃されています。美来ちゃんの身に危険が及んでいる可能性がある。蓮水花音って女の子はもともとぶっ壊れてるし、7年後に再会した冴木にも「もう冴木さんを巻き込みません」とか言ってたし、何かやってる感をビンビンに感じさせます。

 一方で、7年前の灰川邸事件発覚時から行方のわからない生き残りの健流(杢代和人)はいまだに行方知れず。7年前に冴木たちを襲撃した「顔に疵のある男」の謎も残っています。

 健流の母親(長谷川京子)によれば、健流とはしばらく会っていないものの、毎年黄色いカーネーションを送ってくれるので「生きている」ことは間違いないそうです。しかし、黄色いカーネーションの花言葉は「軽蔑」。それを知ってか知らずか、母親は毎年送られてくるカーネーションを押し花にして部屋に飾っています。

 疵男は7年前、留置所で灰川が殺害された際に警察署の外に立っていました。その後、灰川邸で冴木たちを襲撃した容疑で手配がかかっていますが、7年後の現代でもまだ捕まっていません。そして、蓮水花音の家のインターホンを押したり、健流の実家のインターホンを押したりと不審な動きを繰り返しています。

 要するに、どいつもこいつも不審なんです。この「3人とも平等に怪しい」という構図を作ったことが、まずすごいんですよね。完璧に、3人についての情報の出し方をコントロールしているということです。与えられた情報の量は蓮水花音が圧倒的に多くて、健流についてはほとんどない。動いてるところすら、あんまり見た記憶がない。それでも見る側に「3人が平等に怪しい」と思わせてしまう。

 美来ちゃんは蓮水花音に連れまわされていたのではなく、しばらく面倒をみてもらっていたのでした。蓮水花音はスーパーで万引きして捕まっていた美来ちゃんにご飯を食べさせて、家に泊まらせてあげていた。灰川邸での日々のことも話したし、灰川邸に連れて行ったりもした。美来ちゃんは蓮水花音の灰川邸での話に魅了され、手首に「リッカのマーク」のタトゥーを入れたという。蓮水花音は美来ちゃんをシェルターに預け、灰川の故郷へ向かった。

 冴木は灰川の故郷で、蓮水花音に「一緒に逃げよう」と言う。そこに疵男が現れ、冴木に襲い掛かりながら「花音、逃げろ!」と叫ぶ。え、知り合いなの?

 で、次回へ。

■サービス精神と整合性

 第1話の冒頭で提示した「リッカのマークの少女」の謎を一気に明かしてきた今回。この作品はこうやって、見ている側が想定しているより早いタイミングで謎を全部明かしてくるんですよね。ささっと明かしておいて、新たな謎を置いていくということをやってる。謎解きとして、純粋にスリリングでダイナミックなんです。必要以上に視聴者側に謎を残さない。残っている謎の量にもコントロールが効いていて、どんどん処理していくことで牽引力を生んでいるように感じます。第4話で暴行事件の犯人が冴木だったことが明らかになったあたりから、もうずっとおもしろいんです。

 ただ今回、いくつか「整合性だいじょうぶかな?」と感じさせる部分がありました。

 美来ちゃんがリッカのマークを彫った時期ですが、記者・森がいつも見ていた美来ちゃんのインスタの写真では、すでにマークは入っています。そしてこの写真は、マル横で撮影されたものに見える。

 美来ちゃんは蓮水花音と一緒に暮らしながら、灰川との話を聞いて感化され、リッカを彫ったと言っていました。だとすれば、蓮水花音と暮らした後にもマル横に戻っていたことになるけど、今回の話では蓮水の家→シェルターに直行している。これが1つめ。

 2つ目、疵男は7年前、灰川邸で冴木たちを襲った際に、蓮水花音の腹をピストルで誤射しています。蓮水花音は一命をとりとめましたが、殺してしまったと思ったはずです。あのとき疵男はすぐに逃亡しましたが、それと今回の「花音、逃げろ!」という発言との間に矛盾がありそうな気がする。

 3つ目、蓮水花音を追って灰川の故郷を訪れた冴木は「一緒に逃げよう」と言いますが、その前に警察の五味さん(黒木メイサ)に連絡して蓮水花音の居場所を知らせている。「一緒に逃げよう」と言いながら、その場に五味さんを呼んでいるのはどういうことなのか。

 このへん、作劇上のミスなのか伏線なのか、ちょっと判断がつかなかった部分です。というか、普通のドラマなら「ミスだろー」と断定しちゃうところなんですが、そう思わせないだけの説得力があるんだよな。これまでのしっかりやってきた感じと、冴木も含め人としてぶっ壊れてるという設定が効いていて、ドーンといろいろひっくり返すための仕込みにも思える。そのへんは、最終回が終わったらわかることなので、楽しみに待ちましょう。

 いずれにしろ、あと2話だってね。がんばれ。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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最終更新:2024/08/26 13:00
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