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『GO HOME』第6話 日本中の不幸を背負う俳優・遊井亮子、またしても蔑ろにされる

小芝風花

 身元のわからない遺体について調査を行い、家族のもとに返してあげる仕事をしている警視庁身元不明人相談室のサクラ(小芝風花)とマコト(大島優子)の奮闘を描いたドラマ『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』(日本テレビ系)も第6話。

 毎回、どうにも死んだ人の都合や一般的な倫理観よりもサクラの「思い」みたいなものが優先されてて非常に苦手な感じのドラマでしたが、今回も苦手だわー。いやー、苦手。

 振り返りましょう。

■それは遊井亮子だからか?

 今回亡くなったのは、新宿のビルから飛び降りた女の子・キイちゃん(白本彩奈)でした。のちに判明したところによると、推しのアニメキャラが作中で壮絶な死を遂げたので、後追い自殺をしたんだそうです。

 相談室の面々は、彼女のファッションと地雷メイクからキイちゃんをトー横キッズと推定。サクラとマコトは歌舞伎町を訪れ、キイちゃんと仲の良かったハルピ(莉子)と出会います。最初は警察の2人に警戒していたハルピでしたが、サクラが似合わない地雷メイクを施して再びハルピのもとを訪ねると、すぐさま信頼したようです。

 今回は、このハルピの「思い」みたいなものが最優先されることになります。

 キイちゃんの身元を探っていくと、キイちゃんがトー横の仲間たちの前で楽しそうに出身高校の校歌を歌っている動画を発見。サクラがハルピを連れて御殿場のその高校に足を運ぶと、キイちゃんの本名と実家が明らかになりました。

 一方そのころ、相談室ではキイちゃんが死ぬ前にハルピに預けたスマホのロック解除に成功しています。これものちに明らかになるのですが、キイちゃんのスマホの画像フォルダには、ハルピの写真がわんさか保存されているのでした。

 そんなこんなでキイちゃんの遺体の引き取りを依頼するため、実家を訪れたサクラ。これ、すげえなと思ったんですが、ハルピも連れて行くんですね。警察官が、遺骨の引き取りを依頼しに実家を訪れるとき、故人の友人を連れていく。しかもその友人の身元を、この警察官はまったく知らない。名前すら知らない。なぜ連れていくかといえば、今回はハルピの「思い」みたいなものを最優先すると、ドラマ側が決めたからです。だから、どんな非常識も押し通すんです。

 そしてキイちゃんの父親が実父ではなく、しかもDV男だったことが発覚します。すると、ハルピが「あんな家に返したくない」と言い出し、サクラはその「思い」を汲んで、遺骨を家族に返さないという判断をします。

 驚くべきは、この判断を下すにあたって、キイちゃんの実の母親の意見をまったく聞かなかったことです。母親を演じていたのは、日本中の女の不幸をすべて背負ってきた傑物俳優の遊井亮子さん。今回も、いかにもDV男の言いなりになってそうな顔で登場しました。頼りないし、自分の意思がなさそうです。そういう女性を演じさせたら、もうこの人しかいないくらい「不幸」という記号を体現する俳優さんです。

 だからってさ、話を聞かないというのはどうなんだ。「お母さん、あなたはどう考えてるんですか?」って、聞きなよ。少なくとも20年近く育ててきた実の母親ですよ。「私が責任を持って供養する」って言うでしょ。「この人(DV男)には指一本触れさせない」って、きっと言うよ。言わなかったら、そのとき初めて「持って帰る」って考えが出てくるものでしょう。そのあたり、サクラはどう考えてるわけ? なんで母親の意向はハナから無視して、ハルピの主張にだけ耳を傾けるの? それって、DV男よりよっぽど暴力的なことだと思うよ。ずっと言ってるけど、この人、仕事が乱暴なんだよ。

 結果、マジでサクラは遺骨を持って帰ってしまいました。これ、ホントにひどいと思う。相手が遊井亮子だから何をしてもいいと思ってるのかな。よくこんな残酷な話を書けるよ。寒気がする。

■主役と脇役ってなんでしょうね

 それ以前に、亡くなったキイちゃんの人物像の違和感がすごいんです。

 トー横に出入りしていて、ハルピの画像を大量に保存していて、ネカフェで寝泊まりしていて、メイクのバイトで貯めた15万円を持っている。で、好きなアニメキャラが死んだから、自分も死んだ。あと、高校の校歌を覚えていて、みんなの前で披露するほど高校が好きだった。

 そんなやついねえよ、って思いますよ。そのアニメ、いつ見てたんだよ。

 キイちゃんというキャラクターは、作り手の雑な時代認識と作劇上の都合によって、人格が引き裂かれています。飛び降りて頭が砕ける前から、生きた人間として描かれていない。こういう人間に対する解像度の低さを見るにつけ、フィクションの中で死んだ人を描く上での礼儀というものを考えるんです。『GO HOME』では、これまではそれなりに死んだ人について真剣に考えてきた形跡だけは見えていました。結果としてうまくいってなかったけど、「それ」を描くドラマだったからです。

 今回は「ハルピで泣かす」と決めたのでしょう。キイちゃんの人物像もむちゃくちゃだし、前述の通りキイちゃんの母親の扱いもむちゃくちゃです。

 物語には主役と脇役がいます。でも、それはカメラがどの人物の背後に回り込んで、どの人物に寄り添うかという区別であって、物語の世界の中の人物はすべて「生きている人間」として描き、「生きている人間」として扱う必要があります。ハルピが主役だから、ハルピ以外を蔑ろにしていいというわけではないんです。

 そこらへん、すごく手抜きしているように見えたし、手抜きじゃないならやっぱ純粋にヘタなんだと思います。なんかすみません。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

最終更新:2024/08/25 13:00
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