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『ギークス』第7話 空振りした「クール中盤のどんでん返し」コンセプトへの回帰が混乱を生む

松岡茉優(写真/Getty Imagesより)

 スーパー瞬間記憶ガールの監察官・西条(松岡茉優)、心理マスターの産業医・吉良さん(田中みな実)、地理オタクの交通課勤務・基山(滝沢カレン)という3人の警察官がアフター5に居酒屋で井戸端会議をしながら事件を解決しちゃう、という楽しそうなコンセプトで始まった『ギークス~警察署の変人たち~』(フジテレビ系)も、いろいろあって第7話。

 第5話あたりから、不思議系イケメン隣人の安達さん(白洲迅)のキャラが急変したり、西条の悲しい過去がほのめかされたりと、だいぶ色味が変わってきましたが、今回は、えーっと、なんだったんだろう。振り返りましょう。

■シンプル謎解きに戻った

 前回、前々回と突如ハッカーとしての能力を開花させて大活躍だった西条の後輩くん(泉澤祐希)が、まるで何事もなかったように頭を抱えて始まった今回。聞けば、仕事帰りに女性の悲鳴を聞いて駆けつけると、かよわい女子高生(中山ひなの)が「棒で襲われた」と言ってうずくまっていたそうです。

 その後、不安にかられて頻繁にLINEをしてくるようになった女子高生。後輩くんは熱心に相談に乗りますが、そんな中、第2の通り魔未遂事件が発生。被害者の共通点は2人とも女性であり、ピアノを習っていることでした。

 その後、西条たちが特技を生かしたプロファイリングを行った結果、実際には女子高生の通り魔被害が狂言だったことが発覚。この女子高生は、中学時代に推薦をくれなかった音楽の先生を逆恨みして警棒でブッ叩くことにしたんだそうです。

 かよわい女の子だと思ったら、その子が通り魔を装って標的を襲っていたという事件。設定としてはちゃんとひとひねりあったし、西条たち3人の能力を生かして事件を解決するという流れは、居酒屋での井戸端会議ではなかったけれど、わりとコンセプトに沿った展開に見えました。

 その一方で、同僚刑事の芹沢(中村蒼)の妹が登場。いろいろ引っかき回したあげく、芹沢と西条をくっつけようとしたり、イケメン安達さんが改めて西条をデートに誘ってみたりと、恋のほうも何か進展がありそう? という感じで次回へ。総じて、別に、楽しくはある。そんな感じ。

■単話としては成立してるけど

 単話としては事件も解決していますし、芹沢・西条・安達の三角関係も進展してるんですが、これ何? 前回と前々回のお話は忘れたほうがいいのかしら、というところで、見ていて困ってしまったんですよね。

 確か巡査が誘拐されて、拳銃を奪われている。正体不明の2人組がまだ逃亡中のはずなんです。あと、安達さんのキャラ急変のきっかけとなったウイルス騒動のほうも、捜査本部まで立ち上げられたのに、問題のUSBメモリーを鑑識係に忍び込んで係長の引き出しに残していった犯人もわかっていない。

 今回、その続きはまったく描かれませんでした。小鳥遊署では警察体験教室みたいなことが行われていたので、本庁から数十人を集めたウイルス事件の捜査本部は解散したようですが、これ西条の疑いが晴れたというだけで事件は解決してないはずなのに、その陣頭指揮を執っていた安達さんもすっかりキャラが戻ってるし、全然仕事してない。

 クールの中盤で丸々2話分を使って設定ごとひっくり返すようなことをやっといて、「いつもの『ギークス』に戻りました」って言われても、それはちょっとどう見たらいいのかわからないんだよなあ。事件の内容も別にタイムリーな時事ネタに触るわけでもないし、なんだか、ただ「クール中盤で設定ごとひっくり返してみる」ということをやって、それで話題性だけを取りに行ったように見える。クール全体を通しての作りたい展開があって、それを狙ったら中盤でどんでん返しが起こった、というのが本来の形であるはずなんですが、手段と目的が逆転している感じがする。今回のエピソードには、そういう違和感をすごく感じました。

 あと、芹沢・西条・安達の三角関係については本当にひどいと思っていて、これも「主人公の女性は恋をしなければいけない」という、ものすごく古い価値観で語ろうとしているように見えるんですよね。

 西条に設定されたキャラクターは「自分のひとり時間が最優先」であって、こっちとしてはそういうところに共感を覚えたりもしていたんですが、ドラマのほうから「恋をすればもっと充実、もっと幸せ」という主張を押し付けられている感じがする。

 結果、ドラマが西条の恋について語り始めると、「芹沢・西条・安達の三角関係」ではなく、「中村蒼・松岡茉優・白洲迅の三角関係」に見えてきてしまう。それで喜ぶ層もいないわけじゃないだろうけど、お話を楽しみたい、おもしろいドラマを見たいと思ってる人にとっては、これノイズにしかなってないんじゃないかな。どうなんだろ。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

最終更新:2024/08/23 12:00
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