地上波テレビで愛され続ける『となりのトトロ』、追いやられる『火垂るの墓』『はだしのゲン』
#となりのトトロ
みんな大好き!宮崎駿監督の人気アニメ映画『となりのトトロ』(1988年)が、8月23日の「金曜ロードショー」(日本テレビ系)で放映されます。これまでの放送回数は18回、最高視聴率は23.2%(1990年3月)を記録しています。しかも、翌週8月30日には宮崎監督の最高傑作と称される『天空の城ラピュタ』(86年)が放映されます。
今さらあらすじを語る必要もない『となりのトトロ』ですが、簡単に設定だけおさらいしましょう。舞台となるのは、美しい田園が広がる昭和30年代の農村です。ボロボロの一軒家に引っ越してきたサツキとメイが、近くの森に棲む不思議な生き物「トトロ」と交流するという、とてもファンタジックな物語です。
幼いメイがトトロの暮らす大木のウロに迷い込むシーン、雨の日にバス停にいるサツキの横にトトロが現れるシーン、真夜中の庭でサツキとメイがトトロと一緒に踊るシーンなど、アニメーションならではの名シーンの数々に、小さな子どもから大人まで幅広い世代が魅了されてきました。
宮崎監督のオリジナルストーリーである『となりのトトロ』は、なぜこんなにも人の心に残る物語になったのでしょうか。森に棲むトトロやネコバスは、子どもにしか見えません。トトロやネコバスは、母親が入院中で寂しい思いをしているサツキとメイの心の隙間を埋めてくれる大切な存在となっていきます。純真な少女たちと人間ならざるものたちとの触れ合いが、明るくコミカルに描かれています。
鮮やかに描かれる生と死のコントラスト
物語の後半、楽しみにしていた母親の一時退院が延期されると聞き、サツキとメイは心のバランスを失いかけます。とりわけ姉のサツキは、気丈に母親代わりを務めてきただけにショックでした。サツキが泣き出す様子を見て、幼いメイも不安になります。もしも、お母さんが死んじゃったらどうしよう。明るい姉妹の心が、どんよりと反転していきます。少女たちのピカピカに輝く生命力と入院中の母親に忍び寄る不吉な影という生と死のコントラストを、宮崎監督は巧みに演出しています。
公開当時から言われていたことですが、『となりのトトロ』のモチーフになった作品として、日本昔話の『笠地蔵』が挙げられます。雪の降る日に野ざらしとなっているお地蔵さまに、貧しい笠売りのおじいさんが売れ残った笠を被せてあげるというお話です。夜中になり、自宅で寝ていたおじいさんとおばあさんのところに、笠を被ったお地蔵さまたちがお礼を届けに現れます。『呪怨』(03年)の清水崇監督あたりが実写化すると、かなり不気味な映画になりそうです。
もうひとつ、『となりのトトロ』のモチーフになっていると言われているのが、ビクトル・エリセ監督のデビュー作となったスペイン映画『ミツバチのささやき』(73年)です。田舎で暮らす幼い少女・アナが、郊外の廃屋に潜む怪物(実は脱走兵)と交流するという幻想性とシビアな現実が交差する物語です。時代背景として、スペイン内戦があることが知られています。『となりのトトロ』と同様に、生と死のコントラストがくっきりと描かれた名作になっています。
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