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松重豊による監督・脚本・主演の『孤独のグルメ』劇場版の背景にある “勝算”

松重豊による監督・脚本・主演の『孤独のグルメ』劇場版の背景にある 勝算の画像1
松重豊(写真/Getty Imagesより)

 俳優・松重豊にとって代表作とも言えるテレビ東京系ドラマ『孤独のグルメ』が、松重本人の監督・脚本・主演により『劇映画 孤独のグルメ』として来年1月10日に公開される。

 周知の通り、『孤独のグルメ』は同名タイトルの漫画を原作に2012年1月からドラマ版がスタート。松重が演じるのは輸入雑貨商を営む主人公・井之頭五郎で、仕事で訪れた場所で偶然見つけた飲食店に立ち寄り、食べたいものを自由に食す姿を1話完結で描いた作品だ。現在、22年放送のseason10までシリーズ化されている。

 そんな松重は今年7月に都内で行われた会見に出席。映画化の経緯について、「プロデューサー、スタッフがいなくなったりして、人材から立て直さなきゃいけないというのは2年前ぐらいからありまして。この際、大風呂敷を広げて映画化というのはどうかなと。それがきっかけで今回の話に至りました」と明かした。

 テレビ局関係者は語る。

「『孤独のグルメ』は深夜の放送で視聴者の食欲を猛烈に刺激する“夜食テロ”として人気コンテンツに。テレ東京お得意の典型的な低予算番組だが、DVDや動画配信などの二次収入で多額の利益を上げており、同局を代表するシリーズモノとなった。映画は昨年9月にクランクインしてフランスのエッフェル塔での撮影も行ったというから、それなりに製作費をかけたのだろう」

 芸能ジャーナリストの平田昇二氏はこう話す。

「『孤独のグルメ』は特に韓国で人気があり、18年には韓国ファンの人気を得た海外ドラマに贈られる『ソウルドラマアワード』の海外ドラマ部門の最優秀賞に選ばれています。同国のユン・ソンニョル大統領もファンであることを公言し、昨年3月に行われた日韓首脳会談の二次会でも話題にあがったというほど。人気の背景には韓国での日本食の人気に加えて、かつては敬遠されていた1人での外食が若者を中心に同国でも徐々に受け入れられるようになってきており、五郎のように単身で食を楽しむライフスタイルに憧れや関心を抱く視聴者も多いようです」

 こうした背景もあり、今回の劇場版は日本のみならず、韓国でも大きな注目を集めそうだが、テレ東はしっかりと他の“勝算”を持ったうえで映画化を決定したようだ。

「当初は、故大杉漣さん、松重、光石研ら名脇役が主役の深夜ドラマ『バイプレイヤーズ』をテレ東の看板ドラマにしようと試み、21年劇場版を公開したが興行的には振るわなかった。大杉さんが亡くなり、さらに主要キャストの1人だった寺島進が事務所移籍を機にもう出演しない意向を表明したこともあって、続編の制作を取りやめた。しかし、よしながふみによる人気漫画『きのう何食べた?』をシリーズ化。W主演を務めた西島秀俊と内野聖陽演じるゲイのカップルによる食生活を中心に描いた“夜食テロ”作品として人気に。そして、21年に劇場版を公開したところ興行収入14.1億円を記録するヒット作となった。『孤独のグルメ』劇場版は、松重の熱意が局側の上層部を動かし、制作陣も奮起して映画化を決定。テレビドラマ版では低予算にもかかわらず、数字としては大成功を収めているので、仮に映画版が当たらなくても局としてはそこまで問題視することもなく、『きのう何食べた?』ほどにヒットすれば万々歳だろう」(同)

 テレ東にとっては、かなり余裕のある“賭け”といったところだろうか。 

大沢野八千代(ジャーナリスト)

1983生まれ。大手エンタメ企業、出版社で勤務後、ネットソリューション企業に転職。PR案件などを手掛けている。KALDIフリーク。

おおさわのやちよ

最終更新:2024/08/22 09:00
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