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『海のはじまり』第8話 因果と恩讐の血縁ホラー “食う側”に回った目黒蓮のプチパニック

有村架純

 さて、月9ドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系)も、もう第8話。前回は津野くん(池松壮亮)の身勝手な自己陶酔に大いに共感してほっこりしましたが、今回はまた怖い話でした。

 振り返りましょう。

■実父に会いに行く、海ちゃんを連れて

 夏休みを利用した海ちゃん家での1週間のホームステイを終え、東京に帰ることになった夏くん。このホームステイを通して、海ちゃん(泉谷星奈)を認知して戸籍上もちゃんと親子になることを決意したようです。

 その決意をするにあたり、3歳のときに離婚してそれ以来会っていないという実父(田中哲司)に会いに行くことにした夏くん。海ちゃんを連れて、喫茶店に実父を呼び出します。

 このへんから夏くんの静かなる暴走が始まります。

 だいたい父親と会ってなんらかの心理的ケジメをつけたいのなら、そのケジメの対象者である海ちゃんを連れていくべきではないし、実父と関係ない海ちゃんをいきなり会わせるべきではないんです。案の定、父親が想定外の無神経オヤジだったこともあって、海ちゃんは不必要な悪意にさらされることになりました。

 夏くんは外で待機させていた弟の大和(木戸大聖)を呼んで海ちゃんを預けると、喫茶店のイスを蹴飛ばして実父を威嚇。たぶん感動の再会みたいなものを想定していたんでしょうが、その期待は的外れに終わりました。

 その後、公園でひとしきり海ちゃんと遊ぶことにした夏くんでしたが、夏くんの不安定な様子をくみ取った弟・大和が弥生さん(有村架純)を呼び出しました。海ちゃんは無邪気に弥生さんにも懐いていますので、「逆上がり見てて!」と満面の笑顔。弥生さんは海ちゃんの首に下げているネックレスが引っかかると危ないので外そうとしますが、夏くんが鬼の形相で「やめて!」とシャットアウト。それは水季(古川琴音)の遺灰が入ったロケットだったのです。

 そんなこと知らんし、怒鳴られた弥生さん超かわいそうです。

 その後も、夏くんの頭の中は海ちゃんのことばかり。弥生さんとスーパーに行けば「今日は俺が作る」と言いながら、弥生さんを海ちゃんに食べさせる料理のための練習台にしてみたり、水季が書き残した「夏くんの恋人へ」という手紙というか遺書を平気で弥生さんに手渡してみたりと、もう弥生さんの気持ちを気に掛ける様子はまったく見られなくなってしまいます。

 要するに今回、夏くんはパニックになっているわけです。全然その自覚はないけど、「認知する」と決めたことで、夏くんにとって世界が「海ちゃんとそれ以外」に分かれてしまっている。弥生さんに母親をやってほしいなら水季の遺書なんて関係なく弥生さんと向き合ったほうがいいのに、死んだ水季の遺志のほうを優先している。おかげで、一度は海ちゃんのママをやるつもりになっていた弥生さんの決意も揺らいでしまいました。

■血縁ホラーの真骨頂

 第1話で、このドラマは血縁という呪いに囚われた人たちのホラーだ超怖いと書きました。水季&海というモンスターに襲撃される夏くんと弥生さんという構図でしたが、いよいよ夏くんは「海ちゃんを認知する」と決めたことにより、食われる側から食う側に変貌してしまった。魂を食う側です。もう弥生さんにとっての平穏な日々は戻りません。

 でも、その種をまいたのは弥生さんなんだよね。7年前、産科で子どもを堕ろしたときに、待合室のノートに不用意にぶちまけた感情の吐露がきっかけで、水季は海ちゃんを産むことにした。あのとき、自分の日記帳にでも書いておけばいいものを、誰かに読ませるためにあの愚痴(あれは愚痴だよな)を書き連ねたことで、7年越しの災難に苛まれている。水季から弥生さんに宛てた遺書は、内容は次回明らかになるんでしょうけれども、弥生さん自身がかけた呪いへのアンサーでもあるわけです。

 複雑にからまりあう因果と恩讐。実にスリリングでいい感じになってきました。やっぱ津野くん、この人たちの間に踏み込まなくて正解だったと思うよ。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

最終更新:2024/08/20 16:00
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