『GO HOME』第5話 「差し出がましさ」の化け物たちが一線を越えてきた
#GO HOME
「差し出がましい」という言葉があります。「必要以上に、他人のことに関与しようとする。出過ぎた感じである。」という意味だそうです。よく仕事なんかで、相手のミスを指摘するときに「差し出がましいようで恐縮ですが」みたいな言い方をしますね。
さて、まったく恐縮していない「差し出がましさ」を毎回炸裂させているドラマ『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』(日本テレビ系)も第5話となりました。今回は、本作の「差し出がましさ」の象徴であるサクラ(小芝風花)の悲痛な過去が明らかになりましたが、率直な感想としては、だからってそんなに他人に対して差し出がましくしていいわけじゃないと思うぞ、という感じです。
振り返りましょう。
■いよいよ生きてる人のプライバシーにまで
前回までは死んだ人のプライバシーを職務の範疇を超えてまで暴きまくってご満悦だった警視庁身元不明人相談室のサクラとマコト(大島優子)でしたが、今回の身元不明人はあっさり身元が判明。開始数分でお仕事は終了となります。
商店街で急に倒れて亡くなった中年女性。死因はくも膜下出血で、所持品は自転車のカギと小銭だけでしたが、その自転車の防犯登録から身元が判明。故人のフェイスブックも発見され、すぐに自宅が特定されました。女性には娘がいて、医学部を卒業してこの春から医師として働くそうです。
サクラとマコトが自宅を訪れると、対応はなく、庭に医学部の参考書やノートが散乱しています。サクラはこれを見て、令状もないのに自宅に突入。風呂場で手首を切っている娘を発見しました。
ともあれ、サクラとマコトの不法侵入によって娘は一命をとりとめました。2人はこのエピソードを肴にサムギョプサルをつまみながら一献。さすがに職業柄、人の死には慣れていますから、食欲が衰えるようなことはありません。
後日、病室を訪れたサクラとマコトは娘に母親の遺骨の引き取りをお願いに行きますが、娘が口ごもっているとサクラが急に「やっぱりいいです」「お母様は私たちが責任を持って弔わせていただきます」などと言い出しました。サクラは自分の母親と不仲だから、この娘の気持ちがわかると言いたいようです。また決めつけです。怖いんだよ、こういうとこ。
その後、いよいよサクラとマコトは一線を越えてきます。マコトが「紀子さん(娘ね)はまだ何か隠してる気がする。2人の間に何があったか、もう少し検証させてください」とか言って、まだ生きている紀子さんの家を勝手に捜索し始めます。引き出しを開けたり、戸棚をあさったりと、もうやりたい放題です。なんの権利があってこんなことをやってるのか。当然、娘が許可を出した描写はありません。断るに決まってるからです。断るに決まってるから、ドラマはそのシーンを省略して不法な家宅捜索を断行するわけです。
結果、娘は母親を恨んでいたけれど、母親は娘を思っていたという結論を娘に伝えます。さんざん母親に苦しめられてきた娘でしたが、サクラとマコトは「許せ」と迫るのです。なぜなら、死に際にあなたのことを考えていたから。心の底ではあなたを思っていたから。
だから、長年にわたる精神的DVを許せ。
おまえも共依存だっただろう。
そう言い放つのです。
娘がそれを受け入れ、一件落着。マジでホラーだぜ、これ。
■これはもう生き方の問題
今回、サクラとマコトが他人のプライバシーに易々と踏み込んでいくことを肯定的に描いてきたこのドラマの違和感の正体を見た気がしました。
サクラもマコトも、個人的に真剣に悩んでいる。そして、真剣に取り組んでいる。
だから、他人は心を開いてくれるに違いないという、根本的な他人に対する甘えがあるんです。
象徴的だったのは、サクラがわだかまりのある母親からの電話を取るシーンです。逡巡するサクラのそばに商店街で死んだ中年女性の霊が現れ、サクラの肩に手を置いて「電話を取りなさい」と促したのです。
これはもちろん、サクラの妄想でしかありません。サクラは、自分が必死になって中年女性の思いを娘に伝えたんだから、この中年女性も自分に寄り添ってくれるはずだと考えているということです。実に傲慢な思い上がりだよ。もう一度書くけど、根本的な他人に対する甘えがある。
これはもう生き方の問題ですからね。自己正当化、自己美化の化け物です。以前のレビューでこの脚本家はヘタクソなんじゃないかと書きましたが、ヘタクソな上に他人を見下してるんだと思うんだ。オリジナル脚本って人間性出るよね。一緒に仕事してる人は大変なんじゃないかな。お察しします。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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