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『ビリオン×スクール』第7話 おもしろいのに……低視聴率を招く「ナメられ」シーンの数々

山田涼介

 過去にロボトミー的な手術を受けた経験のある天才AI発明家である加賀美(山田涼介)がAI教師開発のために高校に赴任して落ちこぼれクラスの担任を務めるSF学園コメディ『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)も第7話。

 聞くところによればこの作品、もんのすごく視聴率が低いそうですね。詳しくは割愛しますが、爆死なんだそうです。

 ここまで、学園ドラマとしてもSFとしてもコメディとしても、けっこう水準の高いことをやってるんですが、確かにナメられる感じはあるんですよね。チャラけてるし、設定はあえてテンプレートをなぞっているようなところもあるので、ナメられるのもわからんでもない。

 そして今回の第7話もまた、すごくナメられそうなことをやっていました。振り返りましょう。

■面談マニュアルへのアンチテーゼ

 今回は、3年0組のみなさんの進路相談のお話。加賀美センセはAIを駆使した「適職診断テスト」を用いて、生徒たちに適した進路を提案しようとしますが、アンケートに応じたのは加賀美センセを慕うイツメンのみ。加賀美センセは残った数人の生徒たちに対し、10日間の面接訓練プログラムを行うことにしました。

 講師として呼ばれたのは、いかにもマナー講師っぽい上品なオバサマと、陽気な外国人、それに仙人の3名でした。

 オバサマは「敬語はリズムで覚えましょう」と言って、ノリノリの音楽をかけて尊敬語と謙譲語の違いを生徒たちに覚えさせていきます。

 陽気な外国人は「緊張は羞恥心からくる」という理論のもと、生徒たちを校庭や中庭に連れ出し、ほかの生徒たちの前で恥ずかしい踊りを踊らせて羞恥心に慣れさせようとします。

 仙人は火のついたロウソクを用いて、静かで丁寧な所作を叩き込みます。

 いずれも、実にコメディタッチに、おもしろおかしく描かれます。こんなのが役に立つとは思えないというものばかりです。

 おそらくは世に蔓延する適当な「面接マニュアル」や「マナー講座」みたいなものに対するアンチテーゼとして、あんなのろくなもんじゃないぜというメッセージを込めて作られたシーンかと思いますが、けっこうな長尺を使っているし大しておもしろいわけでもないので、「ああ、またナメられることしてる……」と思ってしまいます。このシーンを好意的に受け取るのは、客観的に見て、なかなか難儀だと思いました。

 並行して今回は、「理想の将来」についてわりと真剣に語られました。

 同僚のひかる先生(志田未来)は高校時代の恩師を理想として教師になりました。生徒に寄り添い、生徒愛を全面に押し出すキャラクターとして登場し、その一面をデフォルメして描かれてきましたが、今回はまさに自分の理想を実現している存在として登場します。

 このドラマでは、その理想の具体例として「卒業後の生徒が会いに来てくれること」を提示します。しかし、実際にはその卒業生は金をせびりに来ているだけだった。ひかる先生の金が尽きると、吹奏楽部に忍び込んで部費を盗んだりしていた。その正体を目の当たりにしたひかる先生が迫力満点にブチ切れるシーンは、これはなかなか説得力のあるものでした。

 それに、もともと「愛よ愛なのよ」と言い続けるというデフォルメを施されてきたひかる先生というキャラクターのその「愛」が本当に本物の信念だったことを示したうえで、その信念に縛られる弊害を語ってくるあたり、やっぱりこのドラマはちゃんとしてるんだよな。主題に対するメッセージの明文化というところで、ホントにちゃんとしてると思う。山田涼介と志田未来の芝居合戦も、『Q』世代にとっては楽しいものだったはずです。

■SFとして今回は

 今回は加賀美のAIガジェットが直接的に事件解決に役立つことはありませんでした。どちらかといえば、加賀美の人間的な部分が作用して解決に至っています。

 そしてラストでは、加賀美が頭部に損傷を負った原因が屋上からの飛び降り、もしくは転落事故だったことが明かされました。この事故で加賀美は修復不能なケガを負い、脳になんらかの電子デバイスを埋め込まれ、顔面の修復手術を受けていることは前回までに説明されています。

 印象的だったのは、そんな加賀美が「機械ではない、AIだ」と何度も口にしていたことです。それは「適職診断テスト」のシステムについてのセリフでしたが、そこに明確な区別を付けたい意思があることが示唆されているような、そんな場面がいくつも見られたのです。

 まるで「私は機械ではない、AIだ」とでも言いたげな。今回はそんな感じで。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

 

 

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

最終更新:2024/08/17 11:00
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