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パリ五輪、レスリングのメダルラッシュを逃した地上波の誤算と「サッカー、バレー、バスケ」への競技重視

パリ五輪、レスリングのメダルラッシュを逃した地上波の誤算と「サッカー、バレー、バスケ」への競技重視の画像1
文田 健一郎(写真/Getty Imagesより)

 金メダル20個、銀メダル12個、銅メダル13個と、怒涛のメダルラッシュとなったパリ五輪での日本選手団。なかでも、金メダル8個を含む合計11個のメダルを獲得したのがレスリングだ。しかし地上波放送ではレスリングの生中継が少なく、ネット上ではブーイングも起きていた。

「レスリングの試合は日本時間の深夜帯にメダルマッチが行われていたこともあり、メダルの可能性が高くても、視聴率が狙えないという事情はありました。また、同じ時間帯に女子卓球団体の決勝戦や新競技のブレイキン、そして五輪の“花形競技”である陸上などが行われていて、NHKを含めた地上波各局がそちらを優先していました」(スポーツライター)

 さらに、レスリングが行われる五輪の終盤には、サッカー、バレーボール、バスケットボールなど、人気の高いチーム球技の決勝戦や3位決定戦が行われており、その影響もあったという。

「特に男子バレーボールなどは世界ランキング2位で大会を迎えたということで、メダル獲得への期待が高く、決勝戦や3位決定戦に進出したことを想定し、そちらの放送枠が確保されていました。女子サッカーや女子バレーなども同様です。もちろん、日本がベスト4以上まで勝ち進んでいるのに、その試合が生中継されないというのはあり得ないので、放送枠を確保するのは当然ですが、レスリングが割を食ってしまった形です。結果的にチーム球技ではメダルを1つも獲得できず、レスリングがメダルラッシュになったことを考えると、地上波各局は、もったいないことをしたと思っていることでしょう」(同)

 地上波における“チーム球技重視”の傾向は、大会終了後に放送されたスペシャル番組でも強く現れていた。8月13日にフジテレビ系で放送された『生ジャンクSPORTS パリオリンピック出てみたらDANGERだったぞSP』では、パリ五輪に出場したアスリートたちが多数出演し、現地の様子や試合の裏側などを明かした。アスリートのほかに元選手のゲストも多数出演していたが、そのなかには元サッカー選手の小野伸二、槙野智章、岩渕真奈も含まれていた。

「男女ともにサッカーではメダルを獲得しておらず、出場選手の生出演もなかったのに、元選手が3人も出演しているのは、少々違和感がありました。男女サッカーのいずれかがメダルを獲得したケースを想定していたのかもしれませんが、制作サイドの読みは外れてしまったと言えるでしょう」(同)

 そのほかにも、元バレーボール選手としては川合俊一、狩野舞子が出演。五輪出場アスリートとしては女子バレーの宮部藍梨と井上愛里沙、女子バスケの高田真希、馬瓜エブリン、宮崎早織も出演していた。

「女子バレーや女子バスケの選手は、以前から『ジャンクSPORTS』によく出ていましたが、制作サイドがメダル獲得をある程度は想定していたのも間違いない。結局その読みも外れてしまったわけですが、番組では女子バスケの選手たちがひな壇での“ガヤ役”を担う場面も多く、メダルを獲得した他の競技の選手たちとのコントラストが切なく見える部分もありました」(同)

 オリンピックの放映権料は、NHKと民放連とで構成される「ジャパンコンソーシアム」が支払っており、放送する競技はNHKと民放連とで割り振られる。より多くの放映権料を支払っているNHKが人気競技の中継を担当することが多いという。

「NHKが中継しない競技が民放連に割り振られ、それらの競技を民放各局でさらに割り振っていくという形。当然ながら各局は、注目度が高く視聴率が望める競技を放送したいわけで、単純に認知度の高いスポーツが放送されやすくなります。サッカー、バレー、バスケは人気も高いし、スター選手もいるし、テレビ局がそちらを選びたいのは仕方ないとはいえ、今回のパリ五輪ではチーム球技は総崩れだったことを考えると、認知度や注目度だけでチーム球技にベットするのは危険。やはりオリンピックではメダル獲得の瞬間こそが盛り上がるわけで、その瞬間がもっとも多く訪れたレスリングの中継をしなかったのは、失態と言わざるをえない。さらに言えば、高騰する放映権料を支払えず、放送枠が限られてしまうという点では、地上波の限界も感じます」(同)

 地上波では限られた競技しか放送されない一方で、ネット配信ではほぼ全競技・全試合が無料で見られるという、アンバランスな状況ができている昨今。貴重な地上波の放送枠を無駄にしないためにも、中継する競技の選択はより慎重になる必要がある。今大会においてレスリングを生中継しなったという事実は、地上波における今後の五輪中継の競技選択基準を見つめ直すきっかけになりそうだ。

手山足実(ジャーナリスト)

出版業界歴20年超のベテランジャーナリスト。新聞、週刊誌、カルチャー誌、ギャンブル誌、ファンクラブ会報、企業パンフレット、オウンドメディア、広告など、あらゆる媒体に執筆。趣味はペットの動画を見ること、有名人の出没スポットパトロール。

てやまあしみ

最終更新:2024/08/19 09:00
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