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『ギークス』第6話 雑談お気楽ミステリーから舵を切った先にあった「雑描写」と「不親切」

松岡茉優(GettyImagesより)

 居酒屋大好き、定時帰り大好きな3人の女性警察官がお酒を飲みながら雑談してたら事件を解決しちゃった、というお気楽ミステリーとして始まった『ギークス~警察署の変人たち~』(フジテレビ系)も第6話。

 なんだか前回の第5話から急にいろいろブン投げて本格っぽいことをやり始めたと思ったら、今回はもうくっちゃくちゃです。何が何やら。

 まあしょうがない。振り返りましょう。

■全部が突然に

 前回、突然「ウイルス供用および不正アクセス」の罪に問われた西条(松岡茉優)。どうやら警察のデータベースに容易に侵入できるウイルスを仕込んだという罪に問われているようです。実害は出ていませんが、西条たちが勤める小鳥遊署には本庁から数十人の刑事が押し寄せて捜査本部が立ち上がります。

 捜査本部の陣頭指揮を執るのは、前回本庁の監察官であることが判明した西条の隣人・安達さん(白洲迅)。前線で事件捜査なんてするはずがない監察官が「ウイルス供用および不正アクセス」についての捜査の指揮系統のトップにいるわけです。その配置に意味があるのか、あるいは「本庁から来た=偉い=捜査のトップにいて当たり前」という安直な解釈に基づくものなのか、そこでまず引っかかってしまう。

 一方、突然現れたのが交番勤務の岡留さん(小林隆)。14年前に何かの事故で娘を亡くしていて、西条もその事故について関係があったようで、2人は命日には毎年現場に花を手向けています。14年も経ってるのにお墓参りじゃなくて現場なのは何か意味があるのか、あるいは画面的な映えのためだけなのか、そこもよくわからない。

 その岡留さんが急に黒いワゴン車に乗った2人組に誘拐され、犯人は身代金3,000万円を警察に要求します。普通、誘拐犯というのは「身代金を用意しろ。警察には言うな。通報したら人質を殺す」とか言いそうなものですが、警察官を誘拐して警察に身代金要求の電話をかけてくるというのはどういう了見なのか。これも、ほかに何か目的があったり、警察内部による犯行の可能性があったりするのか、単にドラマの段取りとしてやってることなのかわからない。

 さらに、犯人からの要求電話に対してアナログ交換機時代の逆探知みたいな『太陽にほえろ!』(日本テレビ系)みたいな絵面でもって「IP電話なので逆探知できません」と言ってみたり、3,000万円だけ要求されたのに2億円は入ってそうなバッグを2つも持って受け渡し場所に行ってみたりと、演出面でも不安定な描写が重なってきて、もう予断だらけでお話が入ってこない。なんだったんだろう、いったい。

■ドラマを信用できなくなっている

 要するに、決定的にこのドラマが信用できなくなっているんですよね、前回から。

 雑談お気楽ミステリーから、どこかに舵を切ったことだけは間違いないんでしょうけれども、どこに行こうとしているのかまったくわからない。今回でいえば、誰が何を解決することを期待すればいいのかがわからない。

 数十人の捜査本部が「ウイルス供用および不正アクセス」について捜査をしていたはずなのに、結局ウイルスの出所を見つけたのは前回から急にハッカーとしての能力があることになった鑑識の杉田(泉澤祐希)だったし、その参考人として任意聴取を受けている西条が取調室から出られる条件も特に提示されていない。見張りが立っていると言っていたのに、好きなときに出てこれるし、出たら出たで安達さんに「戻れ」と言われている。

 とりあえず謎として残っているのは、岡留さんの拳銃を奪って逃走中の2人の犯人の素性と目的、あとはウイルス入りのUSBメモリーを鑑識の島根係長の引き出しに入れた人物と、その目的。ここはまったく説明不足で見当のつけようがない。見当のつけようがない謎には興味をひかれません。ただただ不親切だなとしか思わない。

 たぶん、作ってる側が「これは視聴者に伝わっているだろう」と思っていることと、実際に私たち視聴者に伝わっていることの間に、大きな差異が発生しているんだと思うんです。その差異に作り手が気づかないままどんどん勝手にお話を進めていくので、何を期待してドラマを見ればいいかわからなくなってる。

 で、手がかりになるであろうサブタイトルを確認してみたら「容疑者西条!捜査も恋も戦い」だって。恋も……? まさか安達さんと西条と刑事・芹沢(中村蒼)の三角関係を匂わそうとしてたなら、それまったく伝わってないです。はー、第4話まではけっこう好きだったんだけどな。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

最終更新:2024/08/16 20:34
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