トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『南くんが恋人!?』視聴者の油断を誘う剛腕

『南くんが恋人!?』第4話 ゆるい雰囲気で視聴者の油断を誘う剛腕ドラマ

写真AC

 パリ五輪を挟んで2週間ぶりの放送となった『南くんが恋人!?』(テレビ朝日系)も第4話。前回のレビューでは、岡田惠和大先生が青春のすべてをかけて書いたであろう1994年の『南くんの恋人』(同)を30年ぶりにセルフリメイクしているわけだから、おもしろくて当然だろうといったことを書きました。けっこう気に入っているので、1週飛ばしたのがちょっと待ち遠しくもありましたね。

 でもまあ五輪だからしょうがないと思っていたんですが、先週のテレ朝は五輪を放送したわけではありませんでした。『南くんが恋人!?』を潰して放送されたのは『世界アニマル&キッズ動画スペシャル』。いったいなぜ……?

 というわけで、振り返りましょう。

■サブタイトルゆるすぎ

 今回のサブタイトルは「15センチ彼とお風呂!」。「お風呂!」というところに絶妙なハシャギっぷりが見えてほほえましいですね。うれしいものですよ、女子高生と「お風呂!」ですからね。

 今回は「お風呂!」がメインエピソードになるのかと思いきや、「お風呂!」は早々に処理されました。真っ白な入浴剤の入ったお風呂に首までつかったちよみを見ながら、コップ風呂の南くんが「なんで入浴剤入れちゃうかなー」「そりゃ見たいだろ、健康な男子なんだから」とか言ってて、これまたほほえましい。そもそも2人で初のお城(ラブホ)に行くはずの日に南くんがちっちゃくなっちゃったわけですから、一緒に「お風呂!」もお預けでしたからね。

 さて、部屋で南くんとしゃべっているところをママに見つかってしまったちよみは、手芸部でもらってきた人形を南くんに見立てていることにしてごまかしています。人形と熱心にしゃべっているちよみの奇行を心配したママ(木村佳乃)は家族会議を開きますが、ここでちよみ家の奇跡的な性根の良さが炸裂。パパ(武田真治)が「誰にでもそういうことはある」と言い出すと、各々お気に入りの人形を取り出して、ちよみと同じように食卓に連れてきます。

 この家族の性根の良さというのが『南くんが恋人!?』というドラマの大きなファクターになってるんですよね。この家族は、おばあちゃん(加賀まりこ)がロクデナシの実の息子(富沢たけし)を追い出して、その奥さんだったママと同居している。そこに、婿としてパパとパパの連れ子(番家天嵩)を迎え入れている。そうした環境で類まれなるポジティブさを発揮する家族たちを、社会と差別化することで、「南くんの存在を秘匿しながら楽しく暮らす」というちよみのミッションの難易度に段階を与えているわけです。

 家族に比べて、他人のみなさんの追及は手厳しいものがあります。ちよみに気がある手芸部の部長はポケットに南くんを入れたままのちよみに対して「南くんは最低だ」と言い放って動揺を誘ってきますし、南くんのバスケ部の顧問(武田玲奈)は「南が男として好きだ、おまえは彼女として最低だ」と言って、真っ向からちよみの心に切りかかってきます。

 そうして周囲の揺さぶりによって不安定になった2人の関係に2人して落ち込んでいたところに、究極の外敵が現れます。黒ずくめの自転車マンが、ちよみの座っていたベンチから南くん入りのカバンをひったくっていくのです。必死に追いかけるちよみ。何もできない南くん。大きな悲劇の予感の中で、エンドクレジットが流れ始めました。その中盤、「国仲涼子(友情出演)」という文字が表示されます。あれ、国仲涼子出てた? 見逃したかな? と思ってたんです。

■国仲涼子、出た

 ひったくり犯はカバンの中の財布からお札だけ引き抜くと、南くん入りのカバンをそこらへんに投げ捨てます。カバンからなんとか這い出した南くんは「ねえ、君」という女性の声に振り向くことになります。そこには、南くんと同じくちっちゃい国仲涼子がたっているのでした。地味なワンピースで、まるで南くんの登場を待っていたといわんばかりの笑顔で。うわー、なんという展開。

 今回、南くんがちっちゃくなっちゃった原因について言及された場面がありました。まだ南くんが大きかったころ、地元のバスケスターゆえにデート中にもファンが寄ってきてしまう南くんに嫉妬したちよみは「南くんがちっちゃくなって、ポケットに入っちゃえばいい」と思ったことがありました。そして、それを南くんにそのまま伝えていました。

 一方の南くんも、ちっちゃくなる直前にバス停でトラックにひかれそうになり、「ちっちゃくなれば助かる、ちよみに会いたい」と思ったといいます。

 南くんとちよみの思いが重なって、奇跡が起こった。そういう、個人の意識に帰属するゆるいファンタジーとしての縮小化が起こったものだと思わせていたのです。

 個人の意思に帰属するゆるいSFというのは、夢オチが使えるSFということです。全部ちよみの夢だった、だって人がちっちゃくなるなんてありえないもん。そういうオチが使える余地を残していたということです。

 だけど、ちよみが知らないちっちゃい人が登場してしまうと、そうはいかなくなる。現象として、そういうことが「ありうる」となってしまうわけです。しかも国仲涼子は、ちっちゃい南くんを見つけて「ねえ、君」と微笑みながら話しかけている。ちっちゃい人は別に珍しいわけじゃない、人間界とは別の、ちっちゃい人の社会があることを示している。

「15センチ彼とお風呂!」なんてゆるいサブタイトルで油断させておいて、最後の最後でSFとしてのレイヤーを切り替えてくるという、この剛腕。今回わかったのは、このドラマは油断させて驚かせるということをやってくるドラマだということです。だとすれば、チープな画面も安っぽいCGも、平成レトロな雰囲気も、すべて油断を誘っているのかもしれない。もともと好きな作品ではありましたが、今後の展開にがぜん興味がわいてまいりました。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

どらまっこあきちゃん

記事一覧

Twitter:@dorama_child

https://note.com/dorama_child

最終更新:2024/08/14 14:00
ページ上部へ戻る

配給映画