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『徹子の部屋』オズワルド出演で“絵に描いたような地獄絵図” 伊藤俊介はネタを飛ばし……

黒柳徹子

『徹子の部屋』(テレビ朝日系)にお笑い芸人が呼ばれると、すごいことになるらしいぞ。

 もし、そんな定説を知らない人がいたら、真っ先に紹介したい回となった。

 9日、『徹子の部屋』に呼ばれたのは『M-1グランプリ』(同)で2019年~22年に4年連続でファイナル進出を果たしているオズワルド。多い年には年間1,000ステージをこなしてきた筋金入りの若手漫才師だ。

 伊藤俊介は現在、フジテレビで港浩一社長肝いりの深夜番組『オールナイトフジコ』のMCを務めるなどテレビでの実績も十分。畠中悠はミュージシャンとしての顔も持ち、斉藤和義らビッグネームからも高く評価されている。最近では、タレント・井上咲楽との交際・破局も大きな話題を呼んだ。

 だが、徹子はそんなことは全然知らなかったようだ。

 オズワルドの2人が緊張した面持ちで登場すると、さっそく資料に目を落とす徹子。

「畠中さんは、えー、ご家族が、北海道でコンブ漁を……」

 その質問を受けて、訥々としゃべり出す畠中。畠中は、基本的に大丈夫な人である。緊張はしているだろうが、いい意味で「おもしろいことを言わなくても平気な芸人」なので、コンブ漁と気象変動、海水温の上昇などといった話になれば、むしろ冷静かつ正確に情報を伝えることができる。

 心配なのは伊藤だった。伊藤はおもしろいことを言わない状況が平気ではない男だ。その笑いに対する前のめりな姿勢こそが伊藤という芸人をMCにまでのし上げてきたし、21年に出演した『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(同)の「オズワルド畠中を考える」回ではオードリー・若林正恭、ハライチ・澤部佑、平成ノブシコブシ・吉村崇という現代テレビバラエティの権化を向こうに回して全弾的中させる無双ぶりを演じたこともある。

 ノッたときの伊藤は無敵だ。そして、伊藤のような攻撃タイプの芸人を数多く血祭りにあげてきたのが、この『徹子の部屋』なのである。

「独特のスローテンポな漫才が人気だそうですけど」という徹子の振りに「僕らよりたぶん独特なスローテンポだと思います、徹子さんは」と、すぐさまお笑い的な“正解ツッコミ”を返す伊藤。

 だが、相手は若林でも澤部でも吉村でもない。徹子はオズワルドのことを知らないし、おそらく「視聴者もオズワルドのことをよく知らない」と思っている。だから、伊藤の正解はスッと吸い込まれ、徹子は基本情報を引き出そうと次の質問に進んでいる。

 ひとしきりコンビ結成の経緯が披露される。普通の話は畠中の担当である。伊藤は唇を固く結んで、コクコクとうなづくばかりだ。

 そして、いよいよネタ披露の時間である。

 繰り返しになるが、オズワルドは年間1,000ステージに立ってきた漫才師だ。この日の「ダイエット」のネタも、『徹子の部屋』向けのチョイスだろう。「ヒキニキ」ほどシュールでなく、「しまもと」ほど不条理でもなく、「友達」ほどホラーでもない。オズワルドの中ではライトなタッチで万人ウケしやすいネタであろうし、それこそ何百回もかけてきたはずだ。

 その「ダイエット」を、オズワルドはまともにできなかった。

 鉄板のツカミである「今85キロくらいあるのかな」「もともとはどれくらいあったの?」「3,200グラム」「だいぶ太ったね」で盛大にスベると、その後も沈黙の中でボケとツッコミがベルトコンベアのように押し流されていく。

 先に噛んだのは、冷静なはずの畠中のほうだった。引きずられるように、伊藤も覚束なくなっていく。伊藤が提案した「16時間断食」の方法についての説明の部分だったが、それがどんなダイエット法なのか全然伝わってこなくなる。

 ここで画面が2分割され、左半分には、なんとかネタを進行しようとする畠中と「もうダメだ」と悟って苦笑いをするしかない伊藤。右半分には口を半開きにした仏頂面の徹子が映し出される。残酷な場面だ。

 伊藤の声が小さい。右手の位置が変だ。

「隣の奥さんにカレーを持ってこられたら……カレーを持ってこられたら……それは……」

 伊藤がテレビでネタを飛ばしたのは初めてだという。

「なんでこんなに笑わないなら、やらせるんだよ!」「どういう了見なんですか!」

 取り返しのつかない空気を、伊藤がなんとか取り返そうともがく。畠中が徹子に感想を求めると、徹子は「おもしろいと思いました……あの……あのね……」と口ごもる。

 その後、たびたび沈黙が訪れながら、オズワルドが声優として出演した映画『クレヨンしんちゃん』の告知へ。伊藤は「畠中のセリフが3つしかないから、自分のほうがギャラを多くもらうべき」という、ここぞと用意してきたであろうコメントを繰り出すが、これがさらなる地獄を産んで、強制終了されるように「ルールル」が鳴り出す。

 これぞ、視聴者が求める『徹子の部屋』芸人回のテンプレートだろう。そして、制作側はこの空気を意図的に作っているに違いない。

 それは芸人に対して失礼でもあるし、悪ノリでもある。だが、こっちだって『徹子の部屋』は芸人回しか見ないのだから、それはお互い様である。

(文=新越谷ノリヲ)

新越谷ノリヲ(ライター)

東武伊勢崎線新越谷駅周辺をこよなく愛する中年ライター。お笑い、ドラマ、ボクシングなど。現在は23区内在住。

n.shinkoshigaya@gmail.com

最終更新:2024/08/10 11:00
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