パリ五輪“爪痕を残そうとしている”実況にうんざり? コアなスポーツファンはネット全競技配信に移行、加速する地上波離れ
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選手たちの活躍だけでなく、地上波中継での実況が話題になることも多いオリンピック。7月28日に行われたパリ五輪スケートボード女子ストリートでの地上波中継では、金メダルを獲得した吉沢恋がトリックを決めた際、「金メダルに恋した14歳」というフレーズが飛び出した。
この試合で実況を担当したのは、フジテレビの倉田大誠アナ。2021年の東京五輪でも同アナが同種目の実況を担当し、金メダルを獲得した西矢椛に対して「13歳、真夏の大冒険」と実況し、大きな話題となった。
2大会連続の日本選手による金メダル獲得に花を添えた形の倉田アナの“名フレーズ”だが、ネット上では〈前に前に出てくる実況アナなんか邪魔でしかないんだよねえ〉、〈うまいこと言ったろ感がすごくて興醒め〉など、手厳しい意見も少なくない。
「オリンピックでは、普段地上波ではあまり取り上げられない競技も中継しているということもあり、初心者向けの実況が必要となります。そういったなかで、競技の魅力を伝えるための“エンタメ性”のようなものが必要になってくるわけで、実況による名フレーズもまたそのひとつ。ただ、実況アナが“目立とうとしている”あるいは“爪痕を残そうとしている”雰囲気が出てしまうと、反感を買うこともあるでしょう。今回は前大会に続いて、倉田アナとプロスケーターの瀬尻稜さんのコンビでの実況解説でしたが、スケートボードの競技的側面だけでなくカルチャー的側面にもしっかり触れていて、スケートボードの本質的な部分をしっかり伝えていたと思います。言うなれば“名フレーズ”がなくても、その魅力が十分に伝わっていたはずであり、そこは“余計なエンタメ性”になっていたのかもしれません」(スポーツライター)
今回のパリ五輪では、地上波やNHK BSでのテレビ中継だけでなく、NHKの特設サイトやTVerにおいて、オリンピック放送機構が提供する公式映像での無料配信が行われている。こちらは日本語による実況解説はなく、実況解説なし、もしくは英語での実況となっている。NHKでは全競技が配信され、TVerでもNHKでテレビ中継された競技以外のほぼ全競技が配信されている。
「地上波的な実況のエンタメ性を避けるために、ネット配信で公式映像を見るという人も多いです。CMも入らないし、現地の様子をノーカットで中継しているので、隅から隅まで楽しみたいのであれば、公式映像のほうがいい。TVerでは一部、NHKは原則全ての公式映像の見逃し配信もあるので、後からでも存分に楽しめる。純粋にスポーツを楽しみたい人ほど、ネット配信に移行している現実もあるようです」(同)
ちなみに、NHKでテレビ中継された試合の見逃し配信は「NHKプラス」というサービスで実施されている。こちらを利用するには会員登録が必要だ。
「NHKプラスに本登録をするには、NHKの受信契約の確認が必要です。契約内容の確認中であっても登録申請をすれば配信は見られますが、登録には住所や氏名が必要で、面倒な手続きが必要なNHKの番組配信で五輪を見るくらいなら、登録なしで公式映像を見たほうがいい、という視聴者もいる。こういう部分が“地上派離れ”を加速させている側面も否めないですね」(同)
地上波中継が比較的多いサッカーにおいては、“地上波離れ”の傾向が顕著になりつつあるという。
「地上波での中継は日本代表戦が多く、どうしても“応援実況”のような形になり、細かい戦術的な部分が疎かになりがちです。一方で、動画配信サービスなどで中継されている欧州リーグやJリーグの試合では、よりディープかつマニアックな視点で実況解説している。そういった中継に慣れているコアなサッカーファンにしてみると、地上波での中継は物足りないんですよね。これは普段からNBAの試合を見ているバスケットボールのファンなどにも言えることです。そういう意味で、今回のパリ五輪でも地上波を避けて、ネット配信の公式映像を楽しむというサッカーファンやバスケファンも多いと思います」(同)
スポーツの国際大会は、地上波テレビにおいて重要なドル箱コンテンツであったはず。しかし、より深く競技を楽しみたいスポーツファンほど、地上波から離れていく現実があるようだ。
「世界的に注目度が高いオリンピックやワールドカップくらいの大きな大会であれば、“初心者向け”として地上波中継の需要はあります。ただ、そこまで大きくはない大会となると、“地上波で見るより専門メディアや公式映像で見たほうがいい”というファンが増えている。そういう意味では、地上波におけるスポーツ中継は今以上に減っていくでしょうし、残った地上波のスポーツ中継もどんどん“初心者向け”になっていく可能性もあります」(同)
パリ五輪の地上波中継によって、より多くの人々にスポーツの楽しさを伝えるのが地上波テレビ局の役割だ。しかし、スポーツの楽しさを知って、より深く追求したいと思ったとしても、地上波はその受け口にはならないというジレンマもある。メディアが多様化するなか、地上波におけるスポーツコンテンツのあり方が今一度見直されるタイミングなのかもしれない。
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