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『新宿野戦病院』第5話 「笑え」と「生きろ」が同じ意味になる瞬間がある

小池栄子

 先日「オレの中での天才は松本人志と小池栄子」と元雨上がり決死隊の宮迫博之さんが言ったとか言わないとかいうニュースが流れてましたが、今回は小池栄子無双でしたね『新宿野戦病院』(フジテレビ系)第5話。

 振り返りましょう。

■今回は患者が死にました

 これまで、その度胸とバイタリティによって数々の救急患者の命を救ってきた歌舞伎町の闇医者ヨウコ・ニシ・フリーマン(小池)でしたが、今回は初めてそれをとりこぼすことになりました。

 亡くなったのは、「聖まごころ病院」の面々とも顔見知りのホームレスのシゲさん。酷暑の中、路上に倒れているところを通報されて運ばれてきましたが、どうやら肺がよくない様子。SpO2も70%まで下がって、ECMOがないと助からないそうです。それにしても、SpO2とかサチュレーションとかECMOとか、コロナがあったおかげでいろんな医療用語が頭に残ってるんだよな。そういう視聴者側の知識を前提としたセリフを聞くと、ああ令和のドラマですねえなんてことを感じます。

 そんなこんなで勝どきの救命センターにECMOが1台空いているということで、ヨウコさんとトオル(仲野太賀)が救急車に同乗してシゲさんは勝どきへ。

 ところがその病院に着くと、1台しかないECMOは後から来た政治家さんに回されてしまいます。

「こっちが先じゃろ!」と激昂するヨウコさんでしたが、救命センターのいかにも優秀そうな女医さん(ともさかりえ)に諭されてしまいます。

「先生ならご理解いただけますよね。社会生産性も含めて、どちらを選択すべきか」

「助かっても社会復帰が見込めないケースでは、あえてチャレンジしないものなんです」

 そんな言い合いをしている間に、シゲさんは心停止。もともと人工肺が必要な状態でしたので、もう助からないことは、残念だけど自明です。

 それでもヨウコさんは心臓マッサージをやめません。シゲさんに馬乗りになってガハハハハと爆笑しながら、もう動かない胸を押し続けます。

 今回、前半でトオルが軍医だったヨウコさんに聞いたことがありました。戦場でもう助からない人に、かけてやる言葉はあるのか、と。

 ヨウコさんは「Laugh(笑え)」だと言いました。笑えば、脳が錯覚して臓器を動かし始めることがある。だから、笑え。

 だけど、人から「笑え」と言われて、心から笑う人はいません。だからヨウコさんは、誘い笑いをするのでした。大声で爆笑して、なんとかシゲさんを笑わせようとしたのでした。

 このシーンで描かれたのは、「笑え」と「生きろ」が同じ意味になる瞬間です。大切なことなのでもう一度書いておきます。「笑え」と「生きろ」が同じ意味になる瞬間があるんです。

 シゲさんの死亡が確認されるとヨウコさんはひとしきり泣きじゃくり、それからサッと切り替えて仕事場に戻っていきます。それはヨウコさんにとって、もう数えきれないほど繰り返してきた、自分の患者が死んだときのルーティンに違いありません。ECMOが割り振られなくて死んだから悔しくて泣いたのではない、ただ死んだから泣いたのです。

 そういうのが全部伝わってきた、小池栄子のすごいお芝居を見ました。

■一方で社会問題なんですが

 一方で今回は日本の優秀な保険制度とか、マイナンバーカードとか、寝っ転がりにくい公園のベンチとか、社会問題にもいろいろ触れられました。

 こちらはちょっとつまみ食い程度なんですよね。あんまり物語に関係がない。というか、あえて関係を持たせないようにしていると思うんです。

 今回でいえば、例えば公園のベンチで寝っ転がりにくいからシゲさんが身体を休める場所がなくて倒れた、という話なら社会性のある物語だね、ということになりますが、シゲさんは「まごころ」のロビーにいつでも入れて、クーラーの効いた場所で寝ることができたので、あんまり関係ない。そこに因果関係を持たせようと思えばすぐできるわけですから、やっぱりクドカンは社会問題と自分の物語を意図的に切り離そうとしているように見える。

 だったら余計なこと言わなきゃいいのに、と思うし、そういう余計なことまみれだったのが『不適切にもほどがある!』(TBS系)と今さら思い出しました。今回はそんな感じで。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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最終更新:2024/08/01 16:00
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