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『降り積もれ孤独な死よ』第4話 原作改編で「リッカのマーク」の意味を付与、その効果

成田凌

 未完の人気コミックのドラマ化ということで放送前からいろいろ不安視されていた『降り積もれ孤独な死よ』(日本テレビ系)も第4話。重苦しい雰囲気もりもりの撮影と俳優部の熱演もあって、今のところかなり成功している感じです。

 ストーリーのほうも、原作からつかず離れず、オリジナル要素もいい感じで織り込まれていて、コミックより先に完結するであろうドラマ版の結末も楽しみです。

 振り返りましょう。

■明かされた灰川の過去とマークの意味

 今回は、山奥の大邸宅に19人もの被虐待児を集めて共同生活を送っていた灰川十三(小日向文世)の正体についてのお話。この邸宅の地下室で13人の子どもの餓死遺体が発見されたことから物語が始まったかと思ったら、その灰川がすぐに逮捕、留置所で自殺と早々に物語から退場した人物ですが、生き残りの子どもの証言から“実の子ども”の存在がほのめかされ、再び身元を洗われることになりました。

 灰川が他人の戸籍を買い取って「灰川」という名前を使っていたことから、その身元の捜索は難航が予想されましたが、生き残りのひとりである蓮水(吉川愛)が記憶していた灰川が語っていた「降り積もれ孤独な死よ/灰の雪だけが知る/君がそこにいたことを」という詩を手掛かりに、刑事・冴木(成田凌)はあっという間に灰川の故郷を割り出すことに成功しました。

 冴木が蓮水とともに灰川の故郷の村を訪れると、例によって町の長老が登場。長老のすごい記憶力によって1964年にこの村で起こった親殺し事件の全容が明かされたのでした。

 灰川の本名は佐藤創。創と書いて「ハジメ」と読むそうです。地元の名家に産まれた灰川ことハジメは、その顔の半分を占めるアザを恥じた父親によって蔵に閉じ込められて育てられました。この父親は、田園風景の広がるのどかな村でひとりだけパリッとしたダブルのスーツを着る男でした。

 ある日、ハジメは脱走を試みるもあえなく失敗。蔵に連れ戻されると、父親によって手のひらに「×」のマークの傷をつけられます。

 そんなハジメの唯一の理解者が、犬山さんという流れ者でした。いつも山奥で絵を描いている変わり者の犬山さん。ハジメに、あの詩を教えてくれたのも彼でした。

 しかし、自分の息子が勝手に外出して流れ者と仲良くしていることを、ダブルスーツ親父が許すわけはありません。ダブルスーツは犬山さんが人殺しであるというウワサを村中に流し、数日後には犬山さんの死体が川の滝つぼに浮くことになります。

 唯一の理解者を失ったハジメは逆上し、犬山さんと過ごした山の岩肌に「降り積もれ孤独な死よ/灰の雪だけが知る/君がそこにいたことを」という詩を刻むと、父親の寝首をかいてめった刺しにしたのでした。

 親殺しをしたハジメは、手のひらの「×」の傷に包丁を突き立てて線を書き足し、リッカのマークを刻みます。それは、犬山さんが教えてくれたマークでした。

「ハチの巣、亀の甲羅、トンボの羽、それに雪の結晶。これは、この世界でいちばん強い形だ。ハジメ、おまえはダメじゃない」

 こうして、リッカのマークの“意味”が明らかになりました。

■どうやら個人に帰結していきそう

 原作では(まだ未完ですが)リッカのマークの意味は語られていません。語られないまま、灰川の育った集落に残る奇妙なしきたりや恩讐が徐々に明らかになってきています。

 一方、ドラマではリッカのマークの意味をはっきりと定義づけたうえで、灰川の個人の問題へと帰結させています。ここがおそらく、もっとも大きな改編になりそうです。ここから、ドラマは大きく原作からそれていくことになる。

 その分水嶺として、リッカのマークをハニカム構造と結びつけながら灰川の人生の象徴としたわけですが、このアイディアって「ただ改編してないな」って感じさせるものだったんですよね。単にコミックをドラマ化するにあたって、話をシンプルにしなきゃいけない、1クールに収めなきゃいけない、テレビ向けに派手にしなきゃいけないという枷はいろいろあると思うんですが、ただやってない。ちゃんと考えておもしろくしようとしてやってることが伝わってきたので、もう信用していいかなと思うんです。最初からちゃんとやってる雰囲気は伝わってきてはいましたけど、もう信用していいと思う。

 このお話は、虐げられた子どもが「×」をつけられ、信用できる大人にその「×」を「最強」に変えてもらった男の話でした。

 その男が、「犬山さん」に会えなかった子どもたちを集めていた。自分が「犬山さん」になろうとしたのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。

 マークに意味が付与されたことで、お話が一気に見やすくなりましたし、謎もまだまだたくさん残っている。今回見せた改編は、センスあるなぁと思います。はい。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

最終更新:2024/07/30 15:07
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