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『新宿野戦病院』第4話 割を食うのはいつも女、コンプレックスとバカと平等の話

小池栄子

 妊娠し、臨月を迎えた16歳の少女がそこらへんに転がっている街・新宿歌舞伎町を舞台に無免許医であるヨウコ・ニシ・フリーマン(小池栄子)の奮闘を描くドラマ『新宿野戦病院』(フジテレビ系)も第4話。

 今回は、いろんな女の話でした。振り返りましょう。

■人生いろいろ、女もいろいろ

 母親の男に犯され続けているマユ(伊東蒼)は、ヨウコさんの「自分の身は自分で守れ」という言葉を胸に、のしかかる男の太ももに折った割り箸を突き刺して家から逃亡。再び歌舞伎町に身を寄せることになります。そこには、とりあえずヨウコさんもいるし、一緒にコンカフェに行ってチェキ撮って、二郎で天地返しして笑い合える女友達がいる。家では一切笑わなくなったマユの、確かにそこは居場所なのでした。

 マユの母親・カヨ(臼田あさ美)はマユを連れ帰ろうと歌舞伎町のNPO「NOT ALONE」を訪れます。NPO代表の舞ちゃん(橋本愛)とヨウコさんが勤める「聖まごころ病院」のソーシャルワーカー・はずきさん(平岩紙)、それに児童相談所の担当者という3人の女性が話を聞くと、カヨは全然マユのことがかわいくないんだそうです。マユはカヨが渋谷で援助交際をしているころにできた子で、父親は誰だかわからないし興味もない。今の男がマユを犯していることは知っているけれど、やめさせようとすれば殴られるし、知識がないので福祉とつながることもできない。「家出しててくれたほうが気が楽だ」というカヨに、目の前の“まともな大人”である3人の女も言葉を失ってしまいました。

 そのうちの1人、はずきさんはDVも受けてないし、基本的には医者の娘なので金持ちだし、何不自由なく育ってきましたが、マユと同じ「親に望まれない子」でした。跡取り男子を強く求める医者の家系に生まれてしまった女の子。しかも、一生懸命勉強したけれど医者にはなれなかった。前回まで、はずきさんは跡取りの婿養子をハントしようと婚活に勤しむ様子がコミカルに描かれていましたが、その心中はぐっちゃぐちゃだったことが明かされます。

 さらにぐっちゃぐちゃにされちゃう事態が発覚。はずきさんには、腹違いの妹がいることが父である院長(柄本明)から明かされます。先代から男子を強く望まれた院長はいきつけのジャズバーで出会った駆け出しのシンガーと浮気をして、妊娠させてしまいます。これを聞いた先代は、「男子なら認知して引き取れ」と院長に命じますが、シンガーは院長の子どもを身ごもったまま渡米。アメリカで出産し、現地の医師とともに院長の子を育てるのでした。

 院長の子は血のつながっていない米国人父のもとですくすくと育ち、父に憧れて医師になりました。そして、いろいろあって来日し、実の父である院長の病院に舞い戻ってきたのでした。その名をヨウコ・ニシ・フリーマンといいます。よりによって医者かよ。その事実は、医者になれずに、それでもなんとか折り合いをつけて実家の病院で働いてきたはずきさんに甚大なダメージを与えることになりました。

 その「まごころ」では、そこらへんに転がっていた16歳の少女のお産の真っ最中。無事にお産は成功し、16歳の母親になった少女には母性が目覚めますが、その光景を目の当たりにしたはずきさんは激昂してしまいます。

「何考えてんのよ、バカじゃないの、勝手に子ども作って、勝手に産んで、捨てようと思ったけどやっぱりかわいい? バカか! 想像力が足りない。あんたみたいなバカな女は母親になんかなれない。なる資格がない。どうせ男連れ込んで、育児放棄(後略)」

 そのはずきさんの言葉を、“バカな女”に勝手に作られて産まれたマユも聞いてしまっていたのでした。

■バカと平等の話

 16歳の少女のお産のシーンと、はずきさんが院長からヨウコさんの出生の秘密を明かされるシーンが、しつこく、しつこくカットバックされました。院長の話は、はずきさんがいかに「まごころ」にとって要らない子だったかという詳細な解説でした。

 それでも産まれてきちゃう。

 先代は絶対に男の子がほしかった。

 それでも産まれてきちゃう。

 自分が女だったから、父親は浮気してでもほかの女に妊娠させた。

 それでも産まれてきちゃう。

 同じ女に産まれたのに、あの岡山弁の女は、自分がなれなかった医者になった。

 それでも産まれてきちゃう。

「望まれずにこの世に産まれた子は、ずっとつらい。ずっと苦しいの。忘れないで」

 はずきさんはその言葉を絞り出すと、ヨウコさんをにらみつけました。

 今回までに、はずきさん、ヨウコさん、そしてマユの母親であるカヨ。おおよそ同年代の3人の女性の歴史が紐解かれました。はずきさんは元egg系のギャルだったカヨを「バカ」と呼びました。バカだから、マユみたいな不幸な子が産まれてしまった。ですが、はずきさんが余裕で医学部に通れるくらい頭がよかったら、彼女自身もここまでつらい人生ではなかった。性別の話だけじゃないんですよね。はずきさんも、医学部落ちまくるようなバカじゃなきゃ、もう少しマシな人生だった。それを自覚してるから、この状況が許せない。

 第2話で、NPOの代表である舞ちゃんは言いました。

「私にとって、社会は平等じゃないから、虚しくないんです」

 なんだかすごい話になってきたなぁ、と思います。とりあえず今回は、なんだかすごい話になってきたなぁとだけ言っておきます。あと、割を食うのはいつも女なんだよなぁとか。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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最終更新:2024/07/25 17:00
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