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『海のはじまり』第4話 すべてを焼き払う海ちゃん(7)の絨毯爆撃と、待ち受けるさらなる地獄

目黒蓮

 いやぁー『海のはじまり』(フジテレビ系)も第4話。TVerで見てるわけですが、正直クリックする指が重いのよ。続きを見るのにちょっと覚悟がいるんです。私は海ちゃんが怖いし、夏くん(目黒蓮)や弥生さん(有村架純)の臓物を引きずり出そうとしているかのような脚本家の手が怖い。

「今期の月9は重すぎて離脱」とか「めめのこと嫌いになる」とか、そんな軽々しい言説が、さも国民の総意であるかのように日本で一番でかいニュースサイトの見出しに踊るような時代に、よーやっとると思います。

 もう一度、脚本の生方美久さんがスタート前の取材に応えたお話を引用しておきましょう。

「明確に伝えたいことはふたつだけです。ひとつは、がん検診に行ってほしいということ。すべての人が受診できる・受診しやすい環境が整ってほしいです。もうひとつは、避妊具の避妊率は100%ではないということです。」(〈特別取材〉目黒蓮主演「海のはじまり」の脚本家・生方美久が今作で‟伝えたいこと”はふたつ/GINGER6月29日配信)

 伝えたいことをドラマにするということは、セリフやシーンを書いている期間、その当事者として生きるということですからね。望まない堕胎をした女性が服を着たままシャワーでその腹を洗い流そうとするシーンなんて、ホントによく書くよなぁと思う。断固たる決意よな。

 振り返りましょう。

■「夏くん、パパやらなくていいよ」事変の余波

 前回、海ちゃん(泉谷星奈)のパパをやることをなんとなく決意した夏くんでしたが、当の海ちゃんに「パパやらなくていいよ」と言われてしまって大混乱。とりあえず、パパをやるかどうかは保留にして、少しでも多くの時間を海ちゃんと一緒に過ごすことにしました。

 これに納得がいかないのが、「海ちゃんのママやる」と宣言済みの弥生さん。普段から優柔不断な夏くんですので、今回もいつもの優柔不断が発動しているとシンプルに判断して「早くパパママやるんじゃなかったのかよ(意訳)」と迫ってしまい、うわーケンカだケンカ。しかも普通のカップルの痴話ゲンカじゃなく、これは大人同士の命のケンカですからね。この日、弥生さんは夏くんに過去の中絶経験を打ち明ける予定でしたので、ケンカにも熱がこもります。

 弥生さん、産みたかったんですよね。ノンカフェインコーヒーを飲みながら当時の彼氏にエコー写真を見せたらしかし、彼氏は即決で中絶の意向。それなら1人で育てるという選択もあるかもしれないとママに電話で相談しても、素っ気なく「無理だからね」「堕ろしな」と言われていました。

 そんな弥生さんの回想と、一度は中絶を決意しながら海ちゃんを産むことにした水季(古川琴音)が、徹底的に対比されます。

 東京でバリバリ働いていた妊婦と、大学を辞めてプーになっちゃった妊婦。片方はすぐに妊婦じゃなくなって、片方は数カ月後にママになった。この時点ではどっちが幸せって話じゃないけど、きちんと具体的なビジョンを持って幸せに向かって努力を積み重ねてきた方が、傷を負っている。容赦のない対比です。

 だから弥生さんは、容赦を得るために海ちゃんのママになりたかったんだということを、夏くんに打ち明けました。誰かのママになれば、過去に自分が“殺した”子どもからも容赦が得られるかもしれない。そして、カフェイン入りのコーヒーを飲みながらママになりたいと思っている自分の傲慢さにまた傷ついてしまう。

 大人たちがなんかやってる中、もっとも容赦がないのが海ちゃんです。大人の過去なんて海ちゃんは知らんし、関係ないからな。夏くんには「なんか傷つけること言ったんじゃない?」とか言ってくるし、弥生さんには電話かけて「ママじゃないからダメなの? 海のママじゃないから夏くんと一緒にいれないの?」「海のせい?」と詰め寄ります。ついでに、水季と仲良しだった図書館勤務の津野くん(池松壮亮)にまで「津野くん、なんで前みたいにいっぱい会えないの?」とか聞いてくる。もう全方位的な無差別絨毯爆撃です。大人たちは血の涙を流すしかありません。

 そうして心を焼き払われた弥生さんが、おかげですっきり水季の祭壇に手を合わせたところで、第5話へ。予告では夏くんのママ(西田尚美)が、なんだか荒ぶる様子が見られました。そうだ、本人たちだけじゃなく、そっちのケアも必要なんだ。弥生さんを「堕ろしな」って突き放した冷酷ママとも、今後なんかあるんだ。

 ああー怖い。来週もTVerの再生ボタンをクリックする指は重くなりそうです。

■そしてテクニカル

 冒頭で書いたシャワーのシーンもそうですが、中絶手術を終えた弥生さんに彼氏から「終わった?」というLINEが入るシーンもすごかったんですよね。弥生さんは「終わった。」と一度打ってから、「終わった!全然大丈夫だった!」と打ち直して返信するのです。「。」が本当で「!」はウソ。LINEの一文で、弥生さんがもうあの彼氏に気持ちがないことを表現している。

 このドラマのこういうところが怖いんです。「うわーきちい」「だる」「しんど」の中に、「シナリオうめえぇー!」が挟み込まれてくる。ほかにも今回でいえばカフェインの使い方もそうだし、第1話の動画のエピソードの「海好き」「夏好き」もそう。極めてテクニカルに見る側を殴りつけてくるんです。

 はー、もうやめてくれ。早く続き見せろ。そんな感じで今回はすみません。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

最終更新:2024/07/23 16:00
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