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『降り積もれ孤独な死よ』第3話 「信頼できない語り手」問題と伏線回収を検証する

成田凌

 今期随一の本格サスペンス風味をかもしだしているドラマ『降り積もれ孤独な死よ』(日本テレビ系)も第3話。

 山奥にある白亜の豪邸の地下室で13人の子どもの餓死死体が発見されるという衝撃的なスタートから、容疑者である豪邸の持ち主・灰川(小日向文世)の留置場での首吊り自殺、さらに別の連続暴行事件も並行して発生しているという怒涛の展開を繰り広げておりますが、今回もまたまた衝撃でした。

 振り返りましょう。

■冴木、おまえだったのか

 灰川が「子どもは自分が殺した」と自供したまま自殺したことで、いちおうの捜査終了を迎えた灰川邸事件でしたが、事件の生き残りである蓮水(吉川愛)と刑事・冴木(成田凌)は、灰川が真犯人をかばったまま死んだと疑っています。

 灰川が留置中に蓮水が階段から突き落とされる事件があり、蓮水はその犯人が灰川邸事件にもかかわっていると断言。その線で調べを続けていた冴木は、蓮水と同じく事件の生き残りである弟・蒼佑を疑い始めますが、結果、蒼佑は犯人ではありませんでした。

 一方、この町で連続発生していた暴行事件についての真相も明らかになりました。暴行の被害者には「子どもを殴るDV男ばかり」という共通点がありましたが、この被害者たちをボコボコにしていたのは、刑事・冴木だったのです。

 冴木には、少年時代に父親にDVを受けていた経験があり、12歳のときに親戚に引き取られてからは、その父親の暴行の矛先が弟・蒼佑に向けられていたのでした。そんな蒼佑も、母親を殴るDV男になってしまっていたのでした。

 父親の暴力によって兄弟に植え付けられてしまった暴力衝動。兄である刑事・冴木はその衝動のままに、復讐だ制裁だと理由をつけて知らない人を殴っており、弟・蒼佑はカウンセリングに通いながらその衝動を手放そうと努力していた。

 そのほか、顔に傷のある男が捜査線上に浮上したりしたところで、次回へ。

■珍しいことが起こりました

 今回は、主人公が犯人だったという珍しい展開がありました。冴木がいわゆる「信頼できない語り手」だったわけですが、ここまでドラマが冴木と連続暴行事件とのかかわりをどんな風に描いてきたかを振り返ってみたいと思います。

 事件発覚のきっかけは、冴木の上司である五味刑事(黒木メイサ)が防犯カメラの映像を見たことでした。姿ははっきり映っていないけれど、両手を祈るように組み合わせる癖のある男を私は知っている。冴木、おまえがやったんだろう。そういう感じでした。

 第1話、2024年のシーンを終えて2017年に時間が移った直後、ファーストシーンで冴木はデスクに座って祈っていました。

「冴木って神様とか信じるタイプだっけ? それ(祈るポーズ)、よくやってるから」

 振り返れば最初に伏線だったんですね。

 その直後、冴木がやっていた連続暴行事件の話題に。五味刑事がホワイトボードを指さしながら新人くんに事件の概要を説明しますが、冴木はバナナをもぐもぐしながら平然と眺めています。五味刑事から「犯人は防犯カメラの位置を把握しているのか、証拠につながりそうな映像や写真はほとんどなし」と語っています。「防犯カメラの位置を把握している」のは刑事だから、「ほとんどなし」は少しある。これも伏線です。冴木は上司の川相(野間口徹)に「頼むぞ」と言われ「はい」と適当に返しています。

 その後、最新の暴行事件が発生。灰川邸事件の捜査から外された冴木は、五味さんから「例の傷害事件、昨日同じような犯行があったらしい」と告げられ、自分が犯人の事件の捜査に加わることになります。しかし冴木は、上司の命令に背いて単独で灰川邸事件を追うことにします。

 その後、被害者たちの共通点を見つけ出した五味が冴木に「こいつもこいつも、なんらかの形で子どもを虐待している」と告げますが、冴木は「おぅ……」という微妙な反応。

「この大発見に対するリアクションがそれだけ?」(五味)

「フフッ、いやさすがだなと思ってますよ」(冴木)

 その後、五味さんが「あんたの弟、フジキ町(暴行事件現場)に住んでたよね?」と言い、ここで暴行事件の犯人が弟だというミスリードが入るわけです。重ねて、蓮水突き落とし事件の時間に弟にアリバイがないことも明示され、ますます「弟が怪しい」という方向に誘導していく。

 この後、冴木が車の中で慟哭するシーンがあるわけですが、当時は「弟が……!」というニュアンスでした。でも、このときの冴木の思いは「弟も……!」だったわけですね。見直してみるときれいに回収してる感じがします。

 で、五味さんが防犯カメラの映像を確認して「これって……」で第2話終了。ここでも、この防犯カメラが連続暴行事件現場なのか、蓮水さん階段突き落とし現場なのか曖昧にしています。

 で、今回の第3話で犯人発覚。ドラマは冴木に暴行事件の捜査を命じながら、優先順位の問題に見せかけて冴木と事件の間の距離を必要以上に近づけないよう、注意深く作っていました。ウソもありませんでしたし、見直してみれば伏線だらけ。うまくやってたものですから、原作通りなら冴木が犯人だとは知っていましたけど、「おっと……」ってなっちゃったもんね。

 ちなみに今回、伏線臭いなと思ったセリフは、新人警察官・鈴木の「どんな気分なんですかね、実の父親に、毎日毎日殴られるって」です。どうなることやら。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

最終更新:2024/07/22 17:00
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