『ビリオン×スクール』第3話 「今つらい子」にピンポイントで刺さるメッセージ
#ビリオン×スクール
まあホントに美しい顔面の山田涼介が『アイアンマン』よろしくAIパワードスーツを着込んで学校に潜り込み、完璧なAI教師を開発するために問題児だらけのクラスを担任するドラマ『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)も第3話。
第1話では貧困、第2話ではイジメ問題というテンプレートな設定をオリジナリティあふれる方法で解決してきた加賀美センセ(山田)でしたが、今回はスクールカーストの問題に向き合うことになりました。
振り返りましょう。おもしろかったよ。
■紺野、部活辞めるってよ
おそらく、学園ドラマでスクールカーストをやろうという話になったとき、作り手の方々の頭に浮かんだのは映画『桐島、部活辞めるってよ』(12)だったんでしょう。カースト最底辺といえば映画部だし、映画部でチマチマとカメラを回してるのは、ひ弱な黒ブチメガネだし、実際あんまり映画の才能もなさそうだけど楽しそうだし。
そんなわけで今回は、スクールカースト解消のために底辺クラス「3年0組」からスタッフキャストを募り、映画部の鈴木くん(柏木悠)を監督として映画コンテストに応募しようというお話でした。加賀美センセはビリオネアなので「ハリウッドからスタッフを集める」とか言い出しますが、秘書兼副担任の一花さん(木南晴夏)は「それじゃ意味ない、あとAIも禁止」と言い放ちます。この一花さん、自らこの映画のヒロインに立候補しちゃうくらいの映画好きで、どうやらお気に入りは『クレヨンしんちゃん』シリーズのようです。
この動きが気に食わないのが、カースト上位の不良たち。トップの藤堂(大原梓)と城島(奥野壮)は「1軍の最下位」である紺野(松田元太)に「あの映画をぶっ潰せ」と命じますが、実は紺野くん、カントク鈴木によれば「あいつは昔、映画部だったんだ……」とのこと。『SLAM DUNK』でいうところの「三井は昔、バスケ部だったんだ……」ですね。
鈴木くんと紺野くんは2年生のころ、2人で才能を認め合って楽しく映画を作っていましたが、イケメンの紺野くんがイケメン仲間にそそのかされて、合コンなどにうつつを抜かすように。『紺野、部活辞めるってよ。』状態となり、その後、2人は話もしなくなっていました。
映画は鈴木くんと、たった5人の生徒で作っています。みんな「『オトナ帝国』っていいよね」みたいな話をしながら楽しくセットを建てたりしていますが、ある日、何者かがセットをめちゃくちゃに壊して録画データも消してしまいます。
当然、紺野くんを疑った加賀美センセはコンビニ前で紺野くんを拉致。まるで『レザボア・ドッグス』(92)のマービン刑事みたいにイスに縛り付けられた紺野くんは、『ゲッタウェイ』(72)のスティーブ・マックイーンみたいな加賀美センセからショットガンを向けられるのでした。
■ピンポイントで届け
結果、一花さんの機転と加賀美センセの財力によって円満解決に至るわけですが、すごく「今つらい子」にピンポイントで刺さるように作られてるなと感じたんです。2軍や3軍でそれなりに迫害を受けながら楽しくやってるよりも、1軍で無理してるのしんどいよな。そういうところに、ピンポイントで共感を示している。
たぶんプロにはなれないけど、今、映画を撮るのが楽しいから。
そういうニュアンスへの帰結は『桐島』と共通するものでしたし、『桐島』で映画部の前田を演じた神木隆之介が『ビリスク』にはチョイ役で出ている。今回は、神木パイセンからカントク鈴木を演じた柏木悠という若手俳優への『オトナ帝国』にもなっているという、げに美しい構造なのでした。
ちなみに自分の高校時代など思い出してみれば、学校にもあんまり行かないで、どいつもこいつもサルどもが、くたばれ、死ね、滅びろなどと呪詛を念じながら全校生徒を見下していましたので、おそらくスクールカースト最上位だったのだと思います。うーん、イエスタデイ・ノー・モア。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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